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公文書を「国民共有の知的資源」とうたった公文書管理法が成立してから9年になる。しかし、この1年の行政のあり方を見ていると、これらの法が根付き、本来の目的を果たしているとは到底言えない状況。

公文書管理と情報公開 「車の両輪」に魂を入れよ

毎日新聞2018年5月14日

公文書を「国民共有の知的資源」とうたった公文書管理法が成立してから9年になる。情報公開法は施行されてからすでに17年がたった。

だが、この1年の行政のあり方を見ていると、これらの法が根付き、本来の目的を果たしているとは到底言えない状況である。

公文書の管理と、情報公開は「車の両輪」と言われる。行政は、どう政策が決まったかを国民に説明できるように文書を作成する。そして、国民はその情報にアクセスし、内容をチェックして評価するためだ。

日本の行政は公の情報を国民や住民と共有する意識が乏しく、情報公開の制度はなかった。変化の先駆けとなったのは自治体だ。山形県金山町が1982年に条例を初めて定めた。政府の情報公開法が施行されたのは19年後の2001年である。

運用は省庁の意向次第

そして、07年に明らかになった「消えた年金記録」の問題などで、公文書がきちんと記録、管理されていない実態が分かり批判を浴びた。その反省から当時の福田康夫首相の下で議論が進み、与野党合意の下で公文書管理法が09年に成立した。

ところが現実はどうだ。財務省の文書改ざんは300カ所にも及ぶ。防衛省のイラク陸上自衛隊派遣の日報を巡っては、虚偽報告や隠蔽(いんぺい)などずさん極まる扱いも目に余る。

なぜ官僚の意識が改まらないのか。日本の近代が始まった明治時代は天皇主権で、官僚は国民に対する説明責任を負っていなかった。戦後、国民主権となったものの「お上意識」は変わらなかった。行政文書をどこまで、いつまで保存するかの判断は省庁に委ねられた。

公文書問題に詳しい長野県短期大の瀬畑源(せばたはじめ)准教授は「国民への説明責任は根付かず、いまも各府省では文書が『国民の財産』という理解が進んでいない」と指摘する。

「車の両輪」が回らない様子は情報公開への対応に象徴される。文書開示を請求しても黒塗りばかりの「ノリ弁」文書が出てくる。開示までに時間がかかり、請求しても「文書がない」と安易に返答する。

情報公開法の不開示規定を必要以上に広く解釈し「率直な意見交換や意思決定の中立性が損なわれるから」と拒む。他の業務で忙しい、審査に時間がかかるなどの理由づけも決まり文句だ。組織で共有していない「私的メモ」だから公文書として存在しない、などと強弁する。

要は、国民の視点でなく行政の都合で解釈している。これでは「仏作って魂入れず」ではないか。

公文書が保存され、公開されることの重要さを痛感させる出来事がつい最近もあった。

加計学園の問題で、柳瀬唯夫元首相秘書官との官邸での協議が明らかになったのは、愛媛県今治市と愛媛県が文書を作成していたからだ。

だが、情報開示を巡る今治市と愛媛県の対応は大きく異なっていた。

今治市は出席者の名前などを黒塗りにしたが、愛媛県は、氏名や発言も含めて職員が文書を作っていたと認めた。結局、首長の考え方で判断が左右されたことになる。

主権者の役割も重要だ

自衛隊のイラク日報問題では、自民党内に、すぐに開示対象とならない「特定秘密」にすべきだという意見もあるという。だが、国民は派遣先での出来事を知る権利がある。安全保障に支障ない範囲で情報公開の対象とする扱いを維持すべきだ。

一連の不祥事を受け、公文書管理の見直しを巡る議論が進んでいる。与党は、全公文書を電子文書として保存することなど運用を見直す中間報告をまとめた。野党も、改ざんに対する罰則や、文書を書き換えると記録が残る電子決裁の義務化を提言している。

運用上の問題点は改善すべきだ。ただし、対症療法では、やはり効果には限界がある。法の目的を本当に実現するのなら、踏み込んだ改正を考えるべきではないか。

情報公開法にも公文書管理法にも共通する「組織で共有する」公文書の定義を「公務で作成したもの」とするなど抜本的な見直しも視野に入れる。文書管理を第三者機関に委ねる仕組みも検討すべきだろう。

こうした改革を進めるには、国民が公文書の保存と公開に対する関心を高めていくことも欠かせない。

公文書にアクセスし行政の施策をチェックして評価する。その積み重ねが主権者の責任を果たし民主主義の根幹を支えることになるはずだ。

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