経産省が16日に公表した2030年に向けたエネルギー基本計画の素案に将来の電源構成を決める際の大前提となる各電源のコスト推計に近年の原発建設費の高騰(1基4000億が1兆円超)を反映させていなかった。
原発、コスト増でも推進 1基4400億円試算 実情1兆円超
東京新聞2018年5月17日
経済産業省が十六日に公表した二〇三〇年に向けた新しいエネルギー基本計画の素案で、将来の電源構成を決める際に大前提となる各電源のコスト推計に、近年の原発建設費の高騰を反映させていないことが分かった。
建設費は政府が四年前に前回計画を策定した際に前提とした「一基四千四百億円」から、原発メーカーや商社によると倍の一兆円以上になっている。だが、経産省は「最も安い電源」とした前回推計は堅持。電源構成に占める原発の割合を現状の2%弱から三〇年度に20~22%に拡大する方針をそのまま踏襲する。
専門家からは「原発がコスト競争力を失っている状況を反映しないのはおかしい」(自然エネルギー財団大野輝之常務理事)との批判が出ている。
素案が前提にしているのは政府が一五年にまとめた試算。一基当たりの建設費を四千四百億円と推定。原発の発電コストを「一キロワット時当たり一〇・一円以上」と推計し、このうち三・一円が建設費に相当する計算で、石炭火力(一二・三円)や水力(一一円)より安い電源と位置付けた。
しかし、その後、三菱重工がトルコで進める計画や東芝が米国で着手した事業(現在は米企業が継承)では建設費が一基あたり一兆円を超えている。東京電力福島第一原発事故後、安全規制が強化されたためだ。単純計算で発電コストに占める割合は六・二円以上になり、原発の発電コストは一三・二円以上に上がる。石炭火力や水力を上回り最も安い電力ではなくなる。
龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)によると前回の政府試算以降に明らかになった福島事故処理費の膨張を勘案した事故リスク対応費の増加分なども算入すれば、原発発電コストは「一七・六円以上」に上がり、太陽光電力の入札価格の一七・二円(一七年度、大規模設備対象)も上回る。
これらの状況にもかかわらず、経産省は素案では原発について「低廉で変動がない重要な基幹電源」の位置づけを変えていない。原発は現在五基が再稼働しているが20~22%の達成には三十基程度の稼働が必要になり、老朽原発が多いことを考えれば新設も必要になる可能性がある。
素案は原発堅持の一方、太陽光など再生可能エネルギーの比率目標は従来通り22~24%に据え置いた。経産省はホームページで国民からの意見を募集する「意見箱」やパブリックコメント(意見公募)を経て、七月上旬に閣議決定する方針だ。
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