名護市長選 移設容認、即断できぬ。渡具知氏を推薦した公明党県本部は辺野古移設に反対の立場で、推薦に当たっての政策協定書には「海兵隊の県外・国外への移転を求める」と明記されている。
名護市長選 移設容認、即断できぬ
東京新聞2018年2月6日
米軍普天間飛行場の移設問題が主要争点になった沖縄県名護市長選。同市辺野古への移設阻止を訴える現職が新人に敗れたとはいえ市民や県民が移設を容認したと受け取るのは早計ではないか。
安倍政権は、普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古移設に反対してきた稲嶺進市長の交代が、移設工事を加速する好材料になると考えているに違いない。投開票から一夜明け、安倍晋三首相は記者団に「本当に勝ってよかったと思う」と自らの心情を吐露した。
安倍政権は、当選した渡具知武豊氏を支援するため、菅義偉官房長官や自民党の二階俊博幹事長、小泉進次郎筆頭副幹事長ら政権幹部を現地入りさせた。前回自主投票だった公明党県本部も、渡具知氏の推薦に回った。一市長選にしては、異例の取り組みだ。
沖縄県知事選が十一月にも行われ、辺野古移設に強く反対する翁長雄志県知事の再選の是非が問われる。安倍政権は、稲嶺氏の敗北で、翁長県政打倒にも弾みがつくと考えているのだろう。
とはいえ、渡具知氏の当選から辺野古移設容認の民意を読み取ることは難しい。政権の全面支援を得たとはいえ、渡具知氏が辺野古移設の容認を明言して選挙戦を展開したわけではないからだ。
むしろ、移設の是非が争点化することを避け、地域経済の活性化を前面に掲げたことが市民の心をとらえたのではないか。
渡具知氏を推薦した公明党県本部は辺野古移設に反対の立場で、推薦に当たっての政策協定書には「海兵隊の県外・国外への移転を求める」と明記されている。
渡具知氏は政策協定を重く受け止め、移設問題に取り組むべきだろう。政権側も、市長選結果を理由に移設工事をこれ以上、強行することがあってはならない。
首相は二日、沖縄で米軍基地負担の軽減が進まない背景について「移設先となる本土の理解が得られない」と答弁した。本土の理解が得られないことを、沖縄県民に負担を押し付けていい理由にしてはなるまい。翁長氏が「県民をないがしろにする理不尽なものだ」と反発するのは当然だ。
普天間返還が進まない原因は、沖縄の民意に寄り添おうとしない政権の側にあるのではないか。
地域振興は名護に限らず、過疎化や高齢化に悩む全国の自治体にとって重い課題だ。地域振興策との引き換えで米軍基地受け入れを迫るような強権的な手法を、政権は改めるべきである。
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