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ニッポンの大問題 職人精神を磨きたい

ニッポンの大問題 職人精神を磨きたい

東京新聞2018年1月3日
 

ちまたに「人生百年時代」の標語があふれます。健康でいられても、先々の暮らし向きは濃い霧の中。誇り高き長寿社会のかたちを探らねばなりません。
 

全国に知られるさいたま市の「大宮盆栽村」。一九二三年に関東大震災に見舞われた東京の盆栽職人たちが移り住んだ一帯です。
 

そこで厳しい修業を積んだ名匠を訪ねました。七十一歳の川辺武夫さん。三十歳で地元の自動車整備工場のトップから転じ、四十年余。異色の経歴の持ち主です。


◆こだわりの職人技

曲がりくねった白骨のような幹と枝が、縄文時代の火えん(かえん)土器を彷彿(ほうふつ)させる東北真柏(しんぱく)。加賀一位の突き出した幹と枝は、ヘラジカの角を連想させて凜々(りり)しい。
 

三陸地方の高山地帯で目の当たりにした真柏は、断崖絶壁にしがみつくように生えていた。千年の歳月を超え、過酷な環境に耐え抜いている雄姿に、体の芯から震えを覚えたと言います。
 

旧来の盆栽の基本樹形は必要ではない。畏れ多い自然の造形美をありのままに表現する。それが川辺さん流の盆栽哲学です。修業時代に抱いた疑問が発端でした。たくさんの幹や枝葉を切り、針金を巻いて曲げ、植え替えて角度を変える。過度に改作される盆栽たちの悲鳴が聞こえたと言う。その鋭い感受性が新境地を切り開いたのです。
 

盆栽用語に「忌み枝」がある。樹形の美しさを損ね、日当たりや風通しを妨げる枝のこと。マニュアルに従えば剪定(せんてい)する。「樹(き)がいのちのバランスを取るために伸ばした枝を、なぜ切るのか。大切なのは人間の身勝手な美意識ではなく、樹の健康です」
 

大胆で型破りな作風には、自然に対する敬愛の念が薫ります。その“未完の構え”は、欧州人の心を捉えた。十九世紀のジャポニスムのように。スペイン、ドイツ、フランス…。招請が相次ぎます。


◆見えぬ力の大切さ

古くから職人技は、親方から弟子へと継承されてきました。もっとも、知識や技能は言葉だけで伝え切れるものではありません。マニュアルを暗記しても、すぐに泳いだり、自転車に乗ったりできないのと同じです。マニュアル化が可能な目に見える技術を「形式知」と呼ぶのに対し、目に見えない技術を「暗黙知」と呼ぶ。ハンガリーの科学哲学者マイケル・ポランニー氏が提唱しました。
 

大事なのは、この「暗黙知」です。親方の全身からにじみ出る経験や勘のようなもの。弟子はその所作を盗み、鍛錬を繰り返すしか身につける術(すべ)はありません。
 

どういう仕事であれ、一人前になるまでには一万時間の修業を要するという。マニュアルを意識しなくても、自然と身体が反応してこその職人技です。
 

真の職人は、利益や勝敗や時間を度外視し、納得のいく仕上がりを見るまで努力を惜しまない。その過程で、マニュアルを超えて独自の理念や哲学も芽生え、それに根ざした頑固一徹の職人かたぎも育まれます。
 

それは自己を律する規範であり、また誇りであり、その積み重ねが人生の物語を紡いでいく。しかし、そうした人間の尊厳の淵源(えんげん)ともいえる「暗黙知」や職人かたぎを、不合理なもの、非効率なものとして切り捨ててきたのが、資本主義文化の歴史でしょう。
 

市場競争のグローバル化や、少子高齢化がもたらした人手不足を背景に、技術は生産性の向上に傾斜するばかり。人工知能(AI)やロボットといった高度に知的な機械はマニュアルを覚え、人間に取って代わってきています。
 

「形式知」の作業領域である限り、会計士や弁護士、医師などの知的職業といえども侵食され得るのです。日本の労働者の約49%が就いている職業は、二十年後までに自動化される可能性があるという衝撃的な推計さえ出ている。
 

さらに、長寿化が福祉を圧迫します。ならば、人生の終末まで働く社会を目指す。それが「人生百年時代」構想です。けれども、生産性ばかりに価値を置くような社会では、生存競争だけに終始する人生になりかねません。


◆私欲超え感じること

米国の社会学者リチャード・セネット氏は、労働は自然の一部として、職人精神の復権を唱えている。「仕事をそれ自体のために立派にやり遂げたいという願望」のことです(『クラフツマン 作ることは考えることである』)。

 
二〇〇七年生まれの日本の子供の50%は、百七年以上生きると予想されている。生産と消費の論理でなく、働く喜び、誇りを社会の真ん中に据え直すべきでしょう。


川辺さんは「よく見て感じ、私欲を捨てこだわる」と言い、マニュアルを超えて感性を磨く。職人精神に未来を感じるのです。

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