夫婦の一方が亡くなった時配偶者の生活をどう守るのか法相の諮問機関である法制審議会の部会が民法の改正要綱案をまとめた。配偶者が亡くなった高齢者にとって住み慣れた住宅に住み続けられるかどうかは切実な問題
配偶者の相続を優遇 時代に対応した見直しだ
毎日新聞2018年1月18日
夫婦の一方が亡くなった時、配偶者の生活をどう守るのか。法相の諮問機関である法制審議会の部会が、民法の改正要綱案をまとめた。制度変更の柱は二つある。
配偶者に対し、原則として亡くなるまで自宅に住み続けられる「居住権」を新たに設けることが一つだ。住宅の権利は所有権と居住権に分割され、居住権は住むだけの権利だ。平均余命から算出し、その評価額は、現在の所有権より低くなる。
配偶者と子が2分の1ずつという相続割合は変わらないため、住宅以外の現金などの相続が増える。老後の生活にとってプラスだ。
もう一つの柱が、結婚20年以上の夫婦は、生前贈与や遺言により、住宅を遺産分割の対象から除外できることだ。現行法では、遺産分割のため住宅の売却を余儀なくされるケースがある。その懸念がなくなる。
配偶者が亡くなった高齢者にとって、住み慣れた住宅に住み続けられるかどうかは切実な問題である。
協力して生計を営んできた結婚生活の歴史を考慮し、相続面で優遇するのはもっともだ。高齢化社会の現状に対応した見直しといえる。
今回の改正では、相続に介護実績を反映させ、相続人以外に金銭請求権を新たに与える仕組みも注目される。たとえば、義父を介護してきた息子の妻が該当する。
介護保険制度の下での要介護者は2014年度末で約600万人だ。実の子以上に介護に尽力している人は少なくない。介護の苦労が報われるのは妥当だろう。
相続など民法の規定は、時代や社会の変化に伴って見直されてきた。 たとえば、配偶者と子の法定相続分が各「2分の1」の規定は、1980年に改められた。それまで配偶者は「3分の1」だった。
今回の見直しは、結婚していない男女間の子の相続分を「婚内子の2分の1」とする民法の規定の撤廃がきっかけだ。正妻の保護策を求める声が自民党から上がったことが議論のスタートラインになった。
その結果、事実婚の相手方は優遇されないことになった。しかし、法律婚と同様に夫婦としての実態があれば、別扱いにする理由はないのではないか。家族の多様化に即したさらなる見直しは今後の検討課題だ。
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