長寿化が進む一方、多くの人が不安を感じている老後資金老後にいくら必要か計算し見えない将来を可視化すれば不安の正体が分かると指摘企業経営を参考に現役のうちから大まかな出入金の流れをつかむ表を作る事が大事
老後資金 見える化で備え 収支予測表や財産目録を作成
東京新聞2018年1月18日
長寿化が進む一方、多くの人が不安を感じている老後資金。寿命が延びて老後が長くなれば、その分、必要なお金は増える。「老後のお金」(WAVE出版)などの著書がある公認会計士の林總(あつむ)さん(66)は「老後にいくら必要か計算し、見えない将来を『可視化』すれば、不安の正体が分かる」と指摘。企業経営を参考に、現役のうちから大まかな出入金の流れをつかむ表や、資産と負債を一覧できる財産目録(バランスシート)を作ることを勧める。
林さんによると、退職して年金生活になると、一般的に収入は現役時代の半分以下に。しかし支出は、住宅ローンを完済していたとしても、三割程しか減らないことが多いという。食費や趣味にかける費用は急に変えられないためだ。
となると、老後資金は将来の自分への「仕送り」と考え、現役時代からためておきたい。林さんは「備えは早ければ早いほどいい。長期の積み立てなどで増やせるし、退職金をリスクのある投資に回さなくて済む」とする。
では老後資金はいくら必要なのか。当然、必要額は生活スタイルによって異なり、目安の設定も難しい。林さんは、現在から九十歳ぐらいまでの年ごとの収支を推計したキャッシュフロー表を作り、必要額を算出することを勧める。
収入の欄には予想の年金受給額を記入。日本年金機構の「ねんきんネット」などで、ざっくり見積もる。支出の欄には、食費や住居費、医療費などの生活費、介護費やリフォーム費、車の維持費などを記入。こちらも大まかでいい。
どんな老後を送りたいかをイメージし、趣味や旅行の費用、退職後も働く場合の賃金なども入れておく。こうして収支を計算すれば、老後資金が年間いくら不足するか見当がつく。
次に財産目録を作ろう。資産の欄に預貯金、株、不動産などを、負債の欄に住宅や車などのローン残高などを記入する。林さんは「家計管理は会社経営と同じ。毎月一円でもいいから、(資産が負債を上回る)『純資産』を増やすことが大事」と解説する。資産と負債の推移を、年一回は更新するなど定期的にチェックしたい。
会社経営の場合、負債が資産を上回り資金繰りがつかなくなると、倒産することもある。「家計が破綻すると、家族全員に影響が及ぶ。家計経営は絶対に倒産は許されない」と林さん。
そのため住宅ローンなどの負債は現役のうちに完済し、身軽にしておきたい。
現役時代からの節約も老後への備えとなる。林さんは日々の家計運営で月ごとに、子ども費▽生活費▽外食・レジャー費▽その他-の四つの費目別に予算を設定。それぞれの封筒に予算の現金を入れ、使うたびに封筒から出していた。
林さんは「面倒くさいのでお金を使いにくく、衝動的な出費が避けられた」と勧める。しかし節約一辺倒は味気ない。進学などで子どもの教育費が必要なときは服やレジャーでの出費は抑えるなど、その時々の価値観で出費に優先順位を付けて、満足度を上げる支出を考えたい。
「最終的には、笑いながら人生を終えられるかどうか。老後が楽しみになるプランを作ってほしい」
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