戻らぬドル円相場 米保護主義の懸念再び
戻らぬドル円相場 米保護主義の懸念再び
経済部 前田尚歩 2018/1/12 日本経済新聞
ドル円相場の戻りが鈍い。今週は9日の日銀の国債購入の減額をきっかけに円高、10日の中国の米国債購入の減額・停止報道でドル安が進んだ。日米の債券・株式市場は落ち着きを取り戻しつつある一方、円は11日のニューヨーク市場で一時1ドル=111円05銭とほぼ1カ月半ぶりの高値を付けた。12日午前の東京市場でも111円台前半で取引されている。
「ドル売りが止まらない」――。邦銀の為替ディーラーは口をそろえる。中国の外貨準備を運用する国家外貨管理局はドル売りを招いた米債購入を巡る報道について11日に「虚偽情報の可能性がある」と発表。だが、円は週初の113円台には遠い111円台後半までしか戻らなかった。
なぜドル高に戻りにくいのか。今回の報道は中国が米国債の購入を減額・停止する理由に米中の貿易摩擦を挙げていた。加えてロイター通信は10日にトランプ米大統領が北米自由貿易協定(NAFTA)離脱を表明する可能性があると報道。「米国の保護主義懸念が再び強まっている」(三菱東京UFJ銀行の野本尚宏氏)ため、ドルに先安観が浮上している。
11日の欧米市場でもドル売りの材料が相次いだ。欧州中央銀行(ECB)は12月の理事会要旨で、2018年の早い時期に金融政策の先行き方針(フォワード・ガイダンス)を見直す可能性を議論した、と判明。金融緩和の正常化が早まるとの見方から対ユーロでドル安が進んだ。
米国で発表された17年12月の米卸売物価指数(PPI)も市場予想を下回り、ドル安に拍車をかけた。12日発表の12月の米消費者物価指数(CPI)も伸び悩むとの警戒を強めたためだ。「両者の連動性は高くないが、市場はドル売りの材料に反応しやすくなっている」(外資系銀行)。ドルの先安観が強まるなか、投機筋による円売り・ドル買いの持ち高は既に高止まりしている。当面は円安・ドル高が進みにくそうな地合いだ。
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