安倍首相に読ませたい“無欲絶対主義”の『南洲翁遺訓』「謙虚に」なんて言いながら、後ろに向かって舌を出している。その上、名声が欲しい。「王様」になりたい。 そんな「安倍首相に読ませたい」
安倍首相に読ませたい“無欲絶対主義”の『南洲翁遺訓』
牧太郎の青い空白い雲 毎日新聞2017年12月6日
アメリカのトランプ大統領に、中国の習近平国家主席に、ロシアのプーチン大統領になりたい! そんな気持ちなんだろう。いつの間にか、安倍首相は「俺は誰より偉いんだぞ!」症候群になってしまったように感じる。
「謙虚に」なんて言いながら、後ろに向かって舌を出している。その上、名声が欲しい。「王様」になりたい。 そんな「安倍首相に読ませたい」第7弾は、来年のNHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」に登場する(だろう)『南洲翁遺訓』を“先読み”した。
《命ちもいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕抹に困るもの也。此の仕抹に困る人ならでは、艱難(かんなん)を共にして国家の大業は成し得られぬなり》
安倍さん! お分かりか? リーダーが「無欲な人間」じゃなければ、改革はできない。国は滅びる。国民は迷惑する。
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『南洲翁遺訓』は旧出羽庄内藩の関係者が西郷隆盛から聞いた話である。明治維新の立役者「薩長土肥」が作成した“宣伝文”ではない。「維新の天敵」だった旧庄内藩の面々が記録した「教え」だから、素晴らしいのだ。
慶応3年、王政復古の大号令の後、西郷は芝三田の薩摩藩邸に浪人を集め、江戸の治安を攪乱(かくらん)した。革命である。
その頃の庄内藩は、江戸の警備組織「新徴組」を預かっていたから、当然、薩摩藩の浪人たちと庄内藩士は対立する。この年の12月25日、庄内藩を中心とする旧幕府側が薩摩藩邸を焼き打ちするという事件にまで発展した。
翌年、新政府軍は上野戦争で彰義隊を破ったが、東北諸藩は奥羽越列藩同盟を結び抗戦。この東北戦争で、官軍は鶴ヶ城を攻撃して会津藩は降伏した。でも、庄内藩だけが官軍を撃退した。彼らは、勇猛だった。
しかし、西郷に抵抗した「最後の天敵」は、奥羽越列藩同盟の崩壊で、ついに9月26日、降伏せざるを得ない運命だった。当然、庄内藩士には厳しい処分が下されると思われたが、意外にも寛大な処置。西郷の英断だった。
西郷の名声は庄内に広まり、旧庄内藩の関係者は次々に鹿児島を訪れ、親交を深めた。『南洲翁遺訓』は、この旧庄内藩の人々が西郷に「教え」を請い、まとめた「教訓」である。その教訓の柱は「無欲が国を動かす!」だった。
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もう一つの西郷流の柱は「負けた者に恨みを残さない!」である。これは聖徳太子の教えにも繋(つな)がる。
日本書紀に記載された「十七条の憲法」の第一条は、 《以和爲貴、無忤爲宗。人皆有黨。亦少達者。以是、或不順君父。乍違于隣里。然上和下睦、諧於論事、則事理自通。何事不成》
要するに、「和」が絶対だ!と言っている。「天皇への忠誠」は第三条になっているから、それより大事なのは「話し合い主義」、これこそファーストだった。
なぜ、聖徳太子は「和」を大事にしたのか?
古代、日本は神様の子孫が治める国だった。天皇は絶対だが、台風、地震、疫病など、どうにもならない「不幸」が起こる。古代の人々は、これを「怨霊の仕業」と考えた。
天皇の絶対力に対抗する霊的パワーは「敗者の怨念」から生まれる、と考えたのだ。 つまり「政治的負け組」が恨みを残すと、自然災害が起こる。これを防止するには「和」がなければならない。
聖徳太子も西郷も、「話し合い第一主義」だったのだ。
安倍さん、あなたは、時々「話し合い」を拒否する。北朝鮮問題でもトランプ大統領と一緒になって「圧力」ばかりである。 「祟(たた)り」がなければよいのだが。
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