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<年金プア 不安の中で>保険料のしわ寄せ敬遠 従業員反対で厚生年金移行断念

<年金プア 不安の中で>保険料のしわ寄せ敬遠 従業員反対で厚生年金移行断念

東京新聞2017年9月21日

 
老後に年金受給額が乏しい年金プアになりやすいのは国民年金加入者だ。厚生年金のような上乗せ部分がないうえに、目先の生活に追われるあまり保険料を滞納し、老後の生活が苦しくなるケースも目立つ。国民年金から厚生年金への切り替えを検討して断念した建設会社の事例をもとに、年金プアに陥りやすい現状を考えてみた。 

「従業員の反発が予想以上に強かった。それを押し切ってまで、国民年金から厚生年金への切り替えはできませんでした」。東海地方の零細な建設会社の代表の妻で、自身も役員を務める女性(56)が振り返った。
 
十四年前、個人事業から有限会社に衣替えした。会社の信用力を増すためだった。法人になると、厚生年金保険法で厚生年金の適用事業所になるため、女性は当時いた従業員五人に厚生年金に切り替える方針を説明したが、全員が猛反発した。
 
国民年金の保険料は月額一万六千四百九十円(二〇一七年度)と決まっているが、月収によって保険料が変わる厚生年金に切り替わると多くの場合、保険料は大幅に高くなる。二十代後半だった男性従業員は当時年収三百万円。「結婚して子どもも二人いる。年金の保険料が上がればその分、生活が苦しくなる」と強く切り替えに反対したという。「目先の生活に追われ、老後のことを考える余裕はなかったのでしょう」と女性。結果的に、厚生年金への切り替えは断念せざるを得なかった。
 
厚生年金保険法では、株式会社などの法人や従業員五人以上の個人事業所は厚生年金の適用事業所となり、移行しなければ罰金などの罰則規定がある。ただ、罰則規定が適用されることは少ないほか、保険料は従業員と会社が折半するため、会社側の負担も大きく、厚生年金に移行しない会社は多い。
 
この建設会社は二年前に事業規模を縮小。四人いた従業員には別の会社に移ってもらい、今は夫婦二人だけで経営している。経営者の高齢化に加え後継者もいないため、いずれ廃業する予定だ。心配なのは元従業員らの今後。「元従業員の中には国民年金の保険料を滞納していた人もいる。あのとき厚生年金に移行していれば、それは防げたのですが…」。女性が言葉少なに漏らした。

◆任意加入の国民年金基金
公的年金は、一階が国民年金(基礎年金)、二階が厚生年金という二階建て構造だ。
 
会社員や公務員などが加入する厚生年金の保険料は一階部分と二階部分を合わせて課せられ会社と従業員が折半で負担する。保険料は給料から天引きされる。扶養家族を一緒に支える厚生年金の性格もあり、妻が専業主婦の場合、妻は保険料を納める必要はない。
 
一方、個人事業主などの国民年金は、収入に関係なく保険料は一律で決まっている。預金口座からの自動引き落としなどの手続きは加入者自身で行う必要がある。厚生年金に比べ保険料は低いが、加入期間の二十歳から六十歳まで一度も滞納がなくても受給できる老齢基礎年金の月額は約六万五千円しかなく、老後を過ごすには十分ではない。
 
国民年金には、厚生年金のような自動的に上乗せされる二階部分はないが、任意加入で上乗せできる国民年金基金がある=図参照。掛け金が所得税の所得控除の対象になるなど制度的なメリットがある。
 
ただ、社会保険労務士やファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家は「加入できるだけの余裕のある人は少ない」と口をそろえる。
 
東京のFPで社会保険労務士の高伊茂さんは「国民年金加入者の多くは、現役時代に暮らしにあまり余裕がなく、それが老後の年金にも影響して年金プアになりやすいという構造になっている」と指摘。「保険料の滞納は免除申請などで避け、少しでも貯蓄ができるような生活改善が必要だ」と話している。

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