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<検証「加計」疑惑>(4) 住民不在の大学誘致

<検証「加計」疑惑>(4) 住民不在の大学誘致

東京新聞2017年9月20日

 
切り開かれた丘陵地に、組み上げられた鉄骨がそびえ立つ。愛媛県今治市では、加計(かけ)学園が来春開校を目指す岡山理科大学獣医学部のキャンパスが姿を現しつつある。
 
着々と工事が進む一方、大学設置の認可は保留となり、いまだ開校の見通しは立っていない。「小さい頃から衰退していく町を見てきた。せっかくのチャンスなのに外からワーワー言われている感じ」。市内で働く鳥生斎(とりうひとし)さん(25)は、獣医学部新設を巡る中央の騒ぎに複雑な思いをのぞかせる。
 
人口減少の波は、タオルと造船の町で知られる今治市にも迫っている。一九八〇年代には二十万人近くあった人口は今や十六万人ほど。中でも深刻なのが若者人口の流出だ。
 
市の中心部にある商店街は多くがシャッターを下ろしたままで、通る人の姿もまばら。「都会に就職したら戻ってこない。店主が年を取ったら店も終わっちゃう」。陶器店の西原征一郎さん(73)は寂しげに話す。
 
今治市にとって、若者を呼び込める大学誘致は四十年来の宿願だった。市は加計学園のため三十七億円の学校用地を無償譲渡し、施設整備費百九十二億円のうち九十六億円を補助する。
 
今治市に限らず、大学誘致を切り札に地域活性化を図ろうとする地方自治体は少なくない。加計学園は財政支援などを条件に、こうした自治体の要請に応じ、グループを拡大してきた。
 
学園が二〇〇四年、千葉県銚子市に開学した千葉科学大学も、その一つだ。銚子市も「地元活性化の起爆剤」と期待し、補助金七十七億円余を投じた。 しかし、開校から十三年たった今も、人口減に歯止めがかからない。市の保育施設で長年働いてきた女性職員は「市内には企業が少なく、大学を卒業しても銚子に残らない」と話す。
 
六十九億円と見込んだ経済効果は、三分の一の二十三億円(一三年度試算)にとどまる。大学自体も定員割れで赤字が続く。全国で六百ある私立大のうち四割が定員割れ。各地では、自治体が税金を投じて誘致した大学がつぶれるケースも出ている。大学経営に詳しい山梨学院大学学習・教育開発センターの船戸高樹(ふなとたかき)顧問は「少子化が進む中、大学が来れば活性化するという考えは甘い。開学前に自治体と大学がきちっとした将来像を描くことが重要だ」と警告する。
 
ところが、国主導の獣医学部新設において、重視されたのはスピード感だった。規制改革の名の下、政府は「一八年四月開学」という最速スケジュールを掲げ、開学を急いだ。
 
トップダウンの地方創生。国に引っ張られるように、今治市も獣医学部新設ありきで準備を進めた。置き去りにされたのは市民たちだ。「補助金の元が取れるのか」。相次ぐ疑惑に国や市から十分な説明もなく、戸惑いが広がる。八月に市民団体が市内で開いた獣医学部設置を考えるシンポジウムには、会場いっぱいの約二百五十人が詰めかけた。
 
市議の一人は不安をのぞかせる。「住民本位でない、かけ離れたところで決まっている。獣医学部新設で住民が住みよい今治になるのだろうか」

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