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森友、加計、日報といずれも「嘘で塗り固める」しかなくなった政権は早く交代させないと、逆境を乗り越えようとしてトランプと同じように国民をあらぬ方向に扇動する恐れがある。ー(田中良紹氏)

「嘘つき内閣」は国民をあらぬ方向に扇動する恐れがある

(田中良紹氏)11th Aug 2017 

3日の内閣改造後に記者会見を行った安倍総理は、冒頭「先の国会では森友学園への国有地売却の件、加計学園による獣医学部の新設、防衛省の日報問題など様々な問題が指摘され、国民の皆様から大きな不信を招く結果となりました。そのことについて深く反省し国民の皆様にお詫び申し上げたいと思います」と8秒間頭を下げた。  

最高権力者が頭を下げたということは、自らの非を認め不信を招いた原因を取り除く決意を示したと考えるのが普通だが、安倍総理の頭の中はそうなっていない。
 

再び頭を上げると「5年前に私たちが政権を奪還したあの原点にもう一度立ち返り、謙虚に丁寧に国民の負託に応えるために全力を尽くす。

政策課題に結果を出すことで国民の信頼回復に向けて一歩一歩努力を重ねる」と言い、新閣僚の任務についての説明を始めた。  

つまり安倍総理の頭は、森友問題、加計問題、日報問題など国民の不信を招いた問題は自分が頭を下げることで消え去り、内閣をリセットして新たな政策課題を打ち出せば国民はそちらに目を向け信頼回復は可能だと考えているのである。
 

安倍総理にそのような思考を持たせた原因の一つは国民にある。「景気が良くなる」とささやいて鼻先にニンジンをぶら下げれば、それを信じて走る馬並みの国民だから「国民を舐めるな」と言っても舐めたくなるのは無理もない。
 

安倍総理の会見から1週間後に開かれた日報問題を巡る国会の閉会中審査はそれを端的に物語るものとなった。南スーダンに派遣された陸上自衛隊の日報を巡り隠蔽が問題とされたが、誰がどういう形で関わったのか、内部調査の「特別防衛監察」は曖昧な結論しか出せなかった。
 

そうした場合「普通の民主主義国」なら国民の代表が集う議会による調査が行われ議会が報告書を作成する。国民の税金で賄われる行政府の監視は議会の任務であり、国民に対する行政府の情報隠蔽があればそれを追及して開示させるのも議会の重要な仕事である。
 

従って10日に行われた日報問題を巡る閉会中審査はその入り口に当たるものと思われた。ところが問題の主役である稲田前防衛大臣、黒江前防衛事務次官、岡部前陸上幕僚長はいずれも辞任したことを理由に与党が出席を拒否した。
 

その理由が理解しがたい。「辞任という最高の形で責任を取ったのだから議会に呼ぶ必要はない」というのである。辞任は本人の勝手な行為である。その勝手な行為が問題解明の障害となってはならない。辞任と問題解明は別問題である。
 

なぜ隠ぺいが起きたかは将来の日本の国家統治を誤らせないために解明しなければならない。当事者の辞任で日本の未来を失ってはならない。おそらく出席しなかった3人の中には国会で証言する覚悟の者もいたのではないか。
 

それをさせなかったのは安倍総理を筆頭とする政権の意向だとフーテンは思う。そしてその意向を受けて言いなりになった与党執行部が情けない。議院内閣制に於いて政権と与党は基本的には一体だが、それは国民に公約した政策についてである。政策を巡っては国会内で与党と野党は対立し与党は政権を守る側に立つ。 しかし役所が国民に情報を隠蔽し、あるいは権力者のスキャンダルが問題となった場合はそれと同じでない。

議会は行政府の監視役としての役割を果たさなければならない。与野党が協力し役所や権力者を調査する側に回るのである。森友問題、加計問題、日報問題はまさに与野党が対立する問題ではなく、むしろ与野党が協力して問題を解明すべき問題なのだ。それがそうなっていないところに現在の日本政治の歪みがある。

そこから国民は「安倍一強」の弊害を感じ、内閣支持率の急落に至ったとフーテンは思う。10日の閉会中審査は衆参とも「防衛特別監察を隠れ蓑」に防衛省側は何を聞かれても答えないという異常な委員会であった。その中で注目されたのは小野寺防衛大臣が北朝鮮のミサイル発射計画に対し、「日本が集団的自衛権を行使して迎撃することは可能」と答弁したことである。
 

現在、米国のトランプ政権と北朝鮮の間で言葉による挑発がエスカレートしている。なぜエスカレートするかと言えばトランプ大統領の政権運営がうまくいかないためである。権力者の常套手段だが国民の目を外に向ける必要に迫られているのだ。
 

冷戦終了後に北朝鮮の核開発が問題になった時からフーテンは米国議会の議論を見てきたが、米国は北朝鮮の核開発の目的が朝鮮戦争を終わらせ米国と平和友好条約を結びたいためであることをよく知っている。 当初米国は脅威にならないうちに核施設を空爆して除去しようとした。

しかしそれによって韓国の被害が想定以上に大きいことが分かり空爆を断念する。しかし北朝鮮という脅威をこの地域に残しておくことが対中、対日政策上米国の利益だとの判断から対話路線を採らず、むしろ「悪の枢軸」と名指しすることで北朝鮮を本格的な核ミサイル開発に踏み切らせた。
 

従って米国にとって北朝鮮は脅威かと言えばそれほどの脅威ではない。しかし脅威であるとの顔をする必要はある。それによって日本と韓国を米国の言いなりにさせ、新型兵器を売り込むことや米軍の肩代わりをさせる口実にして中国をけん制する。
 

北朝鮮の核ミサイル開発は米国にとって本当の脅威であるロシアと中国をけん制するミサイル防衛の配備にも役立つ。仮に北朝鮮が米本土に届く核兵器とミサイルを持ったとしても、それで米国を攻撃することはないことを米国は知っている。
 

米国が狙っているのは北朝鮮の地下資源と安い労働力である。それをどういう形でか手に入れたい。おそらく頭にあるのは軍事独裁政権が民主化運動を弾圧していたミャンマーを米国の経済圏に引き入れたケースを考えていると思う。
 

北朝鮮はそうした米国の事情を理解し、一方で核ミサイル開発を着々と進めることが将来の交渉を有利にすると確信しているからミサイル実験を繰り返す。それを止める手立てがないことを米国は十分承知している。従って現在の挑発ゲームは米朝ともに国内向けの宣伝に過ぎない。
 

そこに日本の安倍政権も「集団的自衛権行使」の名目で参加しようとするのはトランプ同様に政権運営がうまくいっていないからである。国民の目を森友、加計、日報からそらせたいだけなのだ。北朝鮮のミサイルが日本の上空を飛ぶからといって米朝の挑発ゲームに乗る必要は全くない。
 

森友、加計、日報といずれも「嘘で塗り固める」しかなくなった政権は早く交代させないと、逆境を乗り越えようとしてトランプと同じように国民をあらぬ方向に扇動する恐れがある。

10日の閉会中審査はそれを物語っている。

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