今治市は特区申請の意義を「公務員獣医師の不足やライフサイエンス分野の需要への対応」とするが、もともとは若者を呼び込むための大学誘致だった。獣医学部に傾いたのは、学園から提示されたから。
今治市は特区申請の意義を「公務員獣医師の不足やライフサイエンス分野の需要への対応」とするが、もともとは若者を呼び込むための大学誘致だった。獣医学部に傾いたのは、学園から提示されたから。
なぜ獣医学部に固執 加計学園「学生集めやすい」
東京新聞2017年7月23日
学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設を巡って二十四、二十五日に衆参両院の閉会中審査が開かれる。政府側が国家戦略特区による学部新設の意義を説く一方で、安倍晋三首相の友人である学園の加計孝太郎理事長は口を閉ざしたままだ。なぜ獣医学部にこだわるのか。関係者の話からは、国家戦略とは懸け離れた学園の事情が見え隠れする。
■「志願者は20倍」
愛媛県今治市が獣医学部新設に動きだした二〇〇六年ごろ、加計理事長が学校予定地を訪れた。 「獣医学部ならば、どこも志願者が二十倍ぐらいあるので、学生集めに苦労しない」。当時市長だった越智忍県議は、加計氏の言葉を今でも覚えている。
越智氏によると、学園から「地元も負担を」と求められ、提示された額が百億円。後日、越智氏が「二、三割まけて」と言ってみたら、「そんなこと言われたのは初めて」と笑って返されたという。
今治市は特区申請の意義を「公務員獣医師の不足やライフサイエンス分野の需要への対応」とするが、もともとは若者を呼び込むための大学誘致だった。獣医学部に傾いたのは、学園から提示されたから。学園は獣医学部新設に踏み出したきっかけについて、本紙に「特区の申請書に書いている通り」としか答えない。
日本獣医師会の北村直人顧問は〇七年二月、加計氏と面会し、「息子が鹿児島大学の獣医学科にいるが、入学式のときに大学を見てこれなら自分でもできると感じた」と聞かされた。北村氏は「ただ獣医学部を作りたいと言うだけで、教育への熱意は感じられなかった」と打ち明ける。
■拡大路線が加速
千葉科学大学創立や教育学部、看護学部の新設…。一九六一年に学園を創立した父の後を継いで、加計氏が理事長になると拡大路線が加速した。獣医学部もその流れにある。
岡山市を地盤とし、加計氏と親交のある江田五月元法相は「鼻が利く人。よく『学園を大きくしたい』と言っていたが、教育論を聞いた記憶はない」と話す。 系列大学の教授の定年引き下げを巡り、六年前に教授らが起こした民事訴訟の中で、学園側は学部を新設する狙いを次のように明かしている。「少子化による学生減少で学生確保の競争が激化することは明らか」「時流に即した興味深い新たな学部を創設することは大学の活性化につながる」
これに対し、教授らは新学部で次々と定員割れが起きている実態を示し、獣医学部構想について「度重なる失敗の反省もなく設置するのは許し難い」「無謀というほかない拡張計画」と訴えた。
学園の教職員組合が二〇一四年に実施したアンケートでも、獣医学部新設に「反対」「どちらかというと反対」が七割強に上った。
■加計学園の獣医学部新設の流れ
1964年4月 岡山理科大が開学
75年 愛媛県今治市が大学誘致を目指す学園都市構想
2001年1月 加計孝太郎氏が学園理事長に就任
04年4月 千葉科学大が開学
05年 愛媛県議が同級生の加計学園事務局長に大学誘致を打診し、検討始まる
07年11月 愛媛県と今治市が構造改革特区に申請
(以降15回申請したが採用されず)
14年4月 千葉科学大に看護学部新設
15年6月 愛媛県と今治市が国家戦略特区に切り替えて申請
16年4月 岡山理科大に教育学部新設
11月 特区による獣医学部新設の方針決定
17年1月 事業者公募で加計学園が選ばれる
3月 18年4月開学に向け設置認可申請
« 避難経路が見つからない、安心が見当たらないという中で、四国電力伊方原発の運転差し止めを求める住民の訴えを、松山地裁も退けました。「不合理な点はない」という不思議な判決です。裁判官は現地を歩いてみればすぐ分かる筈ですが。 | Main | おぃ、おぃ、NHKよ。お前は、狂ったのか。この土日の政治報道番組が、来週の予算委員会・閉会中審査について、どう報道するか。『日曜討論』は、ヒアリ問題を扱っていた。NHKは、もう狂っている。 »
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