廃炉時代、いばらの道 原発「40年ルール」9基並行作業
廃炉時代、いばらの道 原発「40年ルール」9基並行作業
毎日新聞 2017/6/26
先行の東海「長期化、想定以上」東京電力福島第1原発事故を機に原発の運転期間を原則40年に制限するルールが導入された影響で、一挙に6基の原発の廃炉が決まった。事故前に作業が始まっていた3基と合わせ、9基の原発の廃炉が並行して進む本格的な「廃炉時代」を迎えている。約30年にも及ぶ廃炉作業をどう安全に進めるか、発生する放射性廃棄物の処分場をどう確保するか、課題は多い。
国内の商用原発で初めて廃炉作業に入った日本原子力発電の東海原発(茨城県)。心臓部の原子炉建屋内は配管や熱交換器が撤去され、がらんとしていた。
解体・撤去は、放射性物質の汚染が少ない周辺設備から着手。既に発電用タービンは撤去した。現在は、原子炉を囲むように4基ある熱交換器の解体中だ。しかし、廃炉開始から15年以上たつが、汚染度の高い原子炉本体は手つかずだ。
実は、当初の計画では今年度中に廃炉が完了するはずだった。だが、国内の他の原発と異なり、核分裂反応を促進するため原子炉内で大量に使われている黒鉛ブロックを搬出する計画作りに時間がかかり、完了は2025年度に延期された。担当者は「作業員の被ばくを減らし、安全第一に進めた結果、想定以上に時間がかかった」と漏らした。黒鉛ブロックを使っていることで放射性廃棄物の量も多く、費用は885億円と飛び抜けている。
福島第1原発事故後の法改正で、原発の運転期間は原則40年となった。原子力規制委員会が認めれば最大20年延長できるが、莫大(ばくだい)な安全対策費が必要だ。電力各社は費用対効果を考慮し、出力の小さな5原発6基の廃炉を選択した。
規制委は今年4月、日本原子力発電敦賀1号機(福井県)▽関西電力美浜1、2号機(福井県)▽中国電力島根1号機(島根県)▽九州電力玄海1号機(佐賀県)の廃炉計画を認可、残る四国電力伊方1号機(愛媛県)の廃炉計画も近く認可する見通しだ。
各社の計画によると作業はまず、使用済み核燃料の取り出しから始める。並行して、作業員の被ばくを減らすため、建屋内の汚染状況調査や配管を洗浄して除染するなどの作業を5~10年かけて行う。その後、原子炉付近の放射線量が下がるのを待つ間に汚染度の低い設備の解体・撤去に8~15年かける。原子炉本体の解体には6~9年かかり、最後に建屋を4~8年かけて解体して更地に戻す。
特に難しいのが原子炉本体の解体だ。線量が下がるまで待ってから作業に入るが、それでも人が立ち入ることはできない。遠隔操作ロボットで解体を進めることになるが、高度な技術が必要。19年度から原子炉本体の解体に着手する東海原発は、熱交換器の解体で試験的に遠隔切断装置を導入しノウハウの蓄積を図る。
関西電力は昨年4月、中国、四国、九州の電力3社と廃炉に向けた技術や資機材の共有を進めていくと発表。廃炉作業を請け負うメーカーの動きも活発で、三菱重工は廃炉を専門に扱う部署を新設した。原発の新設が滞る中、「廃炉ビジネス」に活路を開きたい思惑が透ける。
放射性廃棄物、行き場なし
最大の問題は、放射性物質に汚染された廃棄物の行き場がないことだ。
解体で出る放射性廃棄物は、放射能レベルに応じて3区分(L1~L3)され、いずれも地下に埋めて処分する。原子炉内にある制御棒や構造物など最も汚染度の高いL1は、放射線の影響が低減する約10万年後まで、地下70メートルより深い地中に埋設。原子炉圧力容器などのL2、原子炉建屋のコンクリートや金属などのL3も地下数メートルから十数メートルに埋めて放射線を遮断する。
廃炉が決まった7原発9基で計約8万トンの放射性廃棄物が出る見込みだが、埋設処分した例はまだない。唯一、処分場所が具体的に計画されているのは東海原発のL3の1万6000トン分。日本原電は15年7月、原発敷地内に縦100メートル、横80メートル、深さ約4メートルの穴を掘って埋め、厚さ2メートルの土で覆う処分計画を原子力規制委と茨城県に提出した。だが、規制委が審査中で、県の同意も得られていない。
一方、国は05年、被ばく線量が年0・01ミリシーベルト以下になるような廃棄物は放射性物質として扱う必要がなく、一般廃棄物と同様に再利用を認める「クリアランス制度」を導入。9基で最大約20万トンが再利用可能になる。
しかし、これまでに再利用されたのは、金属廃材を原子力施設内のベンチやテーブルに使うなど一部に限られ、市場への流通はない。電気事業連合会によると再利用は当面、電力業界内にとどめるという。日本原電の米澤弘幸・東海発電所廃止措置室長は「原発から出たごみという悪いイメージが付きまとい、理解が進まないのが現状。丁寧に説明するしかない」と話す。
国内の商用原発で初めて廃炉作業に入った日本原子力発電の東海原発(茨城県)。心臓部の原子炉建屋内は配管や熱交換器が撤去され、がらんとしていた。
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