「出口」見えぬ日銀の政策 黒田総裁下で軌道修正を
「出口」見えぬ日銀の政策 黒田総裁下で軌道修正を
毎日新聞2017年4月28日
日銀が経済と物価の最新見通しを公表し、景気判断に9年ぶりとなる「拡大」という表現を入れた。物価は、相変わらず現状とかけ離れた、高い予想を示した。
今年に入り、下落こそ止まったものの、物価はまだゼロ%近辺の上昇率にとどまっている。それが今年度、1・4%まで跳ね上がるという見通しだ。1月時より0・1%引き下げたとはいえ、市場の予測を大きく上回る。2019年度には1・9%と、目標に迫るという。
日銀が黒田東彦総裁下の現体制になって以来、物価見通しは常に上ぶれし、時間の経過とともに下方修正されるパターンを繰り返してきた。
2年前、日銀は16年度の見通しを目標と同じ2%としたが、実際はマイナス0・3%と大幅に狂った。
確かに現在は、過去の物価下落要因だった原油価格の急落がなくなり、一方で人手不足から賃金が上昇しやすくなっている。とはいえ、一気にゼロ%近辺から1・4%まで上昇するのは非現実的と指摘する民間エコノミストが少なくない。
日銀が低い見通しを示していては、世間の物価予想に影響し、実際の物価も上がらない--。そんな判断かもしれないが、度重なる下方修正は、日銀の信頼を傷つける。
「2年ほどで物価上昇率2%を達成する」と宣言し、黒田日銀が異次元の緩和を始めて、丸4年だ。現実離れした高い物価目標に固執し、ずるずると異例の金融緩和を続ければ、効果以上に弊害の深刻化が問題となってくる。
実際、地方の銀行を中心に、貸出金利の低下で利益が圧迫されているようだ。これを補おうと、金利を稼げる高リスクの取引に傾斜すれば、経営不安に陥る恐れがある。不動産向けの貸し出しが急増しているのも気になるところだ。
異次元緩和が長期化するほど、正常な金利政策へ戻す「出口」の作業は困難を増す。27日の総裁記者会見では、この出口に関する質問が相次いだが、黒田総裁は「語るのは時期尚早」と、説明を避け続けた。
黒田総裁と2人の副総裁は、再任がなければ来春、5年の任期を終え退任する。景気認識が久々に改善したというのであれば、より現実的な政策への軌道修正を始める時だ。
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