安全保障関連法・TPPによって国の形が変わろうとしている時に、それに対して政治家・マスコミは全く本当の事を国民に話そうとしません。この様な時ほど、逆に国民から声をあげるべきです。
安全保障関連法・TPPによって国の形が変わろうとしている時に、それに対して政治家・マスコミは全く本当の事を国民に話そうとしません。この様な時ほど、逆に国民から声をあげるべきです。
<安保論議が残したもの> 立憲主義か非立憲主義か 新たな対立軸出現
(北海道新聞)
全国で反対の怒号が渦巻く中、9月19日に安全保障関連法が成立して1カ月あまり。日本中を巻き込んだ議論の過程では、安全保障問題だけでなく「国のかたち」にかかわるさまざまな論点が浮かび上がった。与党が審議を打ち切ったことで、いずれの論点も積み残され、今も国民の間に深く沈殿したままだ。来年夏には参院選が行われる。大きな争点になり得るテーマを取り上げ、あらためて見つめ直したい。
一連の安保論議で一躍脚光を浴びたキーワードの一つに「立憲主義」がある。授業で触れる程度だったなじみの薄い概念が突然、安保論議の最大のテーマに急浮上した。全国のデモ でも「立憲主義を壊すな」が合言葉となり、今年の流行語大賞にも挙がりそうな勢いだ。
そもそも立憲主義とは、国の統治を憲法に基づいて行うという原理だ。「言論の自由」や「信教の自由」などの国民の権利を守るため、憲法によって国家権力を制限する近代民主主義国家の根幹でもある。
今回成立した安全保障関連法の最大の柱は、歴代政権が「憲法上、認められない」と判断してきた集団的自衛権 の行使を容認し、法律で行使を可能にしたことだ。安倍晋三首相は 憲法解釈 を変える際、国民に憲法改正を問うことなく、国会審議も経ず、 閣議決定 という身内だけで行える手続きで変更した。
■制約嫌う政権
こうした手法に、多くの学者や元 内閣法制局長官 、最高裁判事経験者らが「立憲主義を壊す」と批判すると、国民の間で急速に共感が広がっていった。
それでも首相は「(適切な解釈を行うのは)政治家の責任だ」と切り返し、中谷元・防衛相に至っては「憲法をいかに法案に適応させればいいかという議論を踏まえて閣議決定した」と答弁(後に釈明)。批判を寄せ付けなかった。
「根底にあるのは、憲法に制約されることを嫌う政治の側の心理。そして『権力の行使を自制するのは面倒くさい』『政治はもっとフリーハンドを持つべきだ』という考え方だ」。法政大の杉田敦教授(政治学)は一連の政府・与党の姿勢に「非立憲主義の台頭」をみると言う。
中国の海洋進出や北朝鮮のミサイル開発という「安全保障環境の変化」を理由に、政治が必要と判断すれば憲法の制約も超えていいと主張する「非立憲主義」。一方で各種世論調査では、政治が憲法の枠を超えようとする手法を「危うい」と感じる反対世論の存在がはっきりと表れた。「思った以上に日本に立憲主義者がいた。保守か革新か、右か左かでなく、『立憲主義か非立憲主義か』という新たな対立軸が既に生まれている」と杉田氏は言う。
学習院大の青井未帆教授(憲法学)も「『日本が危ないんだから、理屈をこねている場合じゃない』という考え方が、政府・与党に急速に拡大している」と警鐘を鳴らす。首相が「政治の責任」をことさらに強調するのも、こうした「非立憲主義」的な考えと根っこは同じだと主張する。
■「審判受ける」
そこで思い出した首相の言葉がある。「(憲法解釈の)最高の責任者は私だ。私が責任をもって、選挙で審判を受ける。審判を受けるのは内閣法制局長官ではなく私だ」。昨年2月の国会答弁だ。
杉田氏は言う。「首相には、内閣法制局長官も憲法学者も、民主的に選出されたわけではないから正当性が弱いという考えがある。民主的に選ばれたリーダーの言うことを通すのが民主主義であり、それにブレーキをかけるのは『反民主主義的だ』という主張だ」。そうした首相の民主主義観は、民主政治の理解としてはあまりに一面的だ。
確かに、自民党が政権を取り戻した2012年を含め、首相は3度の国政選挙で勝利した。だが立憲主義とは、たとえ民意の結果の政権であっても、憲法によってその行動に枠をはめる考え方だ。それは何のためか。青井氏は「フールプルーフ(操作を誤っても安全が確保されるような設計)な仕組みをつくろうというのが立憲主義の根本にある」と説く。
選挙を通じて、その時の民意を正確に反映すれば、よい政治体制になるとは限らない。この国のかじ取りを名宰相が担っても、そうでない人が担っても、国民の権利は絶対に守られる。憲法は、そのためにある。
にもかかわらず、安保関連法を「合憲」と主張する政府・与党の側に「非立憲」という意識はない。与党幹部は「野党が批判のために言っているだけ」と取り合わない。その中で、立憲主義と非立憲主義は参院選の争点になり得るのか。
「『あなた方の行為は非立憲主義だ』と言い続け、そうした考え方を 可視化 していかないといけない。壊れかけている立憲主義を取り戻せるかどうか。参院選は間違いなくそれが問われる」と青井氏は強調する。
これまでは、憲法問題と言えば9条や憲法改正手続きを定めた96条など個別条文が主要テーマだった。それが安保論議を通じ、憲法の精神や原理そのものが国民の間に広く浸透し、それを守るか、壊すかの議論が広く芽生えつつある。
あなたの権利を、すべて政治に任せていいですか―。新たに生まれた「立憲主義・非立憲主義」の対立軸は、その問いを私たち国民に投げかけている。
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