毎日新聞は集団的自衛権の行使など自衛隊の海外での活動を広げる安全保障関連の法案と表現して質問してきましたが、日本の安全と平和を維持する法案などと政府の説明に沿った肯定的な質問した新聞社もありました。
安保関連法と世論調査:賛否で国論二分、内閣支持率と相関
毎日新聞 2015年10月12日
先月成立した安全保障関連法を巡っては、新聞各紙が世論調査結果を積極的に報じてきた。同法に対する各紙の論調に違いはあったが、国会審議が進むにつれて反対世論が強まり、内閣支持率が下落する傾向は各紙に共通していた。一般的には、日々の生活に関わりの薄い外交・安全保障政策は政権への評価に連動しにくいと言われる。今回は賛否で国論が二分された結果、内閣支持率との相関関係が次第に強まっていった。各紙の世論調査がその過程を伝える役割を果たした。【世論調査室長・平田崇浩】
◇反対増え、支持低下
安保法を今年の通常国会で成立させる方針に賛成34%→25%、反対54%→63%▽内閣支持率47%→35%、不支持率33%→51%。
これは、毎日新聞が4月(18、19日)と7月(17、18日)に全国で実施した世論調査の数値の変動だ。この間、自民、公明の与党協議を経て安保法が通常国会に提出され、憲法学者らによる違憲の指摘もある中で衆院採決に至る。安保法への反発が内閣支持率を押し下げたことがうかがわれるが、調査結果の分析からその相関関係が読み取れた。
安保法を成立させる方針に賛成と答えた層の内閣支持率は76%→86%、不支持率は12%→4%▽反対層の内閣支持率は26%→14%、不支持率は51%→74%。
安保法の成立に賛成する人が減るにつれて、賛成層は安倍内閣支持で純化されていく。安保法への関心が高まる中で反対に転じる人が増え、それが反対層だけでなく、全体の内閣支持率を低下させた。
◇薄れ始めた関心
参院での安保法成立を受けて9月19、20日に実施した調査では、政府・与党が安保法を通常国会で成立させたことを「評価する」が33%、「評価しない」が57%だった。内閣改造を受けて10月7、8日に実施した調査でも、安保法の制定を「評価する」31%、「評価しない」57%。大きな変化は見られなかった。だが、内閣支持率との相関関係を見ると、明らかな変化が生じている。
評価する層の内閣支持率81%→78%、不支持率10%→10%▽評価しない層の内閣支持率8%→16%、不支持率79%→66%。
安保法成立を評価する層ではほとんど変化はないが、評価しない層では支持率との相関が弱まっている。
安倍内閣の支持率は8月8、9日調査の32%を底に9月35%、10月39%と回復傾向にある。安保法成立後はノーベル賞の日本人連続受賞や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉の大筋合意など大きなニュースが続いた。時の政権を評価する材料は多岐にわたる。安保法を積極的に評価する層は引き続き強固に安倍内閣を支持しているが、評価しない層では政権評価に連動させる意識が薄れ始めた兆候がうかがえる。
◇質問表現に苦心
そもそも世論調査というのは、国政の重要課題や国民的な関心事について民意の傾向を探るものだ。その代表的なものが内閣支持率だと言える。時の政権に対する正式な民意は国政選挙で示されるわけだが、選挙のないときも定期的に内閣支持率などを調べることにより、政権や政党、有権者に政策判断の材料を提供する役割が世論調査にはある。
ただ、安保法のように難解なテーマを扱う場合は相当の工夫が必要になる。報道各社の世論調査は、全国の有権者から無作為に抽出した1000人前後を対象に、固定電話で質問に答えてもらうのが一般的だ。数分間の電話で10問を超える質問の意図を伝えるには、平易な言葉で簡潔に説明しなければならない。
毎日新聞は3月の調査以降、「集団的自衛権の行使など、自衛隊の海外での活動を広げる安全保障関連の法案」と表現し、安保法成立前に5回、成立後に2回、継続的に質問してきた。社説などでは安保法に反対する論陣を張ったが、世論調査では賛否のどちらにも誘導する質問にならないよう苦心した。一方で、「日本の安全と平和を維持」「国際社会への貢献を強化」など、政府・与党の説明に沿った肯定的な表現を使って質問した新聞社もあった。
◇デモ参加3.4%?
安保法の参院採決を控えた9月15日の産経新聞には、安保法に反対する集会やデモの参加経験者が「3・4%にとどまった」との記事が掲載された。同紙がFNN(フジニュースネットワーク)と合同で実施した調査の対象者は1000人。このうち34人が集会やデモに参加したことがあると答えたようだ。これは果たして多いのか、少ないのか。
パーセンテージで数値化すると、有権者全体の3・4%が参加したとの推定が働く。安保法への反対が3・4%であれば「少ない」と言えようが、有権者1億人のうち300万人以上が集会・デモに参加したと考えればかなりの人数だ。そもそも1000サンプルの調査では最大3〜4ポイントの誤差を考慮して分析すべきであり、特定の政治活動に参加した人数のような、絶対数の少ない集団を数値化すること自体に無理がある。
産経新聞はこの34人を母数に73・5%が共産、社民、民主、生活の4党支持層だとも書いた。わずか34サンプルをもとにパーセンテージ化した数値に統計上の意味はない。私は「安保法案反対デモの評価をゆがめるな」と題した記事を毎日新聞のニュースサイトに掲載し「『デモに参加しているのはごく少数の人たちであり、共産党などの野党の動員にすぎない』というイメージを強引に導き出した」と指摘した。
◇予断排し、謙虚に
世論調査は万能ではない。1000サンプルで探れる民意には限界がある。数値を恣意(しい)的に扱い、それが民意であるかのごとくゆがめて報じることがあってはならない。
毎日新聞は7月4、5日に実施した世論調査で「第2次安倍内閣発足後初めて、支持と不支持が逆転した」と書いた。このときの内閣支持率は42%、不支持率は43%。統計的に1ポイントの差に意味はない。本来は「支持と不支持が拮抗(きっこう)した」と書くべきだが、4月以降の調査で安保法と支持率の相関関係が強まっていたことから、「逆転」のトレンド(傾向)を明示すべきだと判断した。
これが後に産経新聞から「強引に導き出した」と批判され、10月8日の毎日新聞朝刊では佐藤卓己京都大教授から「そのトレンドを期待する予断が入っていなかったとは言えないはずだ」との指摘もいただいた。毎日新聞の論調に基づく「期待」や「予断」があったように受け取られたことは反省しなければならない。世論調査報道には正確で公正な分析と謙虚な姿勢が常に求められることを肝に銘じていきたい。
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