<緊急リポート・決着TPP>下 国際競争の波直撃 道内、離農加速の懸念
<緊急リポート・決着TPP>下 国際競争の波直撃 道内、離農加速の懸念
(北海道新聞)
自慢のブランド豚の世話をするビィクトリーポーク樽前農場の中岡農場長。「海外の安価な豚肉に太刀打ちできるだろうか」。豚約1万8千頭を飼育するビィクトリーポーク樽前農場(苫小牧)の中岡亮太農場長(36)は、大筋合意した環太平洋連携協定 (TPP)への不安を訴える。
■市場開放
1961~62年の羊毛・羊肉、88年の牛肉・オレンジ、93年のウルグアイ・ラウンド農業合意など、過去半世紀の農政は、国内農業保護と海外からの市場開放圧力とのせめぎ合いの中で進んできた。そのバランスを崩し、市場開放へと大きくかじを切るのが、コメをはじめとする広範な品目で輸入枠の拡大や関税引き下げを盛り込んだTPPだ。
豚肉はソーセージなどに使う低価格品で、1キロ当たり482円の関税が段階的に下がり10年目以降は50円になる。一概に比較できないが、羊毛・羊肉の自由化の際は、道内で56年に26万7800頭を数えた羊が、79年には50分の1以下の4750頭まで減った。今も約1万頭にとどまる。
TPPでは輸入急増時に関税を引き上げる緊急輸入制限措置(セーフガード)が設けられるが、セーフガードも12年目には廃止される。「経営悪化による離農が加速するのではないか」。中岡農場長は輸入豚との価格競争激化を心配する。
■活路模索
もちろん、「 国会決議 破り」(北海道農民連盟)との声も出る今回の大筋合意に憤りを感じながらも、経営の維持、拡大を目指し、国内外に活路を模索する農業者も少なくない。農業生産法人 の黒川産業(後志管内蘭越町)は近く、自社のコメを初めて海外に輸出する。まずは香港の高級レストランなどに向け3トンを販売。黒川利光社長(56)は「TPPの影響を見据え、さまざまな販路を考えたい」と語る。
酪農・乳製品加工のノースプレインファーム(オホーツク管内興部町)は、牛の飼料も含め日本農林規格(JAS)の有機JAS認証 を取得した牛乳やチーズを今年2月に発売した。大黒宏社長(58)は「食の安全・安心を求める消費者はますます増える」とみて、首都圏のホテルや百貨店の販路開拓に注力する。
ただ、1次産品のブランド化や輸出で販路拡大を図る生産者は全体の一握りにすぎない。道内農業者の平均年齢は57・9歳と高齢化が進み、離農も深刻だ。TPPだけでなく、2018年産米からはコメの生産調整(減反)廃止が予定されるなど農政そのものが競争を促す方向に転換しようとしているが、競争についていけない生産者が多発し離農を加速させる恐れもある。
■存廃直結
雪虫が舞う中、コメの収穫が最終盤に入った道北の士別市。コメのほか畑作、野菜、酪農、畜産に製糖工場まである「北海道農業の縮図」(牧野勇司市長)のようなまちだ。かつてコメの出荷量日本一に輝いたこともある。そんな同市ですら、農業従事者数は04年度末の3918人が14年度末には2165人と、この10年で半数近くに減った。
人口減少と高齢化に直面する道内の多くの市町村にとって、基幹産業である1次産業の消長は地域の存廃に直結する問題だ。牧野市長は7日、「何とか耕作放棄地を出さないよう頑張っているのに。(TPPは)地方創生 に逆行するのではないか」と、まちづくりへの影響を懸念した。
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