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野党は権力を握るために妥協を怖れず何でもやるという姿勢であらゆる妨害謀略をはねのける事ことで全ての政党が権力を目指し、民主党政権は政権交代の第一幕だったがようやく第二幕が上がる:田中良紹氏 国会探検

ようやくすべての政党が権力を目指すようになった政権交代第二幕

田中良紹氏 国会探検2015/10/29

世界の社会科学者が共同で各国民の価値観を調査する国際プロジェクトがある。その2005年の調査によると、欧米はほとんどの国民が新聞を信用していないのに対し、日本、中国、韓国の三国は多くの国民が新聞を信頼している。なかでも日本がダントツの1位である。

共産党政権下の中国で新聞の信頼度が高いのは分かる。新聞に国民を統率する使命が課せられているからだ。一方で民主主義の成熟度の高い欧米で新聞の信頼度が低い事情も分かる。

彼らは個人の考えが確立し新聞報道を鵜呑みにしたりはしないからである。 ところが中国と同類なのが日本と韓国で、しかも日本は世界で最も新聞を信ずる国である。

この調査結果をどう見るか。昔からの儒教教育の影響があるからか、

それとも民主主義の成熟度の低さと見るべきか、フーテンは思案し続けている。 確かに日本人の政治姿勢は欧米人と異なる。フーテンの雑駁な印象だが、日本人は政治に対し過度に期待したり、過度に馬鹿にしたりする傾向がある。

無論、欧米でも政治に熱狂したり、逆に政治を徹底して批判したりはするが、しかしその外側にクールに政治を見つめる国民が多い印象を持つ。ところが日本では熱狂と批判の外側に無関心という大きな穴しか見えない。

また日本では政治の目的を「正義の実現」と考える国民が多い。新聞に「正しい報道」を求めるように政治にも「正しい政治」を求めるのである。

しかし正義を実現するには反対者(悪)を排除しなければならず、これは民主主義と相容れない。正義の実現にふさわしいのは独裁政治で、他人の声に耳を傾けずに正義を実現できるのは独裁政治しかない。

独裁政治は愚かな国民の声など聞かずに最高級の頭脳を集めて正しい政策を作り実行する事ができる。それが国民を豊かにし平和をもたらせばこんな良い事はない。しかしその政治が失敗した時、国民は政治を転換させる術を持たない。

独裁政治を倒すには力が必要になり、内戦が終わるまで国民は悲惨な生活を余儀なくされる。そうした経験から生み出された民主主義は正義を実現する政治ではない。意見の異なる国民の利害を調整するのが目的で、妥協の知恵を出す政治である。

みんなが少しずつ譲り合い誰もが100%の満足は得られない。つまり民主政治は「正義の実現」ではなく「利害の調整」である。 55年体制時代の自民党には5つの派閥があり、派閥はそれぞれ総理候補を担いで権力闘争を繰り広げた。派閥は政権交代を目指す政党のようで、かつての自民党は5派閥による連立政権だったと言える。

この5派閥による総理交代劇は「正義の実現」ではなく、妥協による決着を基本とする調整の政治であった。一方の野党はひたすら「正義の実現」を主張し、自民党政権に「何でも反対」を貫く妥協なき政治勢力で、

その代わり政権交代を求めて総理の座を獲得しようとは考えない。

それが国民に「正義の実現」が政治で、野党は反権力で居続けるべきだと思わせてきたのではないか。しかし長年続いた自民党単独政権は冷戦の終焉と共に使命を終え、小選挙区制の導入により政権交代可能な政治構造が作られ、自民党内の擬似的政権交代に代わる、本格的な野党の誕生が求められた。

こうして民主党政権が誕生する。しかしこの政権には「正義の実現」を主張したかつての野党的体質が抜けていない。政治の基本はまずは権力を握る事にある。それがなければ官僚機構を動かし政策を実現する事はできない。権力を握るには数を集める必要がある。数を集めるには妥協を厭わない柔軟な姿勢が必要だ。それが民主党政権に見えなかった。

もっぱら正論を主張して国民受けを狙い、立ち向かうべき自民党と霞ヶ関との闘いに連戦練磨してきた小沢一郎氏を使いこなせず、権力をみすみす手放す醜態を演じた。

その後に登場した安倍自民党政権は民主党の過ちを繰り返さない事だけを心掛けている。党内を結束させ、公明党とも齟齬がないよう妥協を重ね、野党とだけ対立している。 それが三度の国政選挙に勝利して議席数を盤石にした。しかしだからと言って政治基盤が万全になったわけではない。

安倍政権の米国に対する過度の追随、政策的に水と油の関係にある公明党との妥協は、立憲主義を無視した安保法制を生み出して、国民に大いなる疑問と反発を抱かせた。それが25日開票の宮城県議選の選挙結果に表れた。

安保法制を廃案にして集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回のため

「国民連合政府」実現を呼びかけた日本共産党が議席を伸ばして第二党となり、他の政党はみな議席を減らす結果を生んだ。

27日に日本記者クラブで会見した共産党の志位委員長は自公政権を倒すため「何でもやる」と断言した。これは共産党にとって歴史的な方針の大転換である。これまで「正義の実現」を主張するだけで全く権力に関与しようとしなかった「万年野党」の共産党が、初めて権力の獲得を目指すと宣言したのである。

自民党が権力を維持できたのは2つの理由による。

一つは公明党の選挙協力である。それがなければ自民党の議席は激減しとうの昔に政権を失っていた。

もう一つは自党の路線だけを正しいと主張する野党がバラバラでまとまらない事である。野党の票の奪い合いが自公を有利にしてきた。特に全国に基礎票を持つ共産党が全選挙区に候補を立て、それが全くの死に票となった。

それを変える大義は「民主主義」と「立憲主義」である。この2点で手を組めれば共産党は他の野党と選挙協力に乗り出す。これには当然ながら権力の側の反発が強まる。様々な妨害、謀略が仕掛けられるだろう。

しかしフーテンに言わせれば唯我独尊を貫いて権力に関わらないできた野党の存在こそが民主主義をおかしくしてきた。国民主権と言う以上、国民の代表として権力を奪取する事こそが民主主義政党の役割である。

権力を握るために妥協を怖れず、何でもやるという姿勢で、あらゆる妨害、謀略をはねのけて前進する事をフーテンは望む。

民主党政権は政権交代の第一幕だったが、すべての政党が権力を目指すようになった事でようやく第二幕が上がる。


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