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<柳沢協二の安保国会チェック>理性的な政治が必要

<柳沢協二の安保国会チェック>理性的な政治が必要

(09/13北海道新聞)



●安保環境は厳しくなったか

●抑止力だけで脅威を排除できるか

 

安倍晋三首相は 安全保障関連法案 の国会審議で、中国や北朝鮮の脅威が増していると繰り返し、こうした安全保障環境の変化を理由に集団的自衛権 の行使などの必要性を訴えてきました。11日の参院平和安全法制特別委員会でも「今日の安保環境の下では、もはやどの国も1国のみで自国の安全を守ることはできない」と述べました。

 

しかし、脅威をことさら強調することは日本周辺の緊張感を高める恐れがあります。政府・与党は18日までに法案を成立させる構えですが、あらためて安全保障環境の変化について議論する必要があります。

 

確かに、中国は経済大国になって軍拡を進め、日本を挟んで米国と対峙(たいじ)しようとしています。地政学的に言えば、日本にとっては米国と旧ソ連が対立した、かつての冷戦構造に近い脅威なのかもしれません。

 

しかし、冷戦時代と大きく違うのは、世界の経済的な結びつきが強固になり、米中も相互に依存し合っています。8月には中国の経済不安が瞬く間に世界中に広がりました。米中は互いにつぶれては困る関係になっているのです。そうした面から考えると、安全保障環境は冷戦時代の方がより厳しかったとも言えます。

 

また、首相は中国などの脅威から国民を守るために「日米同盟を強固にして抑止力を高め、切れ目のない防衛体制を整備する必要がある」と訴えてきました。

 

手ごわい相手だと知らしめ、安易に攻撃させないようにする抑止力が、脅威を排除する一つの手段であることに異論はありません。しかし、米国との同盟を強調し過ぎれば、これに対抗しようと中国が軍拡を加速させかねない。結果的に大国に挟まれた日本を現場として、米中間の緊張を高める可能性があることを忘れてはならないのです。

 

冷戦後の世界は脅威を排除するため、抑止力よりも経済的な結びつきを強化し信頼醸成を図ることや、環境問題など共通の価値観を見いだすことに重点を置いてきました。米中間でも戦争にならないよう戦略的対話が進められています。

 

19世紀の軍事学者クラウゼビッツは、戦争を構成する重要な要素の一つとして「国民の感情」を挙げています。平和を実現するには、いたずらに国民のナショナリズムを鼓舞するような勇ましい主張ではなく、冷静に状況を分析する政治の理性が必要なのです。

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