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米国に守ってもらわないと日本は生きていけないかのように政府・与党は言うが、米国は日本との戦争に勝利して以来、一度も戦争に勝てない国である。 :田中良紹氏国会探検

衆議院より絶対に面白い参議院の安保審議:田中良紹氏国会探検



田中良紹氏国会探検 2015/9/5

安保法案の審議は参議院の方が衆議院の時より絶対に面白い。特に安倍総理が出席しない、従ってNHKがテレビ中継しない時の「一般質疑」はめっぽう面白い。にもかかわらず新聞もテレビもあまり伝えないのでフーテンが代わりに紹介する。



まず参議院の審議を面白くしたのは安倍総理の「お友達」の礒崎陽輔総理補佐官である。参議院の審議が始まる前日に安保法案について講演し、「法的安定性は関係ない」、「9月中旬に成立させたい」との問題発言を行った。



法律に従うのが仕事の行政府から「法的安定性は関係ない」と言われれば、法律を作るのが仕事の立法府は立場がない。国会は存在理由を否定されたに等しい。国会議員であるならば与野党を問わず怒りの声をあげ、行政府に「けじめ」をつけさせなければ、三権分立も民主主義もへったくれもない。



もう一つ「9月中旬に成立させたい」との発言も、国会審議の日程をあたかも官邸がコントロールできるかのような印象を国民に与える。総理大臣が国会審議をコントロールできるのであれば、これも三権分立にも民主主義にも反する。



礒崎補佐官を参考人招致した参議院の安保特別委員会で鴻池委員長は、「参議院は貴族院が軍部の独走を止められなかったという先の大戦の反省から生まれた。 衆議院の拙速を戒め、衆議院の足らざるところを補完する役割がある。参議院は衆議院の下部組織でも官邸の下請けでもない」と発言して不快感をあらわにした。



つまり委員長は「衆議院で強行採決された法案をそのまま成立させるわけにはいかない」と釘を刺したのである。またその後、磯崎補佐官が辞任しないことによって審議日程が進まないことを「あの日に腹切っておきゃよかった。いまだに竹ののこぎりで足切られたり、首切られたりかわいそう」と、辞めさせなかった安倍総理の姿勢を批判した。参議院では審議を取り仕切る委員長が公然と政府・与党のやり方を批判している。

次にフーテンが注目するのは安倍総理の「お友達」である新党改革の荒井広幸参議院議員である。荒井議員は審議の冒頭で安保法案を成立させるために全力で協力することを表明した。しかし一方で国民の反対が日を追って強まっていることから、反対を和らげる方策を模索し、「例外なき国会承認」を歯止めに取り入れるよう修正案を作成した。その荒井議員は鴻池委員長と同じ認識に立っている。



参議院の存在理由は貴族院が先の大戦を阻止できなかった反省から生まれたとの認識である。従って衆議院が強行可決した安保法案に何らかの歯止めをかけるのが参議院の役目と考える。荒井議員は法案成立に賛成の次世代の党や次世代の党から分かれた日本を元気にする会に働きかけ「例外なき国会承認」を盛り込んだ修正案を参議院に提出した。



ところが会期内の法案成立を万全にしたい政府・与党は9月11日までの成立を参議院に求めた。それは修正協議をやらずに原案通り粛々と採決することを意味する。 野党は反発するから再び参議院でも強行採決せざるを得なくなる。それは鴻池委員長や荒井議員の面子をつぶし参議院の意向を無視する方針である。



さすがに国対レベルではそうしたことを配慮して、一週間遅らせた18日までの採決を模索することになった。国会を知る者なら当たり前の判断だが、それでも修正協議をする余裕はない。「例外なき国会承認」は法案修正ではなく「付帯決議」という政府を拘束しない希望表明の形で盛り込まれる方針になった。



これに荒井議員が怒った。4日の委員会で荒井議員は「お友達」の安倍総理を批判するわけにはいかず、その背後にいる行政府の政治コントロールを口を極めて罵った。特に法案を主導した外務省に対し「自衛隊員の命をもてあそんでいる」と厳しく糾弾、防衛省に対しては「あいまいな答弁なら自衛隊を海外に出すわけにいかない」と声を荒げた。



今国会での成立に全面的に協力することを表明していた荒井議員が、今や憤懣やるかたない有様なのである。成立させることが職務の鴻池委員長もおそらく荒井議員と同様に不満がある。そして荒井議員と共同で修正案を提出した次世代の党や日本を元気にする会も同様のはずだ。



4日には衆議院に議席を持たない日本を元気にする会と無所属クラブの代表が、安保法案成立阻止のために開かれた民主、維新、共産、社民、生活の野党党首会談に出席した。



ところがその日、安倍総理は大阪のテレビ番組に出演するため関西入りする。 分裂状態にある維新の大阪組との連携をアピールする狙いがあったようだが、お膝元の政治の動きを注視せずにローカルな弱小勢力と手を組む意味が理解できない。



追い込まれた権力者が大衆迎合のためにじたばたしているとしか見えず、これでは荒井議員も安倍総理を支えきれなくなるのではないか。さらに参議院では共産党が自衛隊の内部文書を次々に暴露した。フーテンは以前から自衛隊を「米軍のパーツ」と表現してきたが、内部文書は自衛隊が国民の命を守る専守防衛の組織より、米軍の一部隊として存在する実態を明らかにしている。



自衛隊の内部に「反乱兵」がいるのである。米軍と自衛隊が先行する計画に日本の政治家と官僚機構が動かされる実態を暴露しようとする「反乱兵」が現れたのだ。 暴露はまだ始まったばかりだから、時間をかけてじっくり検証する必要がある。



米国に守ってもらわないと日本は生きていけないかのように政府・与党は言うが、フーテンが何度も書いてきたように、米国は日本との戦争に勝利して以来、一度も戦争に勝てない国である。



朝鮮戦争で中国と北朝鮮に勝つことができず、ベトナム戦争では北ベトナムと南ベトナムの民衆に敗れ、その後、アフガンでもイラクでも勝利できない。米国は戦争をしないと生きていけない構造を持つが、しかし戦争には勝てない国であることを自覚し始めている。



これまで同じアングロ・サクソンの英国が軍事協力してくれたが、イラク戦争での「大量破壊兵器のウソ」以来それが難しくなった。米国にとって英国の代替がオーストラリアと日本である。そうしたことを証明するまで暴露が続けば日本人の目も覚める。



こうして参議院の安保法案審議は衆議院よりも絶対に面白くなった。それほど面白い審議をあと2週間程度で終わらせてしまうのは困る。今国会の会期が終わっても日本がなくなるわけではないから、是非、国会で安保論議をこのまま継続してもらいたい。



それがフーテンの切望であり、安倍政権の名が歴史に刻まれる道でもある。

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