<論戦 安保法制「不戦」どこへ>平時の米艦防護に危うさ 3要件・国会承認不要 専門家「実態は集団的自衛権
<論戦 安保法制「不戦」どこへ>平時の米艦防護に危うさ 3要件・国会承認不要 専門家「実態は集団的自衛権」
(北海道新聞)
安全保障関連法案 をめぐる国会審議で、武力紛争が発生する前の平時から自衛隊が米軍艦船などを守れるようにする「武器使用権限の拡大」の危うさが浮かび上がってきた。政府が「厳格な基準」と強調する武力行使の3要件 を満たす必要がなく、国会承認などの手続きを経ずに実施できる上、武力行使につながりかねないためだ。専門家からは「実態は 集団的自衛権 の行使と変わらない」との指摘が上がり、野党は武力行使につながる抜け道だとして追及を強めている。
関連法案では、自衛隊が米国やオーストラリアなどの他国軍の部隊を、平時に武器を使って守れるようにする自衛隊法95条(武器等防護)の改正を盛り込んだ。もともとは自衛隊の装備品を守るために隊員の武器使用を認める規定だったが、守る対象に他国軍の部隊も加えた。政府は南シナ海などで米軍と自衛隊が共同して中国の監視や情報収集を行う場合などでの実施も視野に入れている。
中谷元・防衛相は参院平和安全法制特別委員会で、「ミサイルの使用も当然考えられる」「不審船がミサイルを使用してくる場合に対処することは排除されない」などと答弁。自衛隊が平時に米艦防護を行う中、米艦船が攻撃を受ければ、正当防衛 ・緊急避難としてミサイルで反撃できることを認めた。中谷氏は「武力紛争が発生していない状況」に限ると説明し、紛争時の武力行使である集団的自衛権との違いを強調した。
ただ、自衛隊が他国軍を守る面で集団的自衛権行使と共通する点が多い。武器使用と、敵国を攻撃する武力行使の境界もあいまいで、小沢隆一東京慈恵医大教授(憲法学)は「武力の行使までエスカレートする危険をはらみ、集団的自衛権行使との違いはほとんどない」と指摘する。
野党が問題視しているのが、平時の米艦防護による武器使用が武力行使と紙一重の活動にもかかわらず、集団的自衛権と比べ、実施する手続きが簡単な点だ。関連法案では他国軍から要請を受け、防衛相の判断で行うと規定しており、中谷氏は「基本的に現場の艦長なり指揮官が(実施を)判断する」と説明。原則国会の事前承認が必要な集団的自衛権との違いは大きい。
また集団的自衛権の行使には、わが国の存立が脅かされるなど「武力行使の3要件」を満たす必要があるが、平時の米艦防護には不要。野党は「国会承認も3要件もいらないが、ミサイル迎撃という集団的自衛権と同じことができる。集団的自衛権行使の裏口入学だ」と批判している。
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