<柳沢協二の安保国会チェック>対米追随の姿勢顕著
<柳沢協二の安保国会チェック>対米追随の姿勢顕著
(北海道新聞)
・「統幕長発言」の真意は
・法案は米側の要求か
2日の参院平和安全法制特別委員会で共産党が示した資料が波紋を広げています。資料は、自衛隊制服組トップの河野克俊統合幕僚長が昨年12月に訪米した際の米軍幹部との会談録とみられ、米陸軍参謀総長に安全保障法制の整備状況を問われた河野氏が「来年夏までには終了するものと考えている」と応じた、との記述があります。
会談は昨年12月の総選挙で与党が勝利した直後に行われました。資料が会談録だとすれば、河野氏はなぜ法案が国会に提出もされていないのに、これほど踏み込んだ発言をしたのか。野党は「自衛隊の暴走ではないか」と追及していますが、河野氏が勝手な判断で発言したとは思えません。
政府は昨年7月に 集団的自衛権 行使を認める閣議決定をしたときから、 日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定、法案の国会提出など、すべてのスケジュールを米政府と綿密に打ち合わせていた。自衛隊と米軍の間にも共通認識があり、河野氏は選挙結果を受け「予定通りだ」と米軍側に伝えた―。こう考えるのが自然だと思います。
河野氏の発言が事実だとすれば、政府の対米公約が先走っていたことを裏付けたと言えます。政府は与党との協議や国会審議より、米国の要求を優先させていた。対米追随と言われる安倍晋三首相の姿勢を如実に物語っています。
特別委では、首相の姿勢がこれまでも追及されています。生活の党は 安全保障関連法案について、米国のアーミテージ元国務副長官やナイ元国防次官補ら日本の専門家が、2012年に発表した報告書の「対日要求」を幅広く網羅していると指摘しました。報告書には中東・ホルムズ海峡への掃海艇派遣、日米共同の南シナ海監視などが記されており「完コピ(完全コピー)だ」と皮肉りました。
米国の日本の専門家は知日派と紹介されますが、ジャパン・ハンドラー(日本を操る人)とも呼ばれ、戦後、軍事や経済分野などでさまざまな要求を繰り返してきました。これまでの政権も、日米関係の重要性から可能な限りそれらに応えてきましたが、首相の対米追従ぶりは顕著です。
私が防衛官僚時代に秘書官として仕えた栗原祐幸元防衛庁長官は「背負える荷物は背負うが、背負えない荷物は背負わない」との対米交渉の持論がありました。しかし、首相は憲法解釈 を変更してまで、集団的自衛権の行使など背負えなかった荷物を背負おうとしているのです。
やなぎさわ・きょうじ 46年生まれ。東大法学部卒業後、旧防衛庁に入り、04~09年に安全保障担当の官房副長官補を務めた。
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