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安保関連法案、異論封じ採決へ 「丁寧な説明」名ばかり

安保関連法案、異論封じ採決へ 「丁寧な説明」名ばかり

(北海道新聞2015/9/17)

 

約4カ月にわたって審議が続けられてきた 安全保障関連法案 は16日、参院平和安全法制特別委員会での採決が目前に迫った。衆参両院での審議時間は計200時間を超えたものの、憲法違反の疑いや戦争に巻き込まれる懸念は消えないまま。今国会の会期を戦後最長となる95日間延長し「丁寧な説明」をうたった安倍晋三首相はいま、国民理解にも見切りをつけ採決に突き進もうとしている。

 

国会審議で最大の焦点となったのは法案の「違憲性」だ。歴代政権が「憲法上許されない」としてきた集団的自衛権 の行使。法案が成立すれば、政府の判断で海外での武力行使が可能になり、不戦をうたった憲法9条が形骸化する恐れがある。憲法学者や歴代の内閣法制局長官 、山口繁・元最高裁長官、最高裁判事経験者からも「違憲」との指摘が続出した。

 

それでも首相は、中国の海洋進出など安全保障環境の変化を理由に、憲法解釈 の変更は許されると主張し続ける。国政情勢の変化に対応した憲法解釈変更を認めないのは「政治家としての責任放棄だ」とも述べ、憲法解釈を決めるのは政治家だと強調してみせた。

 

政治が憲法解釈を自由に変えられるのなら、憲法が国家権力を縛る「立憲主義」は崩れる。法案は、戦後日本が尊重してきた「憲法の重み」そのものを失わせる危険がある。

 

集団的自衛権行使の歯止めや、自衛隊員のリスクへの対処も明確になっていない。政府は、国民の生命や権利が「根底から覆される明白な危険がある」場合などに限る「武力行使の3要件 」によって、集団的自衛権の行使は限定されると説明してきたが、具体的な事例では答弁がぶれ続けた。

 

首相は昨年7月1日の記者会見で、日本人の母親と乳児が乗る米国の船の例を示し「日本人の命を守るため自衛隊が米国の船を守る。それをできるようにする閣議決定だ」と、国民の危機を前面に必要性を訴えた。ところが、その後の審議で日本人が船に乗っていなくても行使が可能なことが判明。3要件の曖昧さを追及された首相は「国際的に見ても極めて厳しい基準だ」とかわしたものの、政府の武力行使の権限の大きさが浮き彫りになった。

 

法案は、戦闘が起きる恐れのある場所でも他国軍への 後方支援 を可能にし、 国連平和維持活動 (PKO)では武器の使用基準を緩和して治安維持業務も新たに認める。自衛隊員が命の危険にさらされるリスクが高まる懸念に対し、首相は「戦闘に巻き込まれることはない」など明確な根拠を示さずに否定し続けた。

 

議論を重ねれば重ねるほど、法案の不備が鮮明になった論戦。憲法解釈の変更は将来の徴兵制 につながりかねないとの不安や、集団的自衛権の要件が曖昧なままでは米国主導の戦争に巻き込まれる可能性も消えていない。首相は、それを指摘する野党に「レッテル貼りだ」「的外れな議論」と取り合わなかった。

 

民主党幹部は「どれほど時間をかけても、首相が根拠のない自説を語るだけでは、国民理解が得られるはずがない」とみる。反対世論が高まる中で、戦後日本の安全保障政策を大転換する法案。首相は14日の参院特別委で国民理解が広がっていないことを認めつつ、言い切った。「法案が成立した暁には、間違いなく理解は広がる」

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