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<あんぽ博士と振り返る国会論戦>安保法制、尽きぬ疑問 自衛隊派遣際限なく

<あんぽ博士と振り返る国会論戦>安保法制、尽きぬ疑問 自衛隊派遣際限なく

(北海道新聞)



政府・与党は、 集団的自衛権 の行使を可能にする 安全保障関連法案 を来週中に参院で可決、成立させる構えだ。このまま成立すると、日本は、そして自衛隊は、どのような現実に直面することになるのか。5月に衆院で法案審議が始まってから約4カ月。この間の国会論戦で浮かび上がってきた問題点を「あんぽ博士」と「九太郎くん一家」の会話を通しながら、もう一度考えてみたい。



■「違憲」の疑い解消されたの? 高まる批判、受け付けず

 

法子 安全保障関連法案には「違憲」という指摘があったわよね。その疑問は国会論戦を通して解消されたのかしら。

 

あんぽ博士 解消されたとは言えない。6月4日の衆院憲法審査会 で憲法学者の長谷部恭男・早稲田大教授らが法案を「違憲」と断言してから、「憲法違反」と指摘する声は拡大の一途をたどった。政府はその後も反論を続けているけど、疑念を拭えるだけの十分な説明にはなっていない。

 

九太郎 政府はどう説明してきたんだろう。

 

博士 歴代政権は、 憲法解釈 で集団的自衛権の行使は認められないとしつつも、国民の生命や権利を守るための「自衛の措置」は認められるとしてきた。安倍政権は、その「自衛の措置」の中に、一部の集団的自衛権の行使を入れても憲法の基本的な論理は変わらないと説明している。

 

法子 憲法上「できない」としてきた解釈を「できる」と変更しても「合憲」と言えるの。

 

博士 特に参院での審議になってから、安倍晋三首相は「中国は軍事力を急速に拡大している」「(北朝鮮のミサイルが)発射されれば10分で到達する」と中国や北朝鮮を名指しして、安全保障環境の変化を強調している。環境が変化したのだから、それに対応するために憲法解釈の変更も許されるという主張だ。憲法学者の批判も「国を守る責任は私たち(政治家)にある」と言って受け付けていない。

 

憲一 国防のためにはやむを得ないということか。

 

博士 ただ、それほどの大きな変化が本当に最近あったのかという疑問の声もある。そもそも第2次大戦後から1989年まで続いた米国と旧ソ連による「冷戦時代」も、安全保障環境が良好だったわけではない。なぜ今、憲法の解釈を変えてまで集団的自衛権の行使を認めなければいけないのかという問いに、政府は明確に答弁していない。

 

九太郎 憲法違反と言われる法案が可決されるの。

 

博士 憲法が国家権力を縛るという「立憲主義」の観点からも、政府が解釈を変えて国の安全保障政策を大きく転換することには問題が多い。憲法は表現の自由や信教の自由など、国家が侵せない私たちの権利を定めている。集団的自衛権の行使容認は「政府が都合良く憲法の解釈を変えてしまう最初の例になる」と懸念する憲法学者もいる。

■国民の命を守る目的だよね? 日本人へのテロの危険も

 

九太郎 いろんな議論はあるけれど、法案の目的は国民の命を守るためなんだよね。

 

博士 政府はそう言っている。中国や北朝鮮の軍事力が増しているから、日本は米国などとの協力関係を深め、相手に手を出させないようにする「抑止力」を高めるべきだとの説明だ。そのために集団的自衛権を使うことも認めないといけないと訴えてきた。

 

法子 そこは揺らいでないのよね。

 

博士 考え方は揺らいでいないが、具体例に踏み込むと、ちぐはぐな答弁が目立つ。

 

憲一 どんな答弁なの。

 

博士 集団的自衛権の行使を認める閣議決定をした、昨年7月1日の首相の記者会見を覚えているかな。日本人の母親と赤ちゃんが米国の船に乗っているパネルを示して「日本人の命を守るため自衛隊が米国の船を守る。それをできるようにするのが今回の閣議決定だ」と言った。でも中谷元・防衛相は今年8月、「(日本人が乗っているかどうかは)絶対的なものではない」と答えたんだ。

 

九太郎 日本人が乗っていなくてもいいってこと。

 

博士 そうだ。首相が挙げる例は危機感を強調するものが多いけれど、そういうケースだけに集団的自衛権を使うわけじゃないということだ。

 

憲一 でも今のままじゃ国民が危ないんだろう。

 

博士 ただ、自衛隊の活動を広げるリスクにも注目しないといけない。野党は、他国から恨まれて日本人がテロの標的になったり、自衛隊員が戦闘に巻き込まれて亡くなる危険性を指摘している。

 

法子 そういうリスクを政府はどう説明してるの。

 

博士 首相は「抑止力が強化されることで(国民の)安全は一層確かなものになる」とは言っている。だけど、国民や隊員のリスクが増すことについては直接の説明を避けている。

 

九太郎 なんだか怖いね。

 

博士 最近の世論調査では、法案に多くの国民が不安を抱いていることが明らかになっている。戦後70年、不戦を貫いてきた日本が大きく変わる分岐点になる法案。こうした国民の声を首相がどう受け止めるかが問われている。

■ 後方支援 どこまで拡大? 米重視 世界どこへでも

 

憲一 法案が成立したら、自衛隊の活動はどこまで広がるんだろう。

 

あんぽ博士 今回の法案には、大きく分けて「日本の安全に関する活動」と「国際社会の安定に関する活動」の分野がある。どちらも地理的にも内容的にも、自衛隊の活動が大きく広がるんだ。特に他国軍への後方支援は、これまで「日本周辺」だけだった活動範囲の制限がなくなり、世界のどこでも可能になる。国会論戦で野党が厳しく追及し続けている分野だ。

 

九太郎 後方支援って何だっけ。

 

博士 自衛隊が直接相手を攻撃することはないけれど、戦闘中の他国軍隊に物資を提供したり、輸送したりして支援する任務のこと。今回の法案が成立すると、戦闘中の部隊に弾薬やミサイルまで新たに提供できるようになる。野党は「他国と一緒に戦争をやっているとしか見えない」と問題視している。さらに核兵器やクラスター弾、劣化ウラン弾の輸送を禁じていないことも明らかになった。

 

法子 そんなに広げる必要があるのかしら。

 

博士 首相は「たくさんの日本人が海外で活躍している。世界の安定があるから日本の繁栄がある」とその意義を強調している。首相が以前から言っている「積極的平和主義」の一つの形でもあるんだ。

 

九太郎 それが平和につながるのかなあ。

 

博士 そういう疑問が消えないね。実は後方支援の拡大は、米国が日本に強く求めたと言われている。今年4月に日米両国が合意した新たな防衛協力指針(ガイドライン)にも「日米の世界規模の協力」が明記されているんだ。安倍政権には、米国への貢献度を上げることで、沖縄県・尖閣諸島 などをめぐる中国との対立に米国を積極的に関わらせたい狙いがある。

 

憲一 自衛隊が、米軍の言うことをきかないといけなくならないだろうか。

 

博士 そもそも法案には、戦争が起きていない「平時」から、米軍の船を守れるようにする内容もある。首相は4月に米国を訪問した時に「夏までの法案成立」を米議会での演説で約束している。その意味でも、米国との関係を重視した法案と言えるんだ。

■「歯止め」はっきりしたの? 政府「総合的判断」繰り返す

 

憲一 集団的自衛権を使えるようにしてしまうと、他国の戦争に巻き込まれるんじゃないか。

 

博士 4カ月間の論戦で、その質問は何度も野党議員から出た。そのたびに首相は「戦争に巻き込まれることは絶対にない」と断言してきた。

 

法子 なぜ断言できるの。

 

博士 首相は根拠として、集団的自衛権を使うときの条件として政府が定めた「武力行使の3要件 」を挙げている。国民の生命や権利が「根底から覆される明白な危険」がなければいけないから、例えば日本の防衛のために活動をしている米軍が攻撃された場合は武力を使えるけれど、それに関係ない戦争に自衛隊は出せないという説明だね。

 

九太郎 じゃあ、国会の議論で「歯止め」は明確になってきたんだね。

 

博士 残念ながら、そうでもないんだ。特に首相が集団的自衛権を使う例として示した中東・ホルムズ海峡での機雷除去は、曖昧さが次々に明らかになっている。首相は日本に輸入される原油の8割がこの海峡を通るため、機雷をまかれて原油が入ってこなくなれば「寒冷地で国民の命に関わる問題になりかねない」と主張している。

 

憲一 命に関わることなら仕方ないんじゃないか。

 

博士 ただ、中谷元・防衛相は原油の輸入ができなくなっても「必ずしも死者が出ることは(3要件で)必要とはしない」とも答弁した。そもそも原油が入ってこなくなることが、国民の生命や権利を「根底から覆す」ことになるのだろうか。そういう条件で海外で武力を使っていいなら、いろんなケースで使えるという判断ができてしまう。

 

法子 じゃあ簡単に戦争になっちゃうじゃない。

 

博士 今回の法案では、何が3要件に当てはまるかを判断する権限は政府にあると定めている。しかも、どういうケースが3要件を満たすかは「政府が総合的に判断する」と繰り返している。野党は「歯止めがないのも同然」「時の政権にフリーハンドを与えるものだ」と批判しているが、議論は今も平行線だ。

■「国家のための犠牲」想定 学生団体「SEALDs」メンバー・今村幸子さん

 

国会審議を傍聴しましたが、見ていて歯がゆさを感じました。政府は質問に対してはぐらかして答えたり、聞かれていないことを答弁してばかり。「これが国会の議論か」と情けなく思うこともありました。

 

安全保障関連法案が成立すれば、集団的自衛権の行使に加え、後方支援の領域が広がるなど自衛隊員のリスクが高まるのは明らかです。野党もこの点を指摘はしていましたが、どこか物足りない。戦争に巻き込まれる可能性が高まり、安全でなくなることをもっと強調すべきです。

 

今、経済的に困窮している若者はとても多くなって、残業代が支払われないなど「ブラックバイト」で働かざるを得ない友人もいます。経済的な事情から自衛官の道を選ばざるを得ない人も出てくるかもしれません。私たちにとって、自衛隊員のリスクが高まるかどうかは非常に身近な問題です。

 

当時、自民党だった武藤貴也衆院議員に(短文投稿サイト)ツイッター で、私たちのデモが「戦争に行きたくないという利己的考え」と非難されたことも大きなショックでした。こうした発言が政権与党にいる人から出てきたからです。

 

戦争が起こらないよう外交で努力するのが政治家ではないですか。政府は「戦争が起こらないようにするための法案」と説明しますが、逆に、やっぱり戦争になることも考えているんだ、国家のために命を投げ出させることも想定しているんだ、と感じました。

 

デモの準備などで忙しい日々が続いています。本当は友達と遊びたいし、家でゴロゴロしたい。でも、楽しいことをするには大学で学んで就職して、暮らしを豊かにしないとできません。政治であらゆることが決まり、その日常の中で私たちは生きています。

 

民主主義国家の一員であるなら、学生が就職を心配するのと同じように、政治に関心を持って心配しないといけない。それが自分の人生をしっかり生きることにもつながっていると思っています。

■首相の断定口調に違和感 漫画家・倉田真由美さん

 

安倍晋三首相を漫画の登場人物として描くなら、正義の味方として扱うか、それとも悪役にするか迷ってしまいます。私はそうした首相のキャラクターに底知れぬ恐ろしさを感じています。何をしたいのかが見えないのです。

 

安全保障関連法案に対して国民の不安が広がっていることも、首相のキャラクターが影響しているように思います。日本を戦争の道に向かわせるのではないか。将来的に徴兵制 の導入につながるのではないか。首相が「日本の平和を守るための法案だ」と説明しても、そうした懸念を拭い去ることはできないのです。

 

国会審議を見ていて最も違和感を覚えるのは、首相の断定的な口調です。「米国の戦争に巻き込まれるようなことは絶対にあり得ない」「自衛隊のリスクは変わらない」―。将来の国際情勢がどうなるのかは誰にもわからない。それなのに100パーセント間違いないかのように断言する言葉に、うさんくささを感じるのです。自衛隊の武器使用基準 が拡大され、戦地に近づけば、リスクが高まるのは子供だって分かることです。

 

日本は戦後70年間、戦争に巻き込まれることもなく、テロの標的にされることもなかった。そうであれば「戦後の日本の歩みは正解だったよね」という答えを導くのが普通です。日本を守るために「備え」が必要なのは理解できます。しかし、自衛隊の海外での活動を拡大させる今回の法案は、これまでの受動的な日本の守りではなく、能動的に相手を攻撃しようとしているとしか思えません。

 

そもそも首相はなぜ、これほどの世論の反発を押し切ってまで、法案成立に突き進むのでしょうか。

 

首相は法案審議でたびたび、国会がデモ隊に取り囲まれてもぶれずに日米安全保障条約の改定を進めた祖父である岸信介元首相の話題に触れました。

 

おじいちゃんに負けないレガシー(遺産)を僕も世の中に残したい―。もしも、そんな個人的な動機で日本の戦後の歩みを根底から覆そうとしているのであれば、私たち国民はたまったもんではありません。

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