安倍首相の持論である『何で日本だけが悪者にならなければならない、村山さんの個人的な歴史観にいつまでも縛られることはない、謝り続けるのはやめたい』と云う持論を70年談話で取りやめた裏側の話し。
「支持率が高かった4月ごろ、首相は『おわび』どころか、『侵略』の明記さえ認めなかった」が最近の各種世論調査で安倍政権への「不支持」が「支持」を上回るようになり、村山談話の「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「おわび」の核心部分である「侵略」「おわび」の文言を明記し、持論である「痛切な反省」と『何で日本だけが悪者にならなければならない、村山さんの個人的な歴史観にいつまでも縛られることはない、謝り続けるのはやめたい』と云う持論を取りやめた裏側の話し。
戦後70年談話 世論意識、読み揺らぐ 持論盛り込み総花的に
(08/15 北海道新聞)
安倍晋三首相は戦後70年談話を発表した14日の記者会見で、戦後50年の 村山談話の核心部分である「侵略」「おわび」の文言を明記したことに関し「事実を率直に反省し、不戦の誓いを堅持していくことが最も重要なメッセージだ」と強調した。だが首相はこうした文言を盛り込むことには一貫して否定的だった。どこまで持論を押し通し、どこまで妥協するか。安全保障関連法案 で内閣支持率が急落する中、政権内では世論の動向をにらんだ表現の調整が続いていた。
「侵略もおわびも入っているじゃないですか」8月初め、70年談話の原案を示された保守派の閣僚の一人は、首相にこう詰め寄った。首相は2009年の月刊誌の対談で、村山談話について「村山さんの個人的な歴史観にいつまでも縛られることはない」と明言。「侵略」「おわび」は入らないというのが、首相周辺の共通認識だったからだ。
だが首相は「俺にできるのは、ここまでが精いっぱいだ」と述べ、こうした文言を削るのは難しいとの認識を崩さなかった。
■上書き狙う
12年12月の第2次政権発足以降、未来志向の談話発表を狙う首相は、村山談話の「上書き」に向けて布石を打ち続けてきた。13年4月の国会答弁で「安倍内閣として(村山談話を)そのまま継承しているわけではない」と断言。今年に入っても、歴代内閣の歴史認識を「全体として引き継ぐ」としつつ、村山談話の文言を踏襲するかについては「こまごまとした議論だ」「引き継ぐと言っている以上、もう一度書く必要はない」と強気の発言を続けた。
海外での演説を通じ、談話の原案づくりも進めていた。4月の米議会演説でも「痛切な反省」は明言しつつ、侵略やおわびには触れず、戦後の和解や国際社会への貢献を前面に打ち出し「国内外の反応を探っていた」(官邸筋)。
一方、政府・与党内では首相が持論に固執しすぎれば、中国や韓国との関係悪化につながるとの懸念も広がっていた。自民党の谷垣禎一幹事長は「首相は戦後問題で『何で日本だけが悪者にならなければならないんだ。謝り続けるのはやめたい』と思っている」と周囲に懸念を表明。高い内閣支持率に勢いづく首相に対し首相周辺が「興奮しすぎではないですか」と自重を促したこともあったが、首相は「相場を下げておいた方がいい」とあえて持論を強く打ち出して微修正で決着させる強気の姿勢を示した。
■閣内不一致
だが、首相の読みは徐々に揺らぎ始める。安全保障関連法案の衆院採決を控えた6月下旬、各種世論調査で安倍政権への「不支持」が「支持」を上回るようになると、首相周辺では70年談話が政権運営に与えるダメージを懸念する声が拡大。閣議決定を見送り、首相の個人的見解とすることで影響を薄めようとする声も漏れ始めていた。
同じころ、安保関連法案の審議が難航し、国会会期を9月27日まで大幅延長したことで、談話の発表時期が国会会期中になることが確定。首相側近は「侵略」「おわび」を間接的な表現で盛り込んだ原案を首相にひそかに示した。背景には「公明党の了解も得て、閣議決定しなければ、国会で野党に閣内不一致を追及される」(政府関係者)という懸念があった。
談話をめぐる政権幹部との水面下の調整でも、谷垣氏は「(アジア諸国に)謝り続けたことがいかがなものかということを前面に打ち出して、イデオロギー対立を生み出したら意味がない。国民統合を意識した内容にすべきだ」と首相に進言。公明党の山口那津男代表も「歴代内閣の談話の趣旨が伝わる表現にしてほしい」と求めていた。
さらに首相自身が設置した有識者懇談会の報告書でも「植民地支配」と「侵略」を明記。首相は村山談話のキーワードを間接的に盛り込むことで「文言の有無をめぐる批判を回避した上で、持論を盛り込む戦略」(関係者)に転換するしかなかった。官邸筋は「支持率が高かった4月ごろなら、首相は『おわび』どころか、『侵略』の明記さえ認めなかった」と漏らす。
■分量2倍に
それでも首相は最後まで中国、韓国へのおわびを重視する「謝罪外交」と決別するという持論は譲らなかった。談話には「(戦後世代に)謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と明記。自ら掲げる積極的平和主義に基づく国際貢献など「未来志向」の内容を追加した結果、70年談話は3千字余りと村山談話の約2・5倍に膨らんだ。
世論をにらみつつ、国際社会から戦後日本の歴史観として認識されてきた村山談話を書き換え、「信念」を反映させることにこだわった首相。14日夜、菅義偉官房長官、自民党の高村正彦副総裁と東京都内で会食し、70年談話をこう自賛した。「良かったでしょ」
« こう言う世論調査は大手新聞もやって欲しいものです:「戦争せず」評価が53%先の戦争を「侵略戦争だった」「侵略行為があった」と認識している人は合わせて半数を超えた。 戦後70年、全道世論調査 | Main | 安倍晋三首相の戦後70年談話は先の大戦で被害を受けた国の人々の胸にどう響いただろうか。村山元首相の談話から引き継いできたキーワードの植民地支配・侵略・反省・おわびを盛り込んだが人ごとのようにも聞こえた »
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