客観的な視点に立脚すべき防衛白書が、与党とはいえ一政党の意向で左右される事態は問題です。防衛省は、時の政権や与党におもねるのではなく、冷静な現状分析を徹底するべきです
今年の防衛白書は中国の海洋進出を「高圧的」と断じ、「自らの一方的な主張を妥協なく実現しようとする姿勢」を非難して、中国を警戒する記述を大幅に増やしています。
隣国の脅威を強調して国民の不安をあおり、抑止力の強化を正当化しようとする意図は明白です。特に今回は自民党からの指摘を受け、東シナ海での中国のガス田開発の動きを追記して強調した事は、現在審議している安保法案を有利に働かせようという思惑が見えます。
客観的な視点に立脚すべき白書が、与党とはいえ一政党の意向で左右される事態は問題です。防衛省は、時の政権や与党におもねるのではなく、冷静な現状分析を徹底するべきです。防衛白書は、防衛の現状と課題について「広く内外への周知を図り、その理解を得る」ものです。
防衛白書 脅威をあおるだけでは
(北海道新聞)
安全保障関連法案 の強引な衆院通過と、軌を一にする動きだ。今年の防衛白書は中国の海洋進出を「高圧的」と断じ、「自らの一方的な主張を妥協なく実現しようとする姿勢」を非難。中国を警戒する記述を大幅に増やした。
隣国の脅威を強調して国民の不安をあおり、抑止力の強化を正当化しようとする意図は明白だ。特に今回は自民党からの指摘を受け、東シナ海での中国のガス田開発の動きを追記して強調した。
客観的な視点に立脚すべき白書が、与党とはいえ一政党の意向で左右される事態は問題だ。防衛省は、時の政権や与党におもねるのではなく、冷静な現状分析を徹底するべきだ。
防衛白書は、防衛の現状と課題について「広く内外への周知を図り、その理解を得る」ものだ。国民と国会が防衛政策を考える資料として、政治的な思惑に影響されないことが求められる。
しかし安倍政権下では、中国や北朝鮮に対する警戒の表現を強めてきた。「高圧的」という言葉も昨年から引き継がれたものだ。一方で防衛協力の記述は、現政権の発足以前と比べて半減した。
中国の台頭に、日米が力で対抗する姿勢を強めれば、東アジアの緊張は高まるだろう。政府が取り組むべきは、中国と首脳間をはじめとする対話を進め、偶発的な衝突を未然に防ぐ危機管理体制を構築することだ。
今回の白書は、日中当局間の「海空連絡メカニズム」協議など対話の側面にも言及している。ところが防衛省は、自民党の指摘を受けて編集後の白書を取り下げ、「中国側が一方的な開発を進めている」などの記述を加えた。
政府は周辺諸国への防衛支援や共同訓練を通じて、中国をけん制する構えだ。与党の意見で白書の記述が恣意(しい)的に変更され、政府がそれに沿う形で政策を強化するのなら自作自演と言われても仕方あるまい。
共同通信社の世論調査では、安倍政権を「支持しない」との回答が51・6%に達し、現政権発足後初めて「支持する」を上回った。安保法案の採決については、73・3%が「よくなかった」と答えた。政権の強引な手法への不信感が、支持率低下の最大の要因だ。
安倍政権が、中国脅威論を強調した防衛白書に依拠して、法案成立への動きを強めるならば、不信感はさらに増大するだろう。政府はいまこそ、専守防衛の原点に立ち返ってもらいたい。
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