<あんぽ博士のQ&A>「存立危機事態」って何? 集団的自衛権を使う前提
<あんぽ博士のQ&A>「存立危機事態」って何? 集団的自衛権を使う前提
(05/29 北海道新聞)
Q 今日の国会で話題に上っていた「存立危機事態」って何なの。
A かみ砕(くだ)いて言うと、日本が攻撃(こうげき)を受けていなくても武力を使って反撃する集団的自衛権 が使えるような、紛争(ふんそう)や武力衝突(しょうとつ)などのこと。政府が国会に提出している 安全保障関連法案 では、この存立危機事態に当たると政府が認定しない限り、集団的自衛権は使えないと定めている。
Q どんなケースでもいいの。
A いや、条件がある。法案には、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、日本の存立が脅(おびや)かされ、国民の生命や自由、幸福追求の権利が「根底から覆(くつがえ)される明白な危険」がないとダメだと書いてある。集団的自衛権を使うための「武力行使の3要件 」を一部反映させた内容なんだ。
Q ますます分からないなあ。
A 難しいよね。大きく二つに分けてひもといてみよう。一つ目は、米国など仲のいい国が攻撃されたこと。もう一つは、その攻撃で日本が国として成り立っていくことが危うくなり、国民の生命や権利への深刻な危険が確実視されること。それがある時に初めて自衛隊が武力を使うんだ。
Q この条件を満たすような紛争って、どんなものなの。
A それがはっきりしないから、国会で大論争になっている。世界のどこかで紛争や武力衝突が起きた時、「これは存立危機事態だ」と決めるのは政府だからね。安倍晋三首相は「厳格な条件だ」と説明しているけれど、野党は武力を使ってしまう範囲(はんい)がどんどん広がると懸念(けねん)している。
Q そんなに大きな問題なのかな。
A 集団的自衛権を使う条件があいまいだと、政府が「国民を守るため」と主張する武力行使でも、結果的に戦争に発展したり、どこかの国の領土や領海で武力を使ってしまったりするケースが出てくる。それは第2次大戦の反省を踏(ふ)まえ、不戦を誓(ちか)った憲法9条にも反しかねない。戦後の日本の安全保障を大きく転換(てんかん )する法案の重要なポイントだから、とても重要な議論だと言える。
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