原発大国米国でも天然ガス 価格の下落などを受け採算性が悪化、 廃炉 決定が続き30年ぶりに100基割りました。また廃炉費用 などを原則全ての利用者が負担することになる日本と状況が重なります。
原発大国米国でも天然ガス 価格の下落などを受け採算性が悪化、 廃炉 決定が続き30年ぶりに100基割りました。
ネバダ州ユッカ山地での最終処分場計画は、地元の反対を受けてオバマ政権が中止しました。ヤンキー原発の建屋の隣には使用済み核燃料 を収めた特殊容器が並びます。増設して4千本近い燃料集合体を空気循環で冷却する計画ですが、代替処分場が決まり搬出可能になるまでの間、維持管理の費用負担がのしかかります。
電力各社は政府に管理費用返還を求めて提訴。結果、政府は総額20億ドル(約2400億円)以上の支払いを強いられてきました。競争原理で淘汰(とうた)される原発がある一方で、“後始末”の一端を全国民が負わされている形。2016年の電力小売り 全面自由化後も 廃炉費用 などを原則全ての利用者が負担することになる日本と状況が重なります。
原発大国、見えぬ未来 米、30年ぶり100基割る
(北海道新聞)
米国の原発が約30年ぶりに100基を割り込んだ。 天然ガス価格の下落などを受け採算性が悪化、 廃炉 決定が続いたためだ。安全性をめぐる議論や、使用済み燃料の処分問題など日本と共通の難題を抱える「原発大国」の現状を紹介する。
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■採算性悪化 廃炉相次ぐ
雪深い集落を抜けると箱形の原子炉建屋が視界に飛び込んできた。昨年末に運転を停止、42年の歴史を終えた米東部バーモント州バーノンのバーモント・ヤンキー原発だ。原子炉の状態は「完璧」(所有する電力大手エンタジー)にもかかわらず操業を終了、今後、数十年かけて廃炉の道を歩むことになる。
「廃炉を決めたのは完全に経済的な理由だ」。今年2月、建屋を望む会議室でエンタジーの広報担当者コーン氏が強調した。原子炉は東京電力福島第1原発と同型。電力価格の競争激化に加え、2011年の同原発事故後に新たな安全対策が求められたことが追い打ちになった。「十分運転可能なのに操業終了は残念」とコーン氏は唇をかんだ。
米国は操業中の原発数が99基と世界最大。総発電量に占める原発の割合も19%と東日本大震災前の日本ほどではないが、有数の原子力大国だ。さらにオバマ米政権が地球温暖化 対策に積極的なこともあり、二酸化炭素を排出しない原発には追い風となるはずだった。
しかしここ数年、新型天然ガス「 シェールガス 」との価格競争に敗れるなどし、カリフォルニア州など3州の原発4基で廃炉が決まり、13年に操業停止。ヤンキー原発もこれに続き99基となった。100基を下回ったのは96基だった1985年以来だ。さらに10基以上の廃炉が検討されているという。
しかし、廃炉になっても難題が残る。使用済み燃料の問題だ。ネバダ州ユッカ山地での最終処分場計画は、地元の反対を受けてオバマ政権が中止した。ヤンキー原発の建屋の隣には使用済み核燃料 を収めた特殊容器が並ぶ。増設して4千本近い燃料集合体を空気循環で冷却する計画だが、代替処分場が決まり搬出可能になるまでの間、維持管理の費用負担がのしかかる。
電力各社は政府に管理費用返還を求めて提訴。結果、政府は総額20億ドル(約2400億円)以上の支払いを強いられてきた。競争原理で淘汰(とうた)される原発がある一方で、“後始末”の一端を全国民が負わされている形。2016年の電力小売り 全面自由化後も 廃炉費用 などを原則全ての利用者が負担することになる日本と状況が重なる。
市民団体「サバンナリバー・サイト・ウオッチ」のトム・クレメンツ代表は「フランスや英国でも核燃料の再処理事業は行き詰まりを見せている。破滅的な結果を招く前に今すぐ計画を中止すべきだ」と語る。
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■東電同型基、閉鎖を 米市民団体「ビヨンド・ニュークリア」のポール・ガンター代表の話
東京電力福島第1原発と同型の沸騰水型原子炉マーク1とマーク2を使う原発は米国に30基ある。格納容器が小さく、閉じ込め機能が不十分と指摘されており、直ちに閉鎖すべきだ。日本では(沸騰水型の原発で)事故時に原子炉格納容器の圧力を下げる「フィルター付きベント設備」を規制基準で義務付けたのに、米国では議論が先送りされた。安全性よりも業界の意向が優先され、原発規制が事業者のとりこになっている。ダムの下流に位置しているのに、決壊事故への備えが不十分な原発も少なくない。
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■新規建設より稼働期間延長
米国では現在、4基の新規原発建設が進む。新規着工は1979年のスリーマイルアイランド原発事故後、30年以上途絶えていたが、安全性をめぐる議論もあり、あくまで限定的な動きだ。既存炉については当初40年だった稼働期間を80年まで延長させる検討が始まった。
4基は米 原子力規制委員会 (NRC)が、 東京電力福島第1原発事故 後の2012年に認可した。安全面を懸念する当時のヤツコ委員長が反対したが、ほかの4委員が賛成に回った。4基とは別に、いったん建設が中止された後、07年に再開を決めた1基も建設中。
電力業界が強調するのは温暖化対策における利点だ。新規4基のうち2基をジョージア州で建設するサザンカンパニー社の広報担当者は「原発は、温室効果ガス を排出しない発電エネルギー源の75%を占める。今後も推進すべきだ」と語った。
しかし新規着工は地元の受け入れ合意を含めハードルが高い。稼働延長の方が業界にとっては経済的だ。世界原子力協会(WNA)によると、今年3月までに米原発の約4分の3に当たる76基が60年への20年間延長を認められ、既に約30基が40年を超えて稼働している。数年内には20年間再延長し80年までの稼働許可を求める申請が事業者から出る見通しだ。
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■ MOX燃料 工場、建設半ばで凍結 再処理事業、行き詰まり
米南部サウスカロライナ州エイケン近くの広大な森に広がる米エネルギー省のサバンナリバー国立研究所。敷地内に建設半ばで凍結されているプルトニウム ・ウラン混合酸化物(MOX)燃料工場は、いつ計画が中止されてもおかしくない状況だ。
もともとは戦略核兵器削減でロシアと2000年に交わした協定に基づき、核弾頭数千発に相当する米国内の兵器級プルトニウム34トンを減らすのが目的。製造したMOX燃料は国内の原発で燃やす予定だったが、建設費が膨れ上がって完成の見通しが不透明に。プルサーマル発電 を予定していた電力大手も撤退し、燃料の使い道も失った。
オバマ政権は昨年、設備の維持費を計上するだけで建設を凍結。エネルギー省が今年2月に公表した最新の試算では、完成時期は27~31年で建設費は約127億ドル(約1兆5千億円)。当初は16年に10億ドル未満での完成を見込んでおり、コストが10倍以上に跳ね上がった計算だ。既に41億ドルを支出。米政府監査院(GAO)は2月、原因分析とコスト評価を行うようエネルギー省に勧告した。
市民団体「サバンナリバー・サイト・ウオッチ」のトム・クレメンツ代表は「フランスや英国でも核燃料の再処理事業は行き詰まりを見せている。破滅的な結果を招く前に今すぐ計画を中止すべきだ」と語る。
日本の青森県六ケ所村にある 使用済み核燃料再処理工場 も稼働の見通しが立たない状況。クレメンツ氏は「MOX燃料に未来はない。日本も再処理をやめて使用済み燃料の乾式貯蔵に切り替えるべきだ」と訴える。(エイケン共同)
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■米エネルギー省・サンダロー元次官補に聞く 将来も重要 問題はコスト
米エネルギー省のデービッド・サンダロー元次官補は米国の原発について「将来も重要なエネルギー源」と述べた。一部の廃炉は経済的な事情のためで、安全性が問われる日本とは全く状況が違うと強調した。
――原発の今後は。
「原発は発電の約2割を占め、将来も重要なエネルギーの一つであり続ける。問題はコストだ。天然ガスの価格が非常に安く、この傾向は今後も続くとみられる」「米国が日本と大きく違うのは原発の安全性に対する懸念が広がっていない点だ。スリーマイルアイランド原発以外に目立つ事故はない」
――温暖化対策との関係は。
「原発は二酸化炭素(CO2)を出さない特徴がある。温暖化対策は重要性を増すだろう。石炭を使わないよう求める圧力は強まり、結果として原発の役割が大きくなる」
――「 核のごみ 」の最終処分場が決まらない。
「難しい問題だ。地元の支持が欠かせないが、(候補に挙がったネバダ州の)ユッカ山地は支持が得られない。検討案はあるが、政治的合意がない」
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