<事例で考えるガイドライン改定>4 臨検 強制停船で反撃の危険
<事例で考えるガイドライン改定>4 臨検 強制停船で反撃の危険
(北海道新聞)
<事例>A国がB国を武力攻撃して紛争が発生し、B国を支援する米国の艦船も攻撃を受けた。A国の言動から日本への攻撃も行われかねず、日本周辺では、A国に武器などの物資を運んでいる疑いが強い船が航行している。米国は日本に不審船への臨検 を要請した。
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臨検は、公海上を航行する他国の船を強制的に停船させ、自衛官が乗船して積み荷を検査する停船検査の一つ。停船検査には任意で行う船舶検査活動もある。今回改定された日米防衛協力指針 (ガイドライン)で、日本が武力攻撃を受ける前の段階でも、日米が協力して臨検を行う場合があることが初めて明記された。
紛争が起きた時の臨検は国際法上、「武力の行使」に当たるため、日本が攻撃を受けていないにもかかわらず、米国の要請を受けて臨検を実施することは、集団的自衛権 の行使に当たる。憲法9条を受けて「集団的自衛権は使うことができない」と解釈してきた歴代政権は行わなかったが、安倍政権が昨年7月に 憲法解釈 を変更し、行使を容認したことを受け、実施項目に盛り込まれた。
新たな指針では、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある「存立危機事態」と認定できれば、臨検を実施できるとした。
武器を運ぶ船は、戦争を行っている国にとっては「生命線」でもある。停船を求めて積み荷を検査しようとすれば、相手は逃走したり、攻撃してきたりする可能性がある。平時でも2001年に東シナ海で、海上保安庁の巡視船が不審船に停船を求めたが応じず銃撃戦となり、不審船が沈没した例もあり、戦闘に発展する恐れが強い活動だ。
一方、船舶検査活動は相手の船長の承諾を得て「武力の行使」に当たらない範囲で行う。今回の指針改定では、船舶検査活動でも日米協力が拡大した。これまでは日本の安全に重要な影響を与える事態と判断された場合、「日本の領海内」か「日本周辺の公海」に限って可能だったが、その地理的制約を撤廃した。海上でも日米の軍事的連携が加速することになる。
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