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<戦後70年 揺らぐ憲法>2 「専守防衛」誓い危うく  敵地への上陸侵攻を目的に米国で開発されたAAV7は長く保有を見送ってきたが陸自は14年度52両の導入を決めた

<戦後70年 揺らぐ憲法>2 「専守防衛」誓い危うく



(北海道新聞)



2月下旬、米カリフォルニア州の海沿いにある米軍キャンプ・ペンデルトン。浅瀬に停泊した船から迷彩色の車両が飛び出し、うなりを上げて上陸してくる。米海兵隊 と陸上自衛隊が合同で行った「離島奪還訓練」。そこで使われた米軍の 水陸両用車 「AAV7」に今回、初めて陸自隊員が乗り込んだ。



■「躊躇」振り切り

 「完全にステージが変わった」。2012年度からAAV7の導入を検討してきた陸自幹部は訓練に参加した意義を、そう評した。敵地への上陸侵攻を目的に米国で開発されたAAV7について、日本は憲法9条に基づく専守防衛の精神に反する恐れがあるとして、長く保有を見送ってきた。

 

その「躊躇(ちゅうちょ)」を振り切り、陸自は14年度、52両の導入を決めた。17年度に新設する離島奪還専門の「水陸機動団」へ配備する計画だ。空から新型輸送機オスプレイ 、海からはAAV7で隊員を送り込むことが可能になり、「事実上の 海兵隊 」(陸自幹部)が日本に誕生する。

 

米国での訓練から約1カ月後の3月25日、横浜市磯子区の埠頭(ふとう)に巨大な艦艇が横付けされた。海上自衛隊最大の新型ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」。日本最大の豪華客船を上回る全長248メートルの巨艦で目を引くのが、船首から船尾までを貫く長い甲板。ヘリ5機が同時発着でき、オスプレイ搭載も可能な艦艇の外観は、空母そのものだ。

 

政府は従来、憲法の制約から「攻撃型空母の保有は許されない」との見解を堅持してきた。これを意識し、海自は「いずもには戦闘機など固定翼機の発着機能がないため、空母ではなく護衛艦」と説明する。9条が保持を禁じる「戦力」に限りなく近い装備が今、着実にそろいつつある。それも、国会や国民的な議論もほとんどないままに―。

 

戦後の日本は、不戦を誓い専守防衛を自らに課した。1950年代から続いた東西冷戦が終わり、国際情勢の流動化が始まり、日本周辺では軍事力を高めた中国が台頭し、沖縄県・尖閣諸島 ではにらみ合いが続く。さらに北朝鮮の核、テロの脅威も加わった。戦後の安全保障環境の変化の波に、9条を持つ日本も揺れてきた。



■「最大の正念場」

 市民や国会の反応も様変わりした。

 92年の国会。焦点は、初めて自衛隊を国連平和維持活動 に参加させるPKO協力法案だった。自衛隊の海外派遣に反対する社会党・護憲共同は、採決を遅らせるための牛歩戦術を参院で展開した。法案が可決されるまで本会議場で行った牛歩は4日間計33時間に及んだ。この間、国会内外で市民団体が連日、反対集会を開き、市民が詰めかけ国会前はバリケードが設置される事態になった。

 

「数の力で押し切ろうとする与党に聞く耳はなく、最後の手段が牛歩だった」。当時、社会党参院議員だった堂本暁子氏(82)は振り返る。集団的自衛権 の行使を可能にする安全保障法制を押し進める政府に対し、今国会でも激しい議論を予想した。だが、「安倍1強」に対抗できる勢力はない。そんな「静かな国会」を堂本氏は危ぶむ。

 

今、安保法制をめぐる与党協議が進む中、国会周辺では反対集会が時折開かれるものの、参加者は100人に届かない。PKO国会の時も現在も、反対集会に参加する市民団体「許すな!憲法改悪・市民連絡会」(東京)事務局次長の高田健さん(70)は言う。「今年は戦後70年で、憲法の最大の正念場だ」

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