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<戦後70年 揺らぐ憲法>1 想定せぬ「戦死」現実味    自衛隊は海外で1人も殺すことなく、殺されることもなかった。だが、海外任務を経て、命を落とした自衛隊員がいることはあまり知られていない。

戦後70年の今年、憲法改正に向けた動きが、かつてないほど現実味を帯びつつあります。施行から68年を経て、戦争放棄や不戦の誓い、個人の自由や権利など憲法の精神も大きく揺さぶられています。憲法が直面する課題を直視した記事を北海道新聞が掲載していますので、6回に分けて転載します。



<戦後70年 揺らぐ憲法>1 想定せぬ「戦死」現実味

(北海道新聞)



戦後70年。不戦を誓った憲法の下、自衛隊は海外で1人も殺すことなく、殺されることもなかった。だが、海外任務を経て、命を落とした自衛隊員がいることはあまり知られていない。



■派遣後29人自殺

 2004年春。 陸上自衛隊北部方面隊 の20代の男性隊員は、 イラク戦争 後の人道復興支援に志願し、第1陣として南部サマワに派遣された。現地は、憲法9条の制約の下、法律上は戦闘に巻き込まれない「非戦闘地域」のはずだったが、宿営地では未明に迫撃弾が打ち込まれたとみられる爆音が響き、緊急退避を知らせる警報が鳴った。

 

「酒を飲まないと夜眠れない」。3カ月の任務を終えて帰国した男性隊員は、家族にそう漏らすようになった。それから10カ月後、妻子を残し、自ら命を絶った。男性隊員の父親は「息子は国が決めた任務を、きちんと果たした」と声を絞り出すように語った。

 

03~09年にイラクに人道支援で派遣された自衛隊員は延べ約9千人。防衛省は北海道新聞の取材に、このうち、帰国後に自殺した隊員は今年2月末時点で29人に上ることを明らかにした。自殺率は一般社会の10倍を超える。同省は「一般的に自殺は複合的な要因で起きており、派遣と自殺の因果関係は不明」とする。

 

サマワ宿営地の警戒に当たった別の隊員は当時、宿営地にロケット弾を撃ってきた人間が見えたと明かした。「彼がもし宿営地に入ってきたら、われわれは撃たなければいけないのか」。人を殺しかねない恐怖に苦しんだ末、隊員は心的外傷後ストレス障害 (PTSD)と診断された。



■公務上は「災害」

 派遣をめぐっては03年、国会で1カ月間、激論が交わされた。焦点は9条との整合性。憲法を守るぎりぎりの手段として「非戦闘地域」の概念がひねり出され、派遣が決まった。結果的に戦死者も出さず、殺すこともなかった半面、少なからぬ隊員がその後、命を絶ち、もがき苦しむ。彼らにとって死は身近な現実だった。

 

イラク派遣前、当時の防衛庁で、自衛隊員に死者が出ることを想定した議論がひそかに行われた。「隊員が万一、イラクで亡くなる場合の扱いについて、『戦闘死』などの新たな枠組みを検討する必要があるのではないか」。第1陣派遣2カ月前の03年11月、防衛庁内の会議で、陸上幕僚監部の幹部は石破茂長官(当時)らに訴えた。

 

戦争を放棄した憲法の下、自衛隊員が戦闘で亡くなる「戦死」の概念は政府にはない。任務で死亡した場合、一般職員の過労死など「公務上の災害」と同じ扱いだ。イラクは「非戦闘地域」であり、「戦死」を想定することは政治的にあり得なかった。

 

この幹部は今年3月、「今の憲法下で限界があることは分かっている」としつつ、「イラク派遣は国が決めたもの。死には当然、国が責任を持ち、隊員に名誉が与えられるべきだと考えた」と振り返った。危険な地域に派遣され、任務で亡くなった隊員に国として敬意を表せないか―。自衛隊の苦悩がにじむ。

 

安倍晋三首相は今、憲法の解釈を変更し、歴代政権が認めなかった 集団的自衛権 の行使を容認して自衛隊の任務を拡大させ、派遣地域を世界中に広げようとしている。安保法制の大転換で、現憲法下ではあり得なかった「戦死」が現実となる可能性が高まる。その首相は3月、防衛大学校の卒業式で訓示し、こう言って卒業生を鼓舞した。「誇りを胸に、自衛隊には、より一層の役割を担ってもらいたい」

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