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かつての日本を目指すオバマ、かつてのアメリカを目指す安倍田 中良紹氏

かつての日本を目指すオバマ、かつてのアメリカを目指す安倍

田中良紹氏の視点より転載します 2014/1/30

オバマ大統領の一般教書演説を聞いて、日本とアメリカは目指す国づくりの方向がまるで逆だと思った。アメリカはかつての日本のような国づくりを目指し、日本はかつてのアメリカを目指している。オバマ大統領は一般教書で「格差是正」を目標にしたが、安倍総理は施政方針で「格差」に言及せず「経済成長」を訴えた。

オバマ大統領は「格差是正」のために最低賃金を引き上げると演説した。安倍総理は「経済成長」のためには賃上げが必要だと演説した。両者とも賃金の上昇に言及しているので似た主張に思えるが結果はまるで逆になるとフーテンは思う。安倍総理の言う賃上げは「格差」を拡大させる賃上げになる見通しだからである。 そもそもオバマ政権はブッシュ政権が始めた戦争の失敗から誕生した。短期で勝つはずの戦争が泥沼に陥り、人的被害だけでなくアメリカ財政は破たんに瀕した。そのためオバマ大統領はイラクとアフガンからの米軍撤退と、外交では単独行動主義から国際協調主義へ、経済では小さな政府から大きな政府への転換を図り、財政赤字の解消を目指した。

その結果、6年間で財政赤字は半減し、製造業の雇用も増加に転じた。アメリカの景気は回復基調にある。普通なら大統領の支持率が上がるところだが、自動車産業の国有化や国民皆保険制度の導入が「アメリカの伝統的価値観」に背く社会主義だとして共和党が反発し、議会との対立が政治の混乱をもたらし支持率を低下させた。 またレーガン政権以来の新自由主義経済は一部の富裕層への富の偏在をもたらし、景気が回復しても国民は景気回復の恩恵を実感できずにいる。そのためオバマ大統領は「格差是正」を最大目標に、かつて豊かなアメリカの象徴であった「中間層」の拡大を訴えたのである。一般教書演説でオバマは共和党が反対しても大統領の権限で最低賃金を引き上げると強い姿勢を見せた。秋の中間選挙に向けて共和党との対立点を明確にし、挑発的な姿勢を見せる事で共和党内部の分裂を誘う戦略だとフーテンは感じた。

オバマ大統領の二期目の就任演説の時にもブログに書いたが、オバマが目指すのはネオコン思想にまみれたアメリカからの脱却である。ネオコンの基本は冷戦後の世界をアメリカが力によって一極支配する事で、そのためには世界最強の軍事力を維持し、ドルの基軸通貨を何があっても守り、資源は地球のみならず宇宙にまで手を伸ばし、そして世界中のあらゆる情報をアメリカが管理する体制を作るのである。 そうした戦略に沿ってブシュ大統領は「テロとの戦い」を始めたが、それは惨憺たる結果に終わった。しかしその「負の遺産」からアメリカが立ち直るのは容易でない。独裁政治でない限りこれまでの路線を一挙に切り捨てる訳にはいかず、徐々に目指すべき方向に切り替えていくしかない。その中でオバマが一期目の目標としたのが日本を真似た国民皆保険制度の導入だった。

日本人には理解しがたい事だが、これがアメリカ人には抵抗がある。政府より個人を尊重する建国の精神と、冷戦中に育まれた社会主義への憎悪とが絡まり合い、国が国民の面倒を見るのは「社会主義」という反発になった。第一次クリントン政権も、ヒラリーが中心となって国民皆保険制度を導入しようとしたが、国民の強い反発で断念し、クリントンは共和党寄りの政策に転換して支持率を回復させた。しかしオバマは目標を変えない。格差是正、中間層の拡大、マネーゲームではない製造業の復活など、かつて日本が実現した「一億総中流」の高度経済成長時代を髣髴とさせる国づくりを目指している。

一方の安倍政権が目指すのは、フーテンから見るとブッシュ政権さながらのネオコン路線である。冷戦時代の対ソ政策を思わせる中国封じ込めに力を入れ、新自由主義を基礎にした経済政策で「経済成長」を図ろうとしている。従って「格差是正」は眼中にない。経済の好循環を実現するためには賃上げが必要だと安倍総理は経済界に異例の要求をした。それをメディアが報道すると安倍政権は労働者の味方のような印象を与え、アベノミクスへの期待を高めさせる効果を生む。おそらくこの3月にはあの企業もこの企業も賃金が上がったという報道が相次ぐと思われる。それが国民の鼻先にニンジンをぶら下げる事になり、もう少しで自分も賃金が上がるという夢を持たせる。

そうしてアベノミクスへの期待が持続し、本当に経済の好循環が生まれるかと言えば全くそうはならない。アベノミクスによって日本経済の実体が良くなっている訳ではないからである。アメリカを含めた先進国経済がリーマンショックからの窮状を脱して世界経済が好景気になってきたために一部の業種に景気回復の影響は表れている。 しかしまだ本格的な好景気を迎えた訳ではないので賃金を上げる事に企業にはためらいがある。それでも上げなければアベノミクスに協力しないのかと批判される。

そうした環境で賃金を上げるにはどうするか。正社員と非正規雇用の数の比重を変えるのである。正社員の給料を上げる。非正規雇用の給料も上げる。両方の給料を上げても非正規の比重を増やせば会社が支払う給与総額は下げる事が出来る。つまり「格差」を拡大させれば、すべての業種ですべての従業員の給料を上げても企業の懐は痛まないというカラクリが出来る。メディアが賃金アップをどれほど報道しても、そしてそれが事実であっても、明るい未来を創ることにならない事を国民は知っておく必要がある。オバマ大統領と安倍総理の賃上げ論の違いはそこにある。

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