国際放射線防護委員会(ICRP)の原発事故後の復興期の被ばく線量は1~20ミリシーベルトに設定されていますが、日本はその最高値を使って住民を被ばくさせようとしています
国際放射線防護委員会(ICRP)の原発事故後の復興期の被ばく線量は1~20ミリシーベルトに設定されていますが、日本はその最高値を使って住民を被ばくさせようとしています。この様な基準で住民の帰還を決めた原子力規制委員会は完全に規制ではなく、推進委員会と名前を変えた方が良いと思います。
被ばくの基準 安易な緩和は許されぬ
(北海道新聞社説11月13日)
原子力規制委員会は、東京電力福島第1原発事故で避難した住民の帰還に向けた提言案をまとめた。 帰還の必須条件は、年間被ばく線量が空間線量で20ミリシーベルトを下回ることとした。 一方、帰還後は、空間線量ではなく、個人が携帯する線量計で測った被ばく線量を基にし、長期的に年1ミリシーベルト以下を目指すという。個人線量計の実測値は、屋外に8時間いることなどを想定する空間線量より大幅に低くなる傾向がある。
現実に放射線にさらされる避難住民が、事実上の基準緩和と受け止めても仕方ないだろう。規制委が検討を始めたのは9月中旬で、議論は全く不十分だ。住民の健康被害への懸念を無視したやり方と言わざるを得ない。100ミリシーベルトを下回る低線量被ばくの影響は、専門家でも意見が分かれる。帰還を希望する住民に線量計を配って、被ばく線量を自己管理に委ねるのは乱暴ではないか。 線量計による計測値が実態に近いとしても、個人の生活や行動によってばらつきが出る。とりわけ、放射線の影響を受けやすい子供や妊婦などは一律に扱えない。
国際放射線防護委員会(ICRP)は、原発事故後の復興期の被ばく線量を1~20ミリシーベルトに設定している。規制委の提言はこれに沿っているが、復興期とは、どの程度の期間を指すのか、明確にする必要がある。事故から2年8カ月もたって、10年、20年の長期目標を設定されても、住民は到底納得できない。政府は、これまで年1ミリシーベルトまで下げる除染目標を掲げてきた。20ミリシーベルト以下を帰還可能な目安とする方針自体に、「約束が違う」との思いを抱く避難住民も多いはずだ。
確かに、年1ミリシーベルトをただちに実現できる地域は少ない。政府は地域を選別して帰還を加速する方針で、規制委も足並みをそろえた形だ。しかし、低線量被ばくの健康被害が不明だからこそ、ICRPは、低線量でもそれに比例したリスクがあるとの立場を取っている。100ミリシーベルト以上は確実に危険という基準はあっても、これ以下は安全という目安はない。年1ミリシーベルトを帰還の基準と考える住民がいるなら、その意思は尊重されるべきだ。
帰還できないのであれば、早く移住の選択肢を示してほしいという住民もいるだろう。だが、残るにしろ、離れるにしろ、それは原発事故で余儀なくされた苦渋の決断だ。どんな選択をしても、生活再建の展望を持てるようにすることが先決だ。健康への影響という住民の最大の関心事に説明を尽くさず、拙速に進めてはならない。