ひろく国民に知らされるべき「はだしのゲン」の騒動ではなくその裏事情ですが一般のマスコミからは殆ど伝わって来ませんでした
「はだしのゲン」騒動の裏には大きな問題がありましたが一般のマスコミからは殆ど伝わって来ませんでした。
この問題は、松江市内に住んでいた35歳の一人の男性が、「誤った歴史認識を子どもに伝えるから学校図書館から撤去しろ」と松江市教育委員会に申し入れましたが、市教育委員会はその申し入れを拒否しました。
しかし、その男性再度同志をともなって大声で執拗に抗議活動を続け、更に市議会にまで陳情しました。市議会は昨年12月に全会一致でその陳情を「不採決」としましたが、その男性の陳情はそれでは終わりませんでした。
今度は右翼的言動で有名になった在特会(在日特権を許さない市民の会)の人物を伴って市教育委員会に圧力をかけることを始めました。そのような背景の下で市教育委員長と事務局が昨年12月の市の校長会で書架から外すことを口頭でお願いし、お願いされた以上校長はそれに従うほかはなかったという事です。 これが騒動の背景の現実ですが、その事は全く伝わって来ませんでした。
また一番の問題は、このような松江市教育委員会の自粛要請の背景が、今年8月に地元紙が報じるまでは地元関係者も一切知らなかったという現実です。そして地元紙の報道がなければ全国紙が後追い報道をすることもなく、国民はこんな事が松江市で行なわれていたと云うことを、全く知らないままで終っていました。
やはり、マスコミが本来の使命である事実を適切に報道をしなければ、国民は知らないうちに、特定の団体が色々なところに圧力をかけ、その圧力をかける団体の言う通りの国家になってしまうと云う事がこの問題から見えて来ました。
この問題で一般のマスコミは、はだしのゲンの漫画の内容やその表現ばかり問題にし、また松江市教育委員会が独断で市の校長会で書架から外すことを行った事を問題にしていましたが、本当の問題は大きな声を出す圧力団体に松江市教育委員会が屈した事と、地元紙の報道がなければ全国紙も報道せず国民もこの様な事が行われていたことを知ることが出来なかったと云う事です。
ひろく国民に知らされるべき「はだしのゲン」騒動の裏事情
http://blogs.yahoo.co.jp/hellotomhanks/folder/1513906.html
★「天木直人氏の視点ー(2013/08/30)★ :本音言いまっせー! より転載します。
私が「はだしのゲン」閲覧を制限した松江市教育委員会のことを知ってメルマガに書いたのは8月17日のメルマガ第618号であった。その後、この問題は私の想像をはるかに超える大きさとスピードでメディアに取り上げられることになり、あっという間に松江市教育委員長が、陳謝してその決定を撤回した。
「はだしのゲン」のファンである私にとっては喜ばしいことであるが、これで問題が終ったわけではない。 あのメルマガで私が問うたのは教育委員会なるものの存在価値とその責任だ。 そもそも教育委員会がこの国の教育に与える影響と、この国の教育行政を預かる政府、つまり文部科学省の関係はどうなっているのかという事である。
教育委員会なるものが国から独立してこの国の教育方針を判断できるのなら、そんな重要な権限を与えられる教育委員会の委員や委員長はどのような人物なのか。 それを選ぶのは誰か。その基準は何か。地方によってその方針が変わっていいのか。
逆にもし教育委員会なるものが暗黙のうちに文部科学省の指示を仰いでいるとすれば、今度の事件の張本人は文部科学省にあるのではないか。 そういう問題点を私は指摘したかったのである。 ところが、私が思いもよらないもっと次元の低い背景が、今度の松江市教育委員会の決定の裏にあったのには驚いた。
その事を、偶然にも発売中のサンデー毎日9月8日号、週刊文春9月5日号、週刊新潮9月5日号が、一斉に書いていた。 週刊誌によって多少の違いはあるが、それは一言で言えばこうだ。
すなわち事の起こりは昨年4月に始まったという。当時松江市内に住んでいた35歳の一人の男性が、「誤った歴史認識を子どもに伝えるから学校図書館から撤去しろ」と松江市教育委員会に申し入れたという。
市教育委員会はいったんはその申し入れを拒否したが、その男性は同志をともなって大声で執拗に抗議活動を続けたという。更に市議会にまで陳情したという。それでも市議会は昨年12月に全会一致でその陳情を「不採決」としたが、その男性の陳情は終らない。
右翼的言動で有名になった在特会(在日特権を許さない市民の会)の人物を伴って市教育委員会に圧力をかけることを止めなかったという。そのような背景の下で市教育委員長と事務局が昨年12月の市の校長会で書架から外すことを口頭でお願いし、お願いされた以上校長はそれに従うほかはなかったという。 これが騒動の背景である。
問題はこのような松江市教育委員会の自粛要請の背景が、今年8月に地元紙が報じるまでは地元関係者も一切知らなかったという現実だ。そして地元紙の報道がなければ全国紙が後追い報道をすることもなく、国民はこんな事が松江市で行なわれていたか、知らないまま終っていたのだ。
全国で報道され、その反響の大きさに怯んだ松江市教育委員長があっさり謝罪して撤回したとなれば、あまりにもオソマツだ。 しかしこれで問題は終ったわけではない。
右翼に同情的な週刊新潮の記事はこう書いている。騒ぎ出したのは左翼だ、はだしのゲンの応援団は左翼だ、この国を危うくするのは安っぽい正義感に頃固まった大新聞だ、と。つまり、今度の「はだしのゲン」騒動の裏にあるものは、安倍政権の下で勢いづいた右翼と、それに反対する者たちの抜き差しならない歴史認識の対立なのである。
幸いにも右翼達は今度の撤回を不満としてさらに騒ぎ出すという。私はそれを歓迎する。「はだしのゲン」騒動を決してうやむやに終らせてはいけない。週刊誌しか書かない今度の騒動の背景を、大手新聞も書いて国民に広く「はだしのゲン」騒動の本質を知らせるべきだ。
この際徹底的に国民的議論をすればいい。そして最後は安倍首相の歴史認識を問えばいい。逃げるのではなく世界に向かって自らの歴史認識を語るべきである、と そうなれば「はだしのゲン」騒動も決して無駄ではなかったことになる。