避難者の提訴 不誠実な国への怒りだ
これが東北の震災からの復興をキズナと言って誤魔化して来た東電・政府の姿です。「福島の復興なくして日本の再生はない」と言った言葉は単なるスロ-ガンにしかすぎませんでした。
避難者の提訴 不誠実な国への怒りだ(北海道新聞社説8月23日)
東京電力福島第1原発事故による避難者らがきのう国の支援策の具体化を求めて東京地裁に提訴した。 昨年制定された「子ども・被災者支援法」は対象地域を決めて支援の基本方針を策定するよう政府に義務付けているが、いまだに定めていない。
法律ができて1年以上になる。政府の不作為は明らかだ。避難者の不安を考えれば提訴は当然である。震災復興に対する姿勢が問われている。誠意をもって支援の具体策を明示するのが国の責務だ。 提訴したのは避難指示区域以外からの避難者と、避難せずに暮らす住民たちだ。基本方針を定めない政府の違法性と、原告が支援を受ける地位にあることの確認を求めた。 損害賠償額を1人1円とし、政府の責任をただすことに主眼を置く。
支援法は国が原子力災害から国民を守る責任、原子力政策を推進してきた社会的責任を負っていることを明記した。放射能被ばくへの自主判断を尊重し、避難した人も住み続ける人も同様に支援を受けられる。
避難者は子供たちの健康、住宅の確保、就労などの悩みを抱えて暮らしている。北海道に避難している家族も多い。こうした人々を名実ともに支援することを約束し、負担を軽減する。それが支援法の意義だ。 その鍵となる基本方針を定めようとしない政府の姿勢は到底許されない。政府が法律を守ろうとせず、国民の不信感が増大すれば、国の基盤を揺るがしかねない。
一義的には復興庁の仕事である。しかし短文投稿サイトのツイッター上で暴言を繰り返した元参事官はこの支援策の担当で、基本方針の先送りも示唆していた。復興庁の「やる気のなさ」を象徴する事件だった。 基本方針のもたつきについて根本匠復興相は責任を免れない。 忘れてならないのは支援法が超党派の議員立法として成立したことだ。自民党は当時野党として立法を主導した。その責任を自覚し、政府に努力を促さなくてはならない。
安倍晋三首相は「福島の復興なくして日本の再生はない」と言った。言葉が踊るばかりで行動が伴っていない。首相は復興庁の長でもある。態勢を立て直し、少なくとも基本方針をいつまとめるのか示すべきだ。 提訴後の記者会見で原告の一人は「国は原発を推進して重大な結果を招いておきながら、誰も責任を取らず、被災者を救済せず、原発を再稼働して海外に輸出しようとしている」と厳しく批判した。
被災者の多くは苦しい中でじっと我慢している。提訴は被災地を置き去りにするかのような国に対する全被災者の怒りと受け止めるべきだ。