前田恒彦元特捜検事が裁判前から「とんでもない犯人である」との強烈な印象付けを行う名誉毀損的報道を即刻やめるべきと述べています
前田恒彦 -元特捜部主任検事のつぶやき- より
裁判前から「とんでもない犯人である」との強烈な印象付けを行う名誉毀損的報道を即刻やめるべきと前田恒彦元特捜検事が述べています。
http://www.facebook.com/MaedaTsunehiko?fref=ts
マスコミも、逮捕時点で警察発表を一方的に垂れ流し、被疑者の実名や職業、年齢などを明示し、その悪性を強調するような事件と無関係のエピソードを盛り込んで記事を膨らませ、裁判前から「とんでもない犯人である」との強烈な印象付けを行う名誉毀損的報道を即刻やめるべき。
不起訴理由 語らぬ検察 東京地検1年間 27件中、公表13
(東京新聞2013年7月16日)
検察当局が事件の容疑者を裁判に問わない不起訴とした場合、その理由を発表しない事例が目立っている。発表するかしないかは検察官の裁量。本紙の集計では、東京地検は今年六月までの一年間、報道機関からの不起訴理由の発表要請に対し、半分程度しか応じていない。「容疑者とされた人の名誉回復のためにも、不起訴の理由を説明するべきだ」との声が検察組織の内外から上がる。 (池田悌一)
事件の容疑者について、刑罰を求めて裁判を起こすかどうかの起訴判断は法律上、検察官に委ねられている。裁判になれば公開の法廷で審理されるが、不起訴の場合、理由の発表がないと、容疑者とされたことの当否が分からなくなる。今春、覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された元五輪選手について、東京地検は不起訴とした。不起訴の処分だけは発表されたが、理由について地検幹部は「言えない」を繰り返した。
元選手が覚せい剤と無関係と分かり「嫌疑なし」としたのか、刑罰を求めるほどではないとして起訴を見送る「起訴猶予」としたのか、それとも、証拠が足りず「嫌疑不十分」としたのか、説明は一切なかった。 一方、強姦(ごうかん)事件の容疑者とされた男性が六月に不起訴となった際、別の地検幹部は「嫌疑不十分」と発表。「証拠が足りず、逮捕容疑が事実だと認定するまでに至らなかった」と説明し、その説明を報道各社が報じた。
この事件の担当弁護士は「逮捕の報道後、インターネット上で全く根拠のない誹謗(ひぼう)や中傷をされ、家族まで傷ついた。本人は『嫌疑不十分の報道で名誉が回復された』と話している」と話す。 検察当局に不起訴理由の明確な発表基準はなく、事件を担当した検察官の判断次第というのが現状だ。本紙が集計したところ、東京地検は今年六月までの一年間で、報道機関が不起訴理由の発表を求めた少なくとも二十七事件のうち、十三事件しか発表していない。
検察官が判断のよりどころにするのは刑事訴訟法四七条の規定だ。事件の情報を裁判の前に公表することを原則禁じ、公益上の必要性がある場合に限り公表できるとしている。最高検や東京地検の複数の幹部は「社会的な耳目を集めた事件などは、公益性があるので例外的に不起訴の理由を発表するが、説明しないのが原則だ」と口をそろえる。 一方、発表に積極的な検察幹部は「刑訴法は公判の情報を漏らしてはならないと定めているにすぎず、公判が開かれない不起訴なら関係ない。税金を使って捜査している以上、容疑者の名誉回復のため説明するのが筋だ」と話す。
上智大の田島泰彦教授(メディア論)は「無罪推定の観点からみれば、容疑者として扱われた人の有罪立証を断念したわけだから、きちんと説明するのは当然。公表を原則とし、例外的に公表しない場合は、その理由を明らかにするべきだ」と指摘する。
<刑事訴訟法47条と不起訴理由の公表> 刑事訴訟法47条は「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない」と規定している。公判が開かれない不起訴の理由を公表するか非公表にするかは記載されていない。法務省は「47条により不起訴記録は原則、公にしてはならない」としている。