原発事故の確率は極めて低いですが、発生した場合の被害はどんな事故と比べても人類が想像出来ないほど悲惨なものに成ります
原発事故の確率は極めて低いですが、発生した場合の被害はどんな事故と比べても人類が想像出来ないほど悲惨なものに成ります。それを政府は全く認識せず海外に売り込もうとしています。
しかし、それを止める為には国民がもっと原発事故に関心をもたなければなりません。東京都議会選挙を見ても殆ど原発の事には関心が無いような結果になっています。また原発をこの国から無くそうとする政党が躍進しなければ、日本はまた暗黒の原発大国になってしまいます。
直視すべき原発の「負」(北海道新聞6月24日)
「shroud」(シュラウド)という英単語を知ったのは1970年代初頭の中学時代。米国のフォークデュオ、サイモン&ガーファンクルの歌でのことだった。
孤独をテーマにしたヒット曲「アイ・アム・ア・ロック」。窓の下の街路に静かに降り積もる雪を「shroudofsnow」とうたう。LPレコードのライナーノートの対訳には「雪の経帷子」とあった。
経帷子は死に装束のことだ。歌を作ったポール・サイモンさんに心酔していたこともあり、街を覆う「白」に「死」のイメージが重なる表現に訳も分からず感心した。
その記憶が2年前、よみがえった。東京電力福島第1原発事故に関する新聞記事で。「シュラウド」を見つけた。沸騰水型原発で炉心を囲む簡状隔壁を指す専門用語だ。
新英和大辞典(研究社)によると、この単語には経帷子のほか、「幕」「覆い」の意味がある。だから隔壁の名称も単に覆うというところから派生したのだろう。
しかし、被ばくによる健康被害を含め、原発事故の深刻さを思うと、この専門用語の語源に経帷子の意味があることが象徴的に思えてくる。「日本の高い技術水準や過酷な事故を経験した中で高い安全基準を持っているという期待に応えていきたい」。安倍晋三首相は5月、訪問先のアラブ首長国連邦で、こう述べた。
成長軟略の柱として原発技術を輸出するための売り込みで、平和利用に限定する原子力協定が締結された。その後、トルコなどとの協定も締結。6月中旬の東欧訪問でも売り込みを図った。
政府として原発を海外に売り込む発想にあぜんとする。福島の原発事故を防げなかった重大性をどう考えているのか。しかも、今なお、事故は収束していない。炉心溶融を起こした原子炉内部の状況は把握できず、汚染水漏れ事故が相次ぐ。
福島県を中心に広範囲に飛散した放射性物質の除去(除染)もなかなか進まない。事故機の廃炉は40年後とも言われる。だが、汚染区域が元通りになる日は来るのか。前政権が掲げた脱原発の方向性を否定するかのように「回帰」を強める現政権は原子力が潜在的に持つ底なしの「負」から目をそらしているとしか言いようがない。
リスクをどう見積もるのか。福島の事故はこの問いを突き付けたとも言える。 原子力規制委員会は5月、日本原子力発電(原電)敦賀原発2号機の直下の破砕帯を活断層と認定した。13万~12万年前以降に活動した可能性を否定できないとの判断だ。
原電は「推測や感覚的な推量」「科学的、合理的な判断とは言えない」と抗議した。規制委に対し、「ゼロリスクを求めるものだ」との批判がある。リスクをなくすのは不可能なのに、それを求めるのは非現実的というものだ。
確かにリスクをゼロにするのは困難だろう。だからこそ、リスクの性質によっては、それを排除できない方法は避ける。それこそ合理的ではないか。過酷な原発事故の確率は極めて低いとしても、発生した場合の被害は計り知れない。
その特殊性を考慮すべきだ。
問われるべきは、だれのための政治であり、科学技術であるかということだ。 福島の事故を早期に収束させ、廃炉の技術を確立する。土壌などから放射性物質を効率的に除去する方法を開発する。原発に依存しないエネルギー政策を進める。現実を直視すれば答えはおのずと見えてくる。