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中央の大手メディアと違って、北海道新聞はアベノミクスに対して、冷静に報道している様に感じますこれも地方と大都市の格差が大きく成った経験がある為でしょうか

中央の大手メディアと違って、北海道新聞はアベノミクスに対して、冷静に報道している様に感じます。これも地方と大都市の格差が大きく成った経験がある為でしょうか。

景気に流されぬよう(北海道新聞4月8日)

「山中の景気、折につけて尽くることなし」平安時代末期か収鎌倉時代前期の歌人・随筆家、鴨長明の「方丈記」にある一節だ。晩年に京都郊外の日野山に
構えた住居について、「山の様子は四季折々に変化するので、飽きることがない」と説明している。
 
今は経済用語として定着した「景気」だが、方丈記では、周りの気配やありさまという意味で使われている。その時々の社会の雰囲気が、経済動向を左右することを考えれば、この言葉の持つ意味合いは今も大きくは変わっていない。
 
長期化するデフレからの脱却を目指して、安倍晋三首相が推し進める経済対策、いわゆる「アペノミクス」によって、景気に変化が出ている。柱は3本の矢。そのうちの「金融緩和」と「財政出動」は動き始めた。まだ目に見える成果があるわけではないが、為替相場は円安に動き、株価は上昇した。沈んだ雰囲気が、首相の言葉によって将来への期侍に変わってきたことは確かだ。

この流れから、自動車などの輸出産業を中心に、企業マインドは好転しつつある。日銀が1日に発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、景況感が大企業製造業で3期(9ヵ月)ぶりに改善し、6月の先行き観はさらに好転した。春闘では賃金引き上げや賞与の満額回答があったことは記憶に新しい。
                    
ただ、気になることがある。期待が実体経済の活性化につながるのか。賃上げが広まらない中での物価上昇にならないか。財政への不信惑から、国債価格が暴落しないのか。疑問は尽きない。
                
そして、もう一つの「矢」である「成長戦略」も懸念材料と言える。政府は企業経営者や大学教授が参加する産業競争力会議などで、中身について議論を開始している。その中心テーマは規制緩和だ。
 
会議のメンバーである慶応大学の竹中平蔵教授は「企業により多くの自由を与える構造改革を重視することが重要だ」との考えを示している。会議では、企業が能力がないと判断した社員を解雇しやすくすることや、農業への企業参入のハードルを下げることなどが検討され始めた。
 
企業優先のルールの見直しになりはしないかと不安だ。というのも、私たちはほんの少し前に、同様のことを目の当たりにしたからだ。2001年に発足した小泉純一郎政権は、「改革なくして成長なし」という掛け声の下で、郵政3事業や道路公団などの民営化をはじめ、歳出削減、金融機関が抱える不良債権処理の迅速化を進めた。
 
規制緩和も一つだった。労働分野では、製造現場への派遺が解禁された。非正規雇用は拡大し、「ワーキングプア」が問題となった。厚生労働省などの調査でも、年収200万円以下の割合が多い非正規雇用は1990年代後半以降、一貫して増加している。解禁が格差拡大を助長したことは明らかだ。小泉政権が追随したというブッシュ前米政権の規制緩和を中心とする市場原理主義的な経済政策は、住宅バブルを誘発し、08年のり-マンショックを招いた。米国は今も格差拡大に苦悩している。
 
安倍首相も竹中教授も小泉政権を支えた主要メンバーだったことを考えれば、不安はなおさらのことだ。景気の先行きに期待が持てなければ投資は生まれない。

だが、成長の名の下で地域や庶民の負担が増すことは許されない。雰囲気に流されず、安倍政権が進める政策をしっかりと見ていく必要がある。

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