拝啓 高橋はるみ知事と云う面白い記事が北海道新聞に載りました
拝啓 高橋はるみ知事と云う面白い記事が北海道新聞に載りました。
(北海道新聞 3月17日異聞風聞 編集委員 大西隆雄)
日ごろの道政運営のご奮闘に歌意を表します。開会中の道議会で、過日、高橋知事(59)の道政執行方針演説と、各会派代表質問に対する答弁を傍聴しました。その感想の一端をお伝え致したく、筆を執った次第です。
知事は演説で、「将来にわたって持続し、発展する『新生北海道』づくり」を掲げました。「潜在的な可能性を顕在化させる」と。北海道の食や環境を「世界にも通用する先進モデルとして開花させる」とも述べました。今春就任10年となる知事の決意表明と受け止めました。 しかし、理念に裏打ちされた内実が伴わなければ、意欲的な言葉もレトリック(修辞)にわってしまいます。
ご紹介したいのは、ベルリン自由大学のミランダ・シュラーズ教授(49)の話です。福島原発事故の直後、ドイツ・メルケル首相の下で「安全なエネルギー供給のための倫理委員会」の委員を務め、ドイツを脱原発に導く議論に加わった方です。
昨年11月、札幌を訪れた折の講演でこう語りました。「北海道は日本の将来に大きな役割を果たせると思います。ドイツでは政府の動きを待つのではなく、地方のマチや地域が脱原発と再生可能エネルギーの利用で先行しました。『私たちの地域には原発はいらない。自然エネルギ-でやります』と。
そんな動きが各地に広がったのです。北海道のような、日本国内でどこよりも広く、人と自然の距離が近いところでそうした取り組みをやれぱ、きっと先進的モデルになれます」ドイツと日本の制度的違いを割り引いても、大いに参考になります。国に政策の判断を委ねるのではなく、住民に近い自治体が率先して国を引っ張るということでしょう。
まして地域の未来や住民の生命・安全にかかわる問題では地方こそが主役でなければなりません。知事は演説で再生可能エネルギーを拡大し、「環境先進地」北海道を目指すと述べました。しかし、「豊かな自然の恵みを持続的に活用できる循環型社会の構築」と、原子力発電がどうつながるのか、つながらないのか。
演説ではそこがまったく見えません。わずかに「原子力規制委員会の厳格な審査」を求める一方「原子力防災対策の充実を図る」と述べただけです。残念ながら、福島の教訓や原子力に対する知事の深い省察の言葉を聞くことはできませんでした。「安全性の確保が最優先」と、国や事業者頼みの答弁を繰り返すだけでは、危機管理を預かる地方政府のり-ダーとして主体性の欠如が疑われます。
哲学者の高橋哲哉・東大大学院教授(56)は、昨年暮れ、札幌での市民集会で「福島では希望が犠牲になった」と述べました。放射能に汚染された福島の土地が放棄され、人びとの夢や暮らしが根こそぎ奪われたという意味です。福島で生まれ育った氏の侮しさが察せられます。地震、津波、原発という複合災害が起きたとき「絶安全」はあり得ない-。そのことを教訓にすべきだと思います。
北海道には原子力を過渡的エネルギーとした省エネ・新エネ促進条例があります。一歩進めて、将来の原発ゼロと新エネ拡充策を示し、マチの活性化につなげるー。それができれぱ知事の言う「世界にも通用する先進モデル」になるでしょう。
泊原発だけではありません。函館市など道南のマチが反対する青森県の大間原発や、宗谷管内幌延町での核のごみの処分研究についても毅然とした姿勢で臨んでほしいと思います。
「子供たちが生き生きと輝くことのできる北海道の未来を築いていく」と演説を結んだ知事のことです。子供たちの未来に責任を負う者の一人として、知事のご活躍を期待しています。