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今回の選挙結果は本当に原発維持が民意だったのでしょうか

早くも原子力ムラが動き出し、安倍晋三総裁は原発の再稼働や新規の建設を認める方向に動いています。今回の選挙結果は本当に原発維持が民意だったのでしょうか。その事を鋭く指摘してます記事が北海道新聞のっていました。

民意は「原発維持」なのか(北大准教授 三上直之)重要課題まだ途上

(北海道新聞12月21日)

来週にも誕生する新政権の初動において、注意深く見守るべきことの一つに、原発・エネルギー政策がある。福島原発事故を受けて、野田政権は今年9月、「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指す新しいエネルギー戦略をつくった。

表現や内容に曖昧さは残るが、脱原発依存のタイミングを具体的な目標として示した意義はあった。この戦略に対して、今回の選挙で自民党は「軽々に(原発を)ゼロにするとは言わない」(安倍晋三総裁)とし、今後10年以内に最適な電源構成を確立するとの公約を掲げた。自民党の公約も「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立」をうたってはいるのだが、いざ政権に返り咲けば原発維持の方向に舵を切るのではないか、という見方も強い。
 
再稼働の可否について3年以内に結論を出すことも含め、原発の利用に積極的な公約を掲げる政権を選んだのは国民である。選挙で民意が示されたのだから、それに従うのが民主主義ではないか。そんなふうに考える人も多いことだろう。
 
だが、ちょっと待ってほしい。今回は、文字どおり困難な課題がいくえにも積み重なった局面での総選挙であった。だからこそ、多くの人が投票先に悩んだ。衆院選としては戦後最低となった投票率は、関心を持ちつつも投票先を決めかね、ついには投票所に足を運べなかった人も少なくなかったことを思わせる。

あらゆる争点に関して満足のいく侯補者や政党を選べた人は、むしろ少数派なのではないか。この点は、安倍さん本人が謙虚に認めている。投票日の深夜、選挙結果の大勢が判明した後で記者らの質問に答えて、「今回の選挙結果は自民党に信任が戻ったというよりも、民主党の3年間の混乱に対する『ノー』である。自民党に対する厳しい目は続いている」と語っていた。

原発・エネルギー政策に関しては、この夏、野田政権のもとで三つのシナリオ(2030年時点での原発比率が0%、15%、20~25%)をたたき台として「国民的議論」が行われた。議論の過程では、意見聴取会や意見募集(パブリックコメント)などの従来の手法に加え、「討論型世論調査(DP)」という新たな市民参加の方法も導入された。DPは、全国から無作為抽出で募った約300人を東京に集め、専門家も交えた討論会を開き、討論前後の意見め変化をアンケートで明らかにするものだった。

「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指すという新戦略は、このDPを含む一連の国民的議論を踏まえて決定された。三つのシナリオが国民に示された後、実質的に議論にあてられた時間は2ヵ月弱と短く、使用済み核燃料の扱いなど議論が深められずに終わった論点も少なくない。国民的議論と言うには不十分さ、
拙速さが目立つものだった。
 
それでも、将来のエネルギ-選択に関して議論の場が開かれ、その結果が一定程度、政府の戦略策定に影響を及ぼした意味は大きい。政権交代によって、この議論の蓄積を全く白紙に戻してしまうことは許されないのではないか。かりにそんなことをすれば。「政府とはしょせん国民の声を聞くふりをするだけの存在だ」といった不信感が広がり、新政権は出だしから致命的につまずくことになるだろう。
 
エネルギー戦略をめぐるこの夏の国民的議論については、パブリックコメントや意見聴取会での意見、DPでの市民と専門家の議論の記録映像やアンケートの生データなどが、全てウェブ上に公開されている。これらを政府がいかに読み取って戦略を策定したかの過程も、ある程度オープンにされている。新政権はこれらの蓄積の上に、必要があればさらに国民参加による議論を重ね、新たなエネルギー政策を具体化していってほしい。
 
国の将来を決める重要課題について、1回の選挙で一刀両断に決着をつけることができるなどと考えるのは幻想である。これは原発・エネルギー政策に限らず、社会保障や外交、憲法などについても同様であろう。新政権に託された仕事は、それぞれの課題について幅広い国民参加による議論の場を開き、合意を探る努力を続けることに他ならず、白紙委任を得たと勘違いして独走することでは断じてない。


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