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違憲総選挙の行方 田中良紹さんが国会探検で解りやすく解説しています

 14日の党首討論で野田総理は選挙制度改革の実現を条件に「16日に解散する」と発言した。これに自民、公明の両党が協力する姿勢を打ち出したことから、12月16日総選挙の流れが固まった。しかしこの選挙は選挙制度改革を条件にしているとは言え、あくまでも憲法違反の状態の中で行われる違憲総選挙である。
 
野田総理の発言に沿う形で民主党はこの日に選挙制度改革法案を国会に提出した。法案の中身は、小選挙区定数の0増5減、比例代表定数の40削減、また比例定数の35議席に中小政党に有利な比例代表連用性を適用すると言うもので、通常国会でいったん提出して廃案になったものを取ってつけたように再提出した。
 
しかしこの法案を16日までに取りまとめる事は事実上不可能である。従って今国会では憲法違反状態を解消する0増5減だけを実現させ、消費増税の見返りとして国会議員が身を切る定数削減は次期通常国会で実現させる事を確約すれば解散すると言うのが野田総理の主張であった。
 
ところが違憲状態を解消する0増5減案を16日までに成立させても、それを受けて区割りの変更を12月4日の公示日までに行う事は不可能である。選挙は現行の憲法違反の状態のまま行われ、選挙結果はやはり違憲になる。裁判所が選挙無効の判決を出す可能性も全くないとは言えない。
 
選挙無効になれば違憲選挙に踏み切った民主党だけでなく、違憲状態のまま早期解散を迫った自公両党の責任も問われる事になる。国民は無効になるかもしれない総選挙を民主、自民、公明が3党合意で仕組んだことを腹に収めて投票に臨まなければならない。
 
一方で野田総理の狙いを私なりに解釈する。それは来年の通常国会までに定数削減の選挙制度改革について確約を迫ったところにある。民主党が提案している比例代表連用制は自民党にとって受け入れがたい制度だからである。この制度が導入されれば自公の選挙協力に楔が撃ち込まれる可能性がある。
 
連用制は小選挙区で多数を得た政党が比例ではその分を削減されるので、中小政党が生き残れるようになっている。仮に日本で導入すると民主党や自民党は議席を激減させるが、公明党などは議席を減らすことにならず、かつては公明党が熱心に導入を主張していた。
 
連用制が実現すると公明党は自民党との選挙協力がなくとも現状の議席を維持できる。そうなればキャスティングボートを握れる政党になり、状況次第で連立の相手を変えることが出来る。困るのは自民党である。公明党の協力がなくなれば自民党は小選挙区でそれぞれ3万程度の票を減らすことになる。自民党は公明党との選挙協力の結果、実は足腰の弱い政党に成り下がっている。だから自民党はかつての中選挙区制に戻りたい。3人区を作り公明党も生き残れるようにして公明党との関係を維持しようとしている。
 
従って選挙制度改革での確約は民主党の連用制と自民党の中選挙区制との綱引きになる。自民党は連用制を憲法違反だとか、分かりにくいとか言っているが、中選挙区制こそ世界に例のない特殊な選挙制度で、比例代表連用制はニュージーランドやドイツなどが採用している。中小政党が生き残れることから連立の時代の政治に適していると言われる。
 
違憲状態である事を承知の上で選挙に踏み切ると最高権力者が判断した事は、主権者国民から見れば挑戦状をたたきつけられたに等しい。そうであるならば16日までにどのような確約が政党間で実現し、それが国民にどのような意味を持つのかを吟味する必要がある。そして挑戦状にもきちんと答を出さなければならない。
 
特に景気後退がはっきりしてきた今、その原因が消費の減退にあると言われている今、その消費をさらに冷え込ませる消費増税を認めるのかどうか。主権者国民の知らないところで決められた3党合意に対して、ようやく国民が意思を示せる機会が訪れた。
 
テレビを見ていると「どうせ政治は良くならねえ」とか「誰がやっても同じだ」など自分で自分に唾する発言を耳にするが、国民生活に最も直結する問題は消費税の導入である。それに意思表示をしなければ景気がどうなっても文句は言えない。来年夏の参議院選挙と2度にわたって意思表示ができる機会をむざむざ無駄にするのは本当に愚かである。

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