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小沢裁判控訴棄却判決要旨の一部です

今回の判決文は政治資金収支報告書を水谷建設からの裏金が入っている為に、日付をずらそうとしたと推認した登石判決とは全く違うものに成っています。
    判  決  要  旨
被告人 小沢―郎こと 小 澤 一 郎(昭和17年5月24日生)
被告事件 政治資金規正法違反
原 審 東京地方裁判所『平成24年4』26日宣告)
控訴審 東京高等裁判所第4刑事部(平成24年11月12日茸告)
裁判官 小川正持(長)、川ロ政明、任介辰哉
【主文】本件控訴を素却する。【理由の要旨】 
 現判決は,陸山会の平成16年分及ぴ平成17年分の収支報告書に本件公訴事実どおりの虚偽記入及ぴ記載すべき事項の不記載があること,平成16年分の収支報告書における本件4億円の収入並ぴに本件土地の取得及ぴ取得費の支出に係る虚偽記入・不記載について石川知裕に故意が認められること。平成17年分の収支報告書における本件土地の取得及ぴ取得費の支出に係る虚偽記入について池田光智に故意が認められること,披告人は石川らから本件4億円を簿外処理すること並びに本件土地の取得及び取得費の支出を平成16年分の収支報告書に記載せず,平成17年分の収支報告書に記載することについて報告を受けこれを丁承したことの各事実を認定したが,被告人は,「本件4億円の簿外処理や本件土地公表の先送りが違法とされる根拠となる具体的事情については,石川らにおいて披告人に報告してその丁承を受けることをせず被告人がこれらの事情を認識していなかった可能性があり,したがって,被告人が,本件4億円を借入金として収入計上する・必要性や,本件土・地の取得等を平成16年分の収支報告書に計上すぺきであり,平成17年分の収支報告書に同年中のものとして計上すべきでないことを認識していなかった可能性を否定できない」・ので,「被告人の故意及び実行犯との共謀について証明が十分ではなく,本件公訴事実について犯罪の証明がないとして,披告人を無罪とした。
 
しかし,被告人は,本件4億円を借入金として収入計上する必要性や,本件土地の取得等を平成16年分め収支報告書に計上すべきであり平成17年分の収支報告書に計上すべきでないことを認識していたから,原判決は本件4億円の簿外処理及び本件土地公表の先送りに係る被告人の故意及び石川らとの共謀が認められないとする点において事実誤認をしており,この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかであって,原判決は破棄されなければならない。
 
また原判決が被告人の故意及び石川らとの共謀が認められない根拠として認定したこと,すなわち,被告人が本件売買契約の決済全体が平成17年に先送りされたと認識していた可能性があること,及び,被告人が,本件定期預金は本件4億円を原資と,して設定され被告人のために確保されるものなので本件4億円を借入金として収入計上する必要ないと認職していた可能性があることについては,原審の審理過程において、被告人及び弁護人はー切主張しておらず,争点になっていなかった。原審裁判所がこの点を争点と考えていたのであれば当事者に確認して争点化を図るか,自ら被告人に質問しその真偽を確認すべきであったが,原審廠判所はそれをしなかった。原判決・事実誤認は,このような審理不尽によって生じたものであり原判決はこの点からも破棄されなければならない。以上のとおりである。

そこで,原審記録を調査して検討する。原判決が本件公訴事実について犯罪の証明がないものとしで被告人に対し無罪を言い渡したのは正当として是認でき,原判決が争点に対する判断の項で説示するところも一部を除きおおむね肯定できる。

そこで桧討する。
(1)彼告人に対する本件売買契約締結の報告等
関係証拠によれば,原判決が前記で認定判示するところは不合理であるとはいえない           
(2)所有権の移転時期及びその先送りについての石川の認識
 原判決は,石川は,東洋フレックスとの交渉の結果決済全体を遅らせることはできず所有権移転登記手続きのみを遅らせるという限度で本件合意書を作成し所有権の移転時期を遅らせるには至らなかったとする。そして,原判決は,所有権移転の先送りができたと認識していた旨の石川の原審公判供述は信用できないとする。しかし関係証拠に照らすと残代金全額の支払がされ,物件の引き渡しがされて本件士地の所有権移転登記手続きに必要な書類の引渡しがされるなどしたことから,平成16年10月29 日に本件土地の所有権が移転したとした原判断を不合理とすることはできないが石川の上記原審公判供述は信用できないとする原判断は経験則等に照らし、不合理というほかはない。
 
石川は「本件合意書の1条において,本件土地の所有権を平成17年1月7日に移転することが取り決められたと考えていた。また,当時,所有権の移転と登記名義の移転との違いをよく理解していなかったことや司法書士からの説明で所有権移転の先送りができたと認識していた」旨を原審公判で供述した。これに対し原判決は,本件売買契約書の記載を見れば,所有権の移転と登記名義の移転が異なるものとして扱われていることは専門家でなくても容易に理解できるはずであり,高額の不動産購入に当たり本件売買契約書の内容を慎重に検討したはずであり所有権の移転と登記名義の移転とが区別されるものであることを理解していたはずであるから本件合意書により本件土地所有権の移転時期の変更などは合意されていないことも認識していたものと認められる,司法書士は,その立場等に照らせば,睦山会における経理処理や収支報告書の計上方法について,石川に助言をするはずがない,として,石川の前記公判供述は信用できない旨認定判示する。

関係証拠によると,本件売買契釣書には,「第5条所有権の移転及引渡しとして,本件士地の所有権は,買主が売買代金全額を支払い,売主がこれを受領したときに売主から買主に移転する旨,売主は買主に本物件を所有権移転と同時に引き渡す旨第7条所有権移転登記等」として,売主は,売買代金全額の受領と同時に買主と協力して所有権移転登記の申請手続をする旨等の記載があることが認められる。そうすると原判決のいうように,その内容を慎重に検討すれば,本件売買契約書上,所有権の移転と登記名義の移転とが区別されるものであることを理解することは可能といえる。そして,本件合意書の第1条には「原契約の物件の引渡し及び残代金支払日は,原契約に基づき平成16年10月29日に行うが原契約第7条による所有権移転登記については,買主の希望により平成16年10月29日に所有権移転仮登記を行い,本登記を平成17年1月7日に行うものとする」とあり,残代金の支払時期,物件の引渡し時期及び所有権移転登記(仮登記及び本登記)の時期のみが明記されているだけであって,所有権の移転時期についての定めはない。また,本件合意書の第3条には「第1条及び第2条の変更以外,原契約の内容に変更はないものとするとある。これらからすると,所有権の移転時期については本件合意書によって変更されておらず本件売買契約書に従って処理されることになると理解することも可能といえる。
 
しかし,本件合意書作成の経緯等を見ると,関係証拠によると,次の事実が認められる,すなわち,石川は本件売買契約後に先輩秘書からの示唆を受けるなどして本件土地公表の先送りの方針を決め当初は本件売買契約の決済全体を来年に延ばすようにミブコーポレーションに求めた。しかし,売主の意向が残代金は10月29日支払ってほしいというものであったことから,ミブコーポレーションの担当者が,司法書士から聞いていた仮登記を利用して,本登記を延ばすことを提案し,陸山会側がこれを了承し,本件合意書の作成に至った,その際,所有権の移転時期についての具体的なやり取りがされた様子はない。そして,前記のとおり,本件合意書の第1条には,残代金の支払時期及び物件の引渡し時期は明記されているが,所有権の移転時期については何ら明記されていない。

そこで,石川の認識についてみると,仮に原判決のいうように石川が所有権の移転と登記名義の移転とを区別して理解していたとすると,本件合意書の作成に当たり,所有権の移転時期はどうなるのかと聞いたり,本登記の先送りだけでなく所有権移転時期の先送りも本件合意書に明記してほしいなどという要望をすることになるのではないかと思われる。石川がそのような行為に出ていないということは,石川としては,所有権の移転と登記名義の移転とを区別して認識しておらず,これらを一体のものとして認織していたためではないかとみるのがむしろ自然ともいえる。 また,本件売買契約書及び本件合意書の内容について,原判決は,石川が慎重に検討したはずであり,専門家でなくても容易に理解できるとする。しかし石川は10月29日の決済直前にいわぱ駆け込みで先送りを実現しようとするなど慌ただしい状況にあったといえるのであるから,時間をかけて慎重な検討をするような心理的余裕がなかったのではないかとみる余地がある。しかも,陸山会側からの要望が契機であるとはいえ,本件合意書自体は,司法書士という専門家も関与した形でミブコーポレーションから提案されたものである。法律の専門家でもない石川がそれを十分な検討を経ることなく信頼したということはあり得ることいえる。したがって原判決のいうように石川が慎重に検討して理解したとはいい難いというべきである。
 
そうすると,石川が,本件合意書により自らの要望どおりに所有権の取得も先送りできたものと思い込んだということもあり得ることといえる。他方本件合意書作成の経緯等からすると,売主である東洋アレツクスとしても,陸山会側の当初の要望である決済全体の先送りに応じることはできないが10月29日に残代金の支払が受けられ物件の引渡しができれば足りると考えていたものとみられ,登記と所有権取得とをー体のものとして先送りするという陸山会側の明示的な要望があれば,これに反対するような状況は何らうかがえない。これは前記のような石川の認識に矛盾しない。
  
以上からすると,石川としては,原判決がいうような所有権移転登記手続きのみを遅らせるという限度で本件合意書を作成したとの認識であったとは認め難く,登記とー緒に本件土地取得も先送りされたと理解しかとみる余地があるとえる。したがってこれまで検討したような考察を欠いたまま石川の前記公判供述は信用できないとした原判決の判断は,経験則等に照らし,不合理というほかはない。
  
以上のとおり,石川は,本件土地の取得を平成17年に先送りできたと思い込んでいた 可能性があり,石川から本件土地購入等に関する引き継ぎを受けた池田についても,石川と同様の認職であった可能性を否定できない。そうすると本件土地の取得について石川の平成16年分の収支報告書不記裁の故意、池田の平成17年分の収支報告書虚偽記入の故意はいずれも阻却されることになるのでこれらの故意を認めた原判浹の判断ほ,論理則,経験則等に照し不合理であって是認することができない。もっとも,被告人に対する本件士地取得についての平成16年分の収支報告書不記載及び平成17年分の収支報告書の虚偽記入の各犯罪の成否を検討するに当たっては,なお被告人の故意の有無を問題にする余地があると考えられるので,本件土地の取得につき,被告人が石川から報告を受けたのかどうかについても検討を加えておくこととする。

結論  以上のとおりであって,被告人の故意及び共謀についての証明が十分ではなく,本件公訴事実について,犯罪の証明がないことに帰着するとして被告人を無罪とした原決の判断は是認することができる(なお,石川及ぴ池田につき,本件土地取得に関する不記載ないし虚偽記入の故意を認めた点において原判決には事実の誤認があるが,これが判決に影響しないことは明らかである,)
 
したがって,原判決には,所論のような判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認ないしは審理不尽の違法はない。論旨は理由がない。

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