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『消費税の政治学2』 田中良紹

 『消費税の政治学2』 田中良紹の国会探検より転載します
 
野田総理と小沢元代表の会談が揣摩臆測を呼んでいる。揣摩臆測を呼ぶのは当然で、会談はそれを狙って設定されたと私は見ている。周囲を疑心暗鬼にさせながら、誰がどう言うか、世の流れはどうかを見極めて、両者はそれぞれ対応を考えるのである。野田総理が輿石幹事長に命じて設定させたというところを見ると、会談を必要としているのは野田総理である。
 
両者を対立軸でしか見る事のないメディアは、会談が決裂するか、合意するか、協議継続となるかの三通りをシミュレーションして、民主党が分裂するか、野田総理が窮地に陥るかどうかだけを見ている。そして増税推進の立場から、野田総理が自民党と手を組み小沢切りを決断すべきだと主張する。しかし両者がのっぴきならない対立関係にあるならそもそも会談は設定されない。そうでない事を前提にすれば自民党分裂とか自公分断とかのシナリオが出てくる可能性もある。
 
とにかく予算を成立させて国民生活に支障が出ないようにするのが最大使命の通常国会で、予算執行に欠かせない赤字国債発行法案が成立してもいないのに、増税の議論をしているのだからこの国会は普通でない。だから普通でない事が起きても不思議ではない。二人の会談が行なわれる週には、他の重要法案の審議が始まる事もあり、会談はその行方とも当然に絡んでくる。
 
先週の国会は「社会保障と税の一体改革特別委員会」の審議を中心に動いたが、野党が追及していた点を私なりに整理してみる。まず野党は野田総理が「法案成立に政治生命を賭ける」という言葉とは裏腹に全く本気度を見せていない事を追及した。
 
「ねじれ国会」だから法案成立のためには野党の協力が絶対に必要である。しかし野田総理にその姿勢がまるでない。参議院で問責を受けた2閣僚の更迭を迫っても応じない。増税は09年総選挙のマニフェスト違反であるのにそれも認めない。与野党間には社会保障政策に違いがあるのにひたすら協力を迫ってくる。成立させる気があるならば民主党の法案を撤回して自民党案を丸呑みにしろと野党第一党の自民党は迫った。
 
町村信孝議員は激しい調子で「言葉だけで行動が伴わない松下政経塾流政治家」と野田総理をこき下ろし、竹下亘議員は「兄の竹下登が消費税を導入した時は所得税減税もやり、トータル2兆6千万円の減税だった。橋本内閣が消費税を上げた時はプラスマイナスゼロ。今回は13兆円を越える初めての大規模増税だが、全く国民に説明する努力がない」と今回の増税がこれまでとは違う純粋の増税であることを強調した。
 
こうした議論を聞くとメディアが言うように野田総理が自民党と組んで消費税法案を成立させる事も難しいように思える。自民党は民主党が09年に国民を騙した事を認めて国民に謝罪をした上で自民党案を丸呑みしない限り協力しないと言っているのである。民主党は自民党に吸収されてしまえと言わんばかりである。
 
しかし一方で自民党は野田総理の「不退転の決意」を千載一遇の好機と捉えている。特別委員会の自民党筆頭理事である伊吹文明議員は「野田総理が勉強されて我々と同じところに来ていただいた事を大歓迎している」と評価した上で、消費税問題で自民党の司令塔となっている立場からタテマエではない本音の部分を開陳した。
 
まず消費税は社会保障のためではない。財政赤字を解消するために行なわなければならない。社会保障費がどんどん伸びてきて国民には分かり易いから社会保障のためと言うだけで、お金に色がついているわけではない。
 
本当は小泉政権が人気があった時に消費税を上げておくべきだった。ところが税金を上げないで社会保障費をカットしてしまった。これが自民党の大失敗である。09年の選挙でいつもは選挙に来ない子供づれの若夫婦が大勢来た。そして自民党が選挙に負けた。
 
自民党が消費税法案に協力する見返りに「話し合い解散」をするなどという子供じみた話を私はしない。野田総理は今国会で消費税法案を通すと言っているが実施の前に総選挙が必ずある。そこで民主党が負けると消費税は実施できなくなる。だから民主党案では駄目なので、野田総理は自民党案を成立させる方法でしか消費税を上げることは出来ない。
 
つまり伊吹氏は野田総理が消費税法案を成立させる時に、中身は自民党案でなければ実施にたどり着けないと言っている。だったら自民党は民主党政権を終らせて、自分で消費税法案を提案すれば良いと思うが、それは出来ないのだ。それをやると自民党が選挙に負けてしまう。だから「不退転の決意」の野田総理に成立までやらせ、民主党が選挙に負けて自民党が政権についても、中身を自民党案にしておけば継続して実施できると考えている。野田総理に選挙の防波堤になれと言っているのである。
 
自民党の税制調査会長である野田毅議員は、自自連立の時に小沢氏が作らせた消費税増税案の内容を示して、野田―小沢会談で総理が小沢氏を説得する材料に使うようアドバイスしたが、「総理は小沢さんを説得しきらんと思う」と悲観的見通しを述べた。そして「民主党内から66人が造反すると消費税法案は衆議院も通らない」と小沢グループに対する警戒感を露にし、野田総理には厳しい選択が待ち受けていると同情してみせた。
 
こうした議論から見えてくるのは「社会保障と税の一体改革」とは国民向けの目くらましであり、実体は民主党が無駄を削る事をやめた事と、金融市場の動向を恐れて財政均衡に走る政府の姿である。要するに国際社会の恫喝に恐れをなしている話である。
 
また「話し合い解散」も「大連立」もメディアの願望に過ぎず、与党も野党も政治家は消費税と選挙が絡まる事を恐れ、誰も野田総理の本気度を信用していないのに、それに付け入るしかないと考え、一方で消費税を推進してきた小沢氏が反対する真意を読み解いてはいないという事である。政局の入り口でみなまだ手探りしている。

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