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日隅一雄(ヤメ蚊)ブログの東京地裁判決は小沢さん無罪をこのように説明している

昨年の5月に胆のう癌が見付かり、余命5カ月と宣告された日隅一雄弁護士の情報流通促進計画by日隅一雄(ヤメ蚊)ブログhttp://yamebun.weblogs.jp/my-blog/
より『東京地裁判決は小沢さん無罪をこのように説明している~判決批判する前に読んでほしい!』と云う内容の一部を転載します。
http://yamebun.weblogs.jp/my-blog/2012/04/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%9C%B0%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%B1%BA%E3%81%AF%E5%B0%8F%E6%B2%A2%E3%81%95%E3%82%93%E7%84%A1%E7%BD%AA%E3%82%92%E3%81%93%E3%81%AE%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E8%AA%AC%E6%98%8E%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E5%88%A4%E6%B1%BA%E6%89%B9%E5%88%A4%E3%81%99%E3%82%8B%E5%89%8D%E3%81%AB%E8%AA%AD%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%BB%E3%81%97%E3%81%84.html

1 「限りなく黒に近い灰色」というコメントをした方へ
刑事事件は、検察側が立証して初めて有罪になります。検察側が立証できなかったら、白です。何故、限りなく黒に近いというのか、その理由を説明してください。今回の件は、外形的に事実と違う記載があったことまでは裁判所が認定することは予測されていたため、最大の争点は、小沢さんの違法性の認識の有無です。その最大の争点を検察側が立証できなかったのですから、完全に検察側の負け、白です。

そもそも、刑事事件の無罪判決は、「立証不十分」とするのが通常であり、それを乗り越えて、さらに、「無実」だと書くことはほとんどない。例外的に、「アリバイが成立する場合」、「ほかに犯人がいる場合」があるが、それ以外の無罪判決では、立証不十分で無罪ということになる。私が担当して無罪になった件は、行為者の故意が問題となったが、判決は「立証不十分で無罪」というものだった。
 このコメントをした人は、たとえば、今回の事件で、判決がどのような表現をしたら、「限りなく黒に近い灰色」でなくなるのですか?教えてください。

2 「国会で説明するべきだ」というコメントをした方へ
何を説明するべきかを具体的に述べてください。判決を読めば、本件の詳細は分かるのであり、それ以上に何が聞きたいのですか?4億円の出所ですか?それについても、判決は触れていますよ。国会で質問する議員は、今回の裁判で出た以上の何か新しい証拠でも持っているのでしょうか?そうでないなら、国会での質問は裁判所でなされたこと以上のことはできないのではないですか?

3 「知らないと言うだけで済ませるわけにはいかない」
知っていることを立証するのは、検察側の責任です。単独事件では、外形的な行為から意図まで立証できるケースが多いので、このことをあまり考える必要がないのですが、本件のように、実行した人(石川秘書)とそれに関与したとされる人(小沢さん)などの複数が関与する場合には、それぞれの思惑が違うことがあるため、検察側が関与したとされる人の意図(違法性の認識)まできちんと立証する必要があります。それに失敗したのです。結果があっても、直ちにその結果に責任を問うことができないことは、同じように包丁で人を刺しても、最初から刺す気だったのか、転ぶ拍子に手にしていた包丁が刺さったのか、包丁で斬りかかってきた人に抵抗しているうちに斬りかかってきた人に包丁が刺さったのかで、まったく、責任が違ってきます。結果だけで責任を考えるような制度は日本ではとられていません。

【補足その2】
次のような質問をいただきました。とてもよい質問だと思いますので、ご紹介した上、私なりにご説明をしたいと思います。
質問
【判決要旨の解説読ませて頂きました。しかし疑問が残ります。 本件4億円を小沢氏に帰属する定期預金とした上で、本件4億円を計上しないことが適法に実現されると小沢氏が認識することはありえますが、その場合は、資産報告書に記載されるべきであって記載されていないのは認識と矛盾します。 また「法律や会計の専門家でない被告人において,本件定期預金の名義の認識から,直ちに,その原資とされた本件4億円を借入金として計上する必要性まで認識することは難しいといえる」という裁判所の判断は、計上する必要性を「知らなかった」可能性があると言っていることになりますが、法律というのは「知らなかった」は通らないものであるはずです。裁判所がこのような判決を出す事にははなはだ疑問を感じざるをえませんし、論理構成をねじ曲げているとしか受け取れません。 本件4億円については、(1)本件4億円の簿外処理は適法、かつ資産報告書に記載されるべきものだった。(2)本件4億円の簿外処理は違法。小沢氏が借入金計上の必要性を認識していなくても、法の不知は抗弁たりえず罪に問うべき。 この二択しかないと考えますが、日隅さんのお考えはいかがでしょうか?】

いくつか質問が混在していますので、順番にお答えします。
まず、もともと現金で貯めていた4億円を自分名義で定期預金した場合には、睦山会の収支報告書にはその預金について触れる必要がないため、「政治資金規正法」上合法的な処理だが、他方、国会議員の個人資産を明らかにすべきという「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」には触れるのではないか?という質問です。

これは、直ちにそうだとはいえないのです。本件で最大の謎は、なぜ、平成16年の売買を平成17年にずらそうとしたか、ということです。できるだけ、4億円を公表しなくても良いように処理しようとすることに何か、このずらしが貢献するのか?このことが分からないように、当時の関係者の認識をいまから振り返って、限定することは相当困難です。

ご質問の件についても、たとえば、小沢さんは次のように考えていた可能性があります。
【いずれの法律でも届けなければならない資産は年末のものだ。したがって、年末の時点では、4億円を、陸山会などの団体から準備して、それによって、一時的に、4億円を私(小沢さん)に返却するような処理をしてくれるのだろう。公開しないですむように取りはからってくれているわけだから、それくらいの処理は当然のことだ。また、「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」では公開の必要のない普通預金に切り替えて担保にする方法だってあるだろう】
小沢さんがこう考えたとすれば、どちらの法律にも触れないわけです。そして、もともと、法律に触れないでかつ公開しないで良い方法を検討していたというのが裁判所の認定ですから、その可能性は十分にあることになります。

次に、【裁判所の判断は、計上する必要性を「知らなかった」可能性があると言っていることになりますが、法律というのは「知らなかった」は通らないものであるはずです。裁判所がこのような判決を出す事にははなはだ疑問を感じざるをえませんし、論理構成をねじ曲げているとしか受け取れません】という部分ですが、本件は、いわゆる「法の不知」が問題となっているケースではないのです。たとえば、自転車の一時使用が窃盗罪にあたらないと考えて窃盗したが、実際には、一時使用も窃盗に当たるというような場合が「法の不知」です。本件は、一時使用が窃盗に当たることは知っていたが、実行犯が所有者から一時的に使用する許可を得ていると説明し、その説明を信じることが合理的であり得る場合に、何らかの関与をした共犯者も罪に問えるか、という場面です。事実関係の誤認です。判決は、小沢さんは、届け出る必要がない「事実関係がある」と認識していた可能性がある、と判断したわけですから、合理的な筋道に従った合理的な判断といえます。

最後に、「二択」といわれている点が、二択ではないことは、4億円を陸山会が一時的に立て替えるという方法があることからおわかりいただけるかと思います。
以上のような考え方は、あくまでも私の考え方であって、もしかしたら、関係者はもっと違う方法を考えていたのに、石川秘書あるいはほかの人がミスをしてしまったのかもしれません。私は判決要旨しか読んでいませんから、訴追側弁護側両者の主張をすべて知っているわけではありませんから。ですので、次に書くことはまったく不要なことですが、政治倫理の問題について一言触れます。

【4億円を陸山会などが立て替えることは、「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」(以下「資産公開法」)をすり抜ける行為であり、政治倫理上問題が残るのではないか】という疑問があると感じる人があるかと思います。
しかし、そもそも、資産公開法は「ざる法」です。抜け道はたくさんあります。琉球新報は、【資産公開法では、対象を議員本人に限るなど、配偶者や扶養する子は対象外になっている。預貯金については、当座、普通預金の記載義務はなく、虚偽記載の罰則規定もない。】と指摘しています。

つまり、資産公開法は、ここまでなら公開できるという議員側の妥協の産物であり、法という形式で政治倫理を定めているのです。倫理的な規定であることは罰則がないことからも明らかです。
正直、政治家はいろいろな手段で資金を集めていると思います。ぎりぎりのこともやっているでしょうし、なかにはアウトだけど見つかっていないだけの人もいるでしょう。

そういう状況の中で、政治倫理として、資産公開法が定められているのですから、この法律に引っかからない行為は、政治倫理上問題もないわけです。もし、問題があるというなら、全議員に親族の資産や普通預金の残高を公表させ、もし、億単位のお金が見つかったら、政治倫理違反だといってペナルティーを与えなければならないことになります。そうしなければ、不公平だし、不合理だということになります。
また、捜査当局(検察)が何らかの容疑で事務所の資料を一式ごっそり持って帰れば、おそらく、抜け道を利用した資産がみつかるでしょう。そうなれば、検察ファッショが実現します。

私からの説明は以上です。何か疑問があれば、さらにコメント欄もしくはツイッターでお願いします。ただし、すでに記載してあるなどの理由で回答する必要がないと考える場合には、回答しないこともあります。体調などの都合ですので、ご容赦ください。

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