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宗像 紀夫元名古屋高検検事長と郷原 信郎元検察官の対談①

小沢元代表「陸山会事件」裁判について宗像 紀夫中央大学法科大学院客員教授、元名古屋高検検事長と郷原 信郎名城大学教授、元検察官の対談

郷原氏は≪特捜部がどうしてもですね、結局、自分たちが事件にできなかったものですから、何とかそれを立証したいということで、こだわって、最後もう根負けする形で、冒陳(冒頭陳述)に載せてしまった。そうすると裁判所はですね、検察は組織としてこれは立証すべきだと言ってきた事件って、なかなか裁判所の判断では止めさせられないんですよ。機会も与えてくれないのか、と言うと裁判所ちょっと弱いんですよね。それで、裁判所がこの立証を、水谷裏献金立証を認めてしまった。それが今回のこういうおかしな判決が出た根本的な原因だと思っているんです。≫と語り

宗像氏も≪こういうことで判決する意味は何かというと、証拠が無いということなんです。具体的な証拠がないと、こういう形で推認、推認でAとBの関係がこういう関係だからこう認定すると、関係があったという認定すると。これはね、非常に危ないんですよ。民事裁判だとですね、弁論の全趣旨といってですね、ようするに具体的証拠はともかくとして、全体としてみればこうだっていうようなことを民事はやるけど、刑事でやったらですね、これは大変なことになります。≫と警鐘を鳴らした。

郷原
私は、この事件は、「小沢さんを刑事被告人の立場に立たせるような事件ではない」と、ずっと言ってきましたし、そういう意味で、こう強い口調で、まあ、元々の原因を作った検察を含めて批判したくなる小沢さんの気持ちはよくわかります。思い出してみるとですね、小沢さんがこれだけ厳しい言い方をして、検察サイドを批判したことが一回ありますよね。民主党の党大会です、去年の。党大会の前日に秘書三人が逮捕されて、「民主主義に対する脅威だ」ということまで言って。

厳しい口調で検察を批判したんです。私が思うのはですね、それなら何故、そのままずっと同じトーンで、同じ言い方を続けてこなかったのか、ということなんですね。
秘書三人が起訴になって、自分が不起訴になった時に、その結果を「公正公平な検察の捜査の結果と受け止める」というふうに言いました。私も、朝日の〝私の視点〟でも厳しき批判しましたけど。

自分が不起訴になった時に、公正公平だと、三人の秘書がやられているにもかかわらず。ええ、それが一貫してないんですよ。今、こういうふうに言うんであれば、その時から一貫して検察を批判してないといけないと思うんですね。

小沢さんは確かに政治力はすばらしいかもしれない。私は司法に関する対応は非常に疑問がありますね。今回の件も秘書三人の事件の問題、裁判の問題についても、そういう生ぬるいことを言っているから、裁判所が秘書三人を結局有罪にしてしまった。
それが、全部、自分のところに降りかかってきてしまった、という形になってるんです。

この事件に強制捜査を着手した時からずっといってきたことですけれども、検察の明らかな失敗捜査です。最初から、計画的に政治的な意図で動いているというほどのものではなくて、他にやりようがなくなって、結局、こういうところに手を付けたと私はずっと見てますね。ただ、結果的には、今のような状況になって、もともとの発端はあの西松事件での大久保秘書の逮捕ですから、まあ、こういうふうに見たくなるのはわかります。

宗像
私は、こういう制度自体はですね、ようするに検察審査会は、独自の観点からですね、起訴か不起訴か、これは起訴相当だとやるのはいいと思うんですよ。これを二度やったら強制起訴だと、これが大問題でしてね。それで、検察が不起訴にする場合ですね、例えば、起訴猶予、証拠はあるけれども、起訴できるけれども起訴しないと、こういう処分した時はですね、検察審査会が働く余地は十分あるんですよ。
ところが、検察が、嫌疑不十分、つまり証拠がないと、証拠が十分でないと言って不起訴にしたのを、「いや、あるだろう」ということで、検察審査会が判断するというのはですね、仰ったように証拠のプロ、特捜部なんかは政治家を起訴できればしたいわけですよ。したいけれども、証拠が十分でないからできないんですよ。したいけれどもできないのを、この検察審査会のほうがですね、「いや、これできるだろう」と。

これはですね、大問題、いや、そこまで言うのはいいけれども、これを強制起訴というかたちで、だから指定弁護士というのは言ってみれば、有罪になるかならないか、証拠が十分にあるかないか、関係ないんですね。ようするに二度に渡って、起訴相当議決をすれば、あとは自動的に言ってみれば起訴ですから。だから、これは一つの大問題だと私は思います。

郷原
そもそもですね、この水谷建設からの裏献金というのは、最初から、この陸山事件をやる時から、マスコミに報道されて、検察もずっとそれを事件として追っかけてたんですよ。この事件が、この裏献金事件が立件できる、というのはおそらく最初、前提だったんだろいうと思うんですね、検察の捜査の・・・。ところが検察はこれに失敗するわけです。結局、4億円の虚偽記入しか起訴できなかった。

本来、この裏献金があろうがなかろうがですね、それを貰ったということを言ってないわけですから、石川さんも大久保さんも。これ関係が全く立証できないんですね。
ですから、この裁判で、4億円の虚偽記入の裁判で、関連性がない裏献金について立証させること自体が全くおかしいんです。

宗像
だから、検察の言い分、それから裁判所の言い分は、ようするに何故虚偽記入、書かなかったのか。この動機としておかしな金、その原資がおかしな金だったからだと、その怪しい金のさらに中味として、5000万、水谷建設からの5000万が流れ込んだんじゃないかと、そういうふうに思わせる形の立証を検察はやろうとした。それに対して裁判所は、普通だと、「いやいや、そんなところまで関係ありませんよ、そんなところまでは。これは記載があったかなかったかで済む話ですよ」と言えば、それで済んだんですけれども、ここまで立証させて、立証させますと、事件全体がですね、なんかおかしな事件になる。単なる形式犯じゃなくて、いわゆる実質犯的なものというふうに、検察は立証しようとした。
郷原
検察の内部でもですね、私、検察の幹部からちょっと聞いたんですけれども、こんな立証をさせるというのは反対意見が相当強かったらしいんですよ。検察が冒陳(冒頭陳述)に、こんな事実、書いてですね、水谷建設の裏献金の話を、それは関係ないんで、そもそも検察の組織としてですね、普通はやらせないと思うんですよ。当然、宗像先生だってやらせないですよね、検事長でいらした時に下が持ってくるのは。
ところが、特捜部がどうしてもですね、結局、自分たちが事件にできなかったものですから、何とかそれを立証したいということで、こだわって、最後もう根負けする形で、冒陳に載せてしまった。

そうすると裁判所はですね、検察は組織としてこれは立証すべきだと言ってきた事件って、なかなか裁判所の判断では止めさせられないんですよ。機会も与えてくれないのか、と言うと裁判所ちょっと弱いんですよね。それで、裁判所がこの立証を、水谷裏献金立証を認めてしまった、それが今回のこういうおかしな判決が出た根本的な原因だと思っているんです。
宗像
まさに、これがね、本当にお金が入ってきたんだとすると、場合によれば、贈収賄事件であり、脱税事件であり、あるいは談合なんかだと、また別な独禁法とかいろんな形になってくる可能性がある事件なんですよ。ですから、ふわっとそんなもの立証してみてもですね、私は意味は無いんで、ようするにそれは悪印象を与える、そういう意味での効果はあるけれども。
郷原
ただ、それだけではなくてですね、裁判の結論にも、ものすごく大きな影響を及ぼしたと思ううんです。結局、関連性が無いのに水谷マネーと、この4億円の虚偽記入が関連性ありだという前提で証人尋問を認めたわけです。そうすると判決でも、関連性がありと認定しないとですね、今さら関連性なしと言えないじゃないですか。それじゃ、どういう関係があるのか、水谷裏献金とこの4億円は。そこに出てきた理屈はですね、マスコミが報道するという理屈なんですよ。これをもし4億円を正確に記載してたら、ちょうどその時期に胆沢ダムの入札が行われていて、とそういう理屈なんですよ。

こんなことですね、まともなマスコミが、4億円の土地を買った時に、たまたま大きな工事の入札があったから、だから裏献金だと疑って記事なんて書いたら、すぐ名誉棄損で負けますよ。だからそんなこと全然関係ないのに無茶苦茶な関連づけをしてしまったんですよ。
宗像
これね一審判決でね、さらに問題なのは、ようするに、この事件の根底に東北地方における公共工事の入札に絡んで、特に胆沢ダムに絡んで小沢事務所が中心となって、お金のやりとりをしてたんだということまで認定してるんですよ。これは、言ってみれば、本件の虚偽記載と非常に離れたところにある事実なんですが、それをさっと認定しちゃっている。
こういうことで判決する意味は何かというと、証拠が無いということなんです。
具体的な証拠がないと、こういう形で推認、推認でAとBの関係がこういう関係だからこう認定すると、関係があったという認定すると。これはね、非常に危ないんですよ。
民事裁判だとですね、弁論の全趣旨といってですね、ようするに具体的証拠はともかくとして、全体としてみればこうだっていうようなことを民事はやるけど、刑事でやったらですね、これは大変なことになります。
郷原
いや、刑事でやるととすればですね、おそらく、過激派の事件ですよね。昔から、極左暴力集団とか言われた団体があったと、どういう事件であれば、ほんとに証拠がなくても、その組織の中に属してたとか、もっと薄い薄い推認で有罪にするようなケースも稀にあったんですけれども、そういう時ぐらいなもんですよね。
宗像
暴力団事件では、最高裁の判例なんかはありますけど
郷原
あとは暴力団ですね。
陸山会とか小沢さんの事務所というのを、そういう存在だという前提で考えているとしか思えないんですよね。

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