9月26日陸山会事件の判決が出る前の裁判の冷静な検証
9月26日は陸山会事件一審の判決が出る日です。
この事件・裁判の発端となった西松献金事件の本質は、政権交代を阻止することを目的とした検察による「政治介入」です。
また、東京地検特捜部が「水谷建設から1億円の裏献金」があったと見立てて立件した陸山会事件は、小沢一郎氏を政治の世界から排除する為の捏造事件です。
一部のブロガ-は、週刊文春や週刊現代の捏造記事、反小沢論調の日経新聞の記事を載せて喜んでいますが、この検証記事の様に冷静に分析しているとは思えません。
陸山会事件一審の判決が出るその前に恣意的でない正確な陸山会事件の検証を載せた記事を転載します。
陸山会事件公判の特徴は、検察が訴因である「虚偽記載」の立証よりは、水谷建設からの裏献金について、公判の時間を費やしたことだ。これを許した裁判官の訴訟指揮に疑問はあるが、逆に特捜検察の見立て捜査の手法が裁判で明らかにされた「功」がある。郵便不正事件(=村木さん事件)と同じように、特捜検察が見立て、即ちストーリーを書いて、それに合わせた調書を取る。これが明らかになったことは大きい。
その必然の結果として、村木さん事件と同様に、多くの検察調書が証拠として採用されなかった。この結果、小沢一郎氏が検審起訴された訴因*、即ち、小沢氏の共謀は否定された。それでもなお、検審起訴に基づく裁判を行なうと言う。これには疑問があるのだが、それはさて措いて、検察が立証しようとした「水谷建設からの1億円」について、まず検証する。(*注:政治資金規正法違反で、議員は訴追できない)
検察の冒頭陳述では、①石川氏は、小沢氏から受け取った現金4億円を、04年10月13日から5銀行6支店に開設された陸山会の口座に分散入金した。②水谷建設からの1億円は、入金後の同月15日と翌年4月19日に5千万円ずつ小沢氏サイドに渡された、となっている。この日付から見て、水谷からの1億円を4億円の中に含ませることは不可能である。仮に裏金を受け取ったとしても、表に出すだろうか?
水谷建設元社長が5千万円を石川氏に渡したと法廷で証言した。被告がこの証言を否定したのだから、検察はこの証言が正しいことを立証しなければならない。なお、被告はこの証言が嘘だと証明する必要はない。それが裁判である。しかも、被告側は元社長の証言の信憑性に疑問がある証言を公判で示した。検察はそれを覆す証拠を示さなければならないのだが、それは出来なかった。
即ち、献金を命じた水谷会長(当時)が、裏金を渡す時には必ずその授受を目撃する「見届け人」を同席させるなどのルールがあったのに、元社長がそれに従っていないと証言した。また、同社の運転手の運転日誌にも、元社長の証言に合う記録はない。元社長が石川氏に渡したという証言は、これらの証言により信憑性を欠くことになった。だが、検察はこれに対抗する証言或いは証拠を示すことが出来なかった。
次に、訴因である政治資金規正法違反(虚偽記載)であるが、検察は何も立証していない。西松献金事件での虚偽記載(=違法献金)については、訴因変更したように、検察は違法献金を証明できなかった。陸山会事件では、土地購入に際し、小沢氏が立て替えた4億円を04年の報告書に記載せずに05年に記載した「期ズレ」を、検察は訴因=犯罪だとしたが、これが犯罪だとの立証を検察は出来ていない。
政治団体は「権利能力なき社団」のため、「陸山会」では土地登記はできない。不動産取引では、仮登記日と本登記日がある。政治資金収支報告書は、毎日の現金出納簿ではない。意図的行為であっても、犯意がなければ罪に問われない場合もある。こういう諸々のことを、検察が公判でいちいち潰し訴追したとは、公判傍聴記を読む限り窺い知ることはできない。これでは検察は訴因を立証したことにはならないだろう。
一方、弁護側も、検察が訴因として「期ズレ」に対する反証が十分だったと、これも公判傍聴記を読む限り思えない。検察のペースに嵌り、水谷建設からの献金否定に力を注いだ感は拭えない。石川氏の弁護士は元検事だと聞くが、元検事の弁護士としての限界、つまり検察に致命傷を与えない線で妥協するとの危惧を抱かせた。裁判長は検察に、前田元検事の取調べ調書を提出させたが、判決にどう反映するのだろうか。
いったいこの裁判で裁かれたのは何なのだろう。故小室直樹氏は「三権分立では、行政権力から主権者である国民を守るのが司法権(=裁判)の役割」だと言う。今回の裁判は、当にそれが試されていると言っていいだろう。検察による政治介入から始まった事件である。裁判所が国民主権・民主主義を守る砦であるかどうかが問われている裁判だと、筆者は思う。