福島第1原発の廃炉プロセスは、大変なコストをかけて進行中です
福島第1原発の廃炉プロセスは、大変なコストをかけて進行中です。
しかし、廃棄した核燃料を保管すると手をあげている国は全くありません。
安全に貯蔵できる地域ではない日本にとって、これは重大な懸案事項です。私達は、使用済み燃料棒貯蔵の可能性を検証しなければなりません。
福島第1原発の廃炉プロセスは、既にできる所から進行中です。これには、膨大なお金がかかる事業に成ります。
今年5月、3月31日に終わる財政年度で、東京電力は、1兆5千億円もの膨大な損失を計上しました。これは、主に福島第1原発事故によるものです。
東京電力の損失の内、80%は、福島第1原発の原子炉の廃炉による一時的な打撃、3月11日の地震後、原発の放射能を現場で食い止める取り組みによるものだと考えられています。
日本、そして事実上、世界の原子力産業にとって、主要な問題は、廃炉にした福島第1原発の、使用済み核燃料棒を誰が引き取るかです。現時点では、これが廃炉プロセスを、ひどく行き詰まらせている問題です。
3月11日の事故後、明らかに多くの燃料棒は極めて放射能が強く、一部溶融し、中には致死率が高いプルトニウムを含んでいるものもあります。コンクリートで埋める前に、7トン以上の使用済み燃料棒を、福島第1原発から取り出し、永久貯蔵施設原子炉に移さねばなりません。
燃料棒や、他の核分裂性物質を取り出すということは、それを外国に送り出すということです。不安定で地震に弱い日本の特質からして、耐震性の施設が作れず、長期間の貯蔵には適しません。東京電力は、日本最初の貯蔵施設、5,000トンの廃棄物センターを、福島の北480キロのむつ市に建設中です。しかし、そこは2013年まで稼働はしません。
問題に対する、単刀直入な解決策があるに違いない。
アメリカには、104基の原子炉によって生み出される高レベル放射性廃棄物用に一連の長期地下貯蔵サイト(35の州に、76カ所)があります。
アメリカの何千本もの使用済み核燃料棒(60,000トン)は、こうした原発で、原子炉から取り出した使用済み核燃料を冷却するため、コンクリートと鋼鉄の中に貯められた水のプールに貯蔵されています。
NPTの下、日本が核兵器能力を開発するのを防ぐため、日本の原子炉の使用済み核燃料は、貯蔵あるいは再処理のため、アメリカに移送すべきことと、アメリカは規定していました。ところが、アメリカの貯蔵サイトは、現在、議員や住民の激論の的となっている為に、ワシントンは、福島の廃棄物を引き取ることを嫌がっているように見えます。
事実上、アメリカは、1970年に、元々日本に課した要求を撤回しました。そこで問題は、どこに使用済み燃料棒を送るかということです。
日本の新聞報道によれば、三つの候補地域が提案され、東京電力と廃炉事業の提携企業、フランスのアレヴァ社から接触があったカザフスタン、中国、モンゴルです。施設が最も高度と考えられ、安全手順がより優れており、中国なら、日本の使用済み核燃料が道路から到着するのを大衆から隠すことができることから、東京電力は中国を選ぼうとしました。
しかし、中国の国民が、初めて核政策を巡る懸念を表明し、この解決策はすぐに不可能となりました。更に 第二次世界大戦以来の日本と中国の歴史や、北東中国での化学兵器廃棄物という、いまだ燻っている問題のおかげで、もはや実行不可能になりました。
その為に、モンゴルは、日本の使用済み核燃料棒のみならず、他のものも引き取るようという要請を受け、日本と米国は、モンゴルに、使用済み核燃料貯蔵施設を共同で建設したがっていると、毎日新聞は報じました。この為に、反放射性廃棄物活動家達が、モンゴルは他国が棄てた核廃棄物のごみ廃棄場ではないと主張しているモンゴルで、論争に火がつきました。したがって当面は、ウランバートルも見込みがあるようには思えません。
他の、人口が少くない、より発展した国々、いずれも、活発なウラン採鉱産業がある、特にカナダとオーストラリアも話題にのぼりました。
カナダも、オーストラリアも、ウランを日本に輸出しているので、彼らが自分の顧客の放射性廃棄物に対処するのは理屈にかなっていると主張する人々もいます。
元ジャパン・タイムズ紙編集者で、現在は香港を本拠とする環境運動家の島津洋一氏は、このプロセスを、冷蔵庫が壊れた際、冷蔵庫メーカーが引き取るという、しっかり根付いた慣習になぞらえます。
しかし、カナダとオーストラリアの反核運動家達は、この発想には殆ど関心を示していませんし、カメコ社やリオ・ティント等、これらの国々の大手ウラン供給業者は、追加コストを引き受けることに、ほとんど関心を示していません。
島津洋一氏が指摘している通り、オーストラリアもカナダも、積極的でかなり利益のでるウラン商売をしている国であるにもかかわらず、キャンベラとオタワの議会を、他所に設置するのはいいが、近くではいやだという抗議デモの参加者達が包囲することが予想される以上、いずれの国も、近い将来、日本の使用済み核燃料棒を引き取ると申し出ることは考えられません。
そこで、原子力産業の厄介な副産物で、天災が襲った、福島第1原発の使用済み核燃料棒は、埋設場が無いままとなります。多くの専門家達は、究極的には、土地が十分に有り、収入が欲しい国、おそらくはモンゴルが、いつかは廃棄物を受け入れるだろうと考えているように見えます。しかしながら、先進国が拒否する有毒廃棄物の受け入れを、金に困った発展途上国にたよることは、責任ある、道徳的廃炉の未来にとって、良い前兆とは言えません。
日本の原発運営を巡る全ての組織の「安全神話」のでたらめさは、すでに社会常識となっていますが、この廃炉処理について現在日本は何も解決案をもっていません。
また、現在むつ市に建設中の施設も、「中間貯蔵施設」ということになっています。
東京電力と日本原子力発電が青森県むつ市に建設を計画している使用済み燃料中間貯蔵施設について、施設受入れの「立地協定」が10月19日に結ばれた。
事業計画では、最終的な使用済み燃料の貯蔵量は約5000トンである。当初建設される1棟目の貯蔵建屋は輸送貯蔵兼用の金属キャスクを使用し約3000トンを貯蔵する。1棟目の建設費は、7~8割を占める金属キャスクの費用を含む概算で約1000億円程度とされている。2棟目(約2000トン)は他の方式の可能性がある。市民の間に不安がある燃料の貯蔵期間については、①建屋ごとにそれぞれ最長50年間、②キャスクごとの使用期間も最長50年間、③使用済み燃料の搬出については貯蔵期間終了までに施設から搬出するとされた。しかし50年後の原子力の置かれている状況は誰にもわからない。50年後に問題を先送りしただけである。
東電と原電は施設の事業主体となる「リサイクル燃料貯蔵株式会社」を11月21日にむつ市に設立した。新会社の資本金は30億円で東電が80%、原電が20%出資している。2007年春事業許可申請、2010年からの操業開始が予定されている。新会社の社員は警備等の委託を含めても操業段階での雇用はわずか20~30名程度である。建設に延べ21万人の雇用があると宣伝されているが、むつ市や青森の企業がかかわれる部分が少ないのは六ヶ所で証明済みだ。
中間貯蔵施設が地元にもたらすものは、膨大な使用済み燃料貯蔵の危険性とそれにともなう補助金だ。むつ市の杉山市長が「金がつかないものを受入れるなどということはしない」と断言してきたように、地元にとって問題は「金」であり国の原子力政策はあとからついてくる理屈だ。2004年度末で約23億円近い赤字を抱えるむつ市は、「赤字再建団体」寸前の財政状況を長年続けてきた。計画の進展によって、来年度から年間9億8000万円、施設着工から運転開始後5年で約16億円、以降60年間で約1000億円という電源三法交付金が予定されている。
約5000トンもの大量の使用済み燃料が貯蔵される建屋は、国の指針で一般建築並の耐震性である"Cクラス"しか求められていない。大きな体育館のような建屋に容器を縦置きすることが計画されている。震度5以上の強い地震の場合、建屋が破壊される可能性がある。その場合輸送貯蔵兼用の金属キャスクによって燃料を保持出来ればよいというのが国の考え方だ。これは明らかに安全性より経済性を優先したい電力業界の意向を反映したものだ。国は使用済み燃料貯蔵施設が原発数十基分の燃料を長期間貯蔵するにもかかわらず、建屋について言えば原子力施設と考えなくてよいとしているのである。例えばドイツでは航空機の落下などに備え約1.2メートルの壁厚が要求されているが、このような安全対策については日本で検討されたこともない。 中間貯蔵施設には、安全基準以外にも多様な問題が山積している