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原発にどう向き合うべきか 作家 『池澤 夏樹さんに聞く』

(北海道新聞7月29日)
原発にどう向き合うべきか 作家 『池澤 夏樹さんに聞く』
科学者同士の論争だけで・なく、市民一人一人が原発の安全性を見つめ直すこと・が必要-。最近、市民目線で原発について活発に評論を展開している芥川賞作家、池澤夏樹さん(66)=札幌在住=に、ひとは原発にどう向き合うべきか、聞いた。
      
原発は原理的に人間の手に負えないと思っています。`どうしても、放射能は
外に漏れてしまう。よく僕は「原発とは坂道に置かれた重い車だ」と言うんです。アクセルはない。ブレーキがいくつもついているけれど、それがぜんぶ壊れたら暴走を止める手段はない。漏れてはいけないものが、大量に漏れてしまう。

核エネルギー反応は自然界にはありません。根源的に性質が異なる。
普通の毒物と違って、放射性物質は 燃やしても薄めても毒性が消えません。
たとえ事故がなくても、原発からは放射性廃棄物が出つづける。その始末を考えないまま原発は運転されてきた。事故が起これば今見る通り住めない国土ができてしまう。
ここ何十年か、自勣車や民間航空の業界は必死になって安全性を追求してきました。しかし原発の業界は普通の毒安全神話のPRに金をつぎ込むだけで、何もしてこなかった。おそらく、何をしても安全にはほど遠いとわかっていたのでしょうね。

経産省原子力安全・保安院が5月に泊原発について行った「緊急安全対策の実
一施状況評価」をみると、「接・続ケーブルは十分な長さを有する」ことを確認したくらいのことで安全のお墨付きを与えています。
チェックといってもその程度の言い方しかできない。
佐賀県の玄海原発の実施状況評価には、繁急時に冷却水を循環する「エンジンポンプ」と呼ばれる機器について、ガソリンがなくなった時は「近くの高台にあるガソリンスタンドから燃料を調達できる」という記述がある。ガソリン・スンド?はじめて読んだ時は、目が点になりましたよ。
どこがおかしいかというと、事故が発生したら、想定通りの対応ができるという前提に立っていることです。10mの津波が来た。では15mの防波堤を造る。しかし、次にはそれを超える津波が来るかもしれない。それが事故というものです。そして原発の場合、一度大きな事故が起これば結果は国土にとって、国力にとって致命的なのです。
日本は地震国です。20 10年に気象庁が震源を確定した地震は12万回を超えました。隣の韓国では40回。そういう国で、ステンレスの容器にたくさんパイプやバルブやポンプをつないだものに大量の放射性物質を入れて核反応を起こす。地震で揺さぶられても大丈夫って言えますか?
  
安全は一人一人の感覚で臆病さと言い換えてもいい。僕は原子力にもっと臆病であるべきだと思う。ひとは間違えるんです。ひとが運転するものは勘違いや怠惰で事故を起こす。現在進められているストレステストは必須だけれど、それで安全が保証されるわけではないでしょう。(談)

自然災害や事故に原発はどれだけ耐えられるのか。菅政権が原発の運転再開の判断基準にしようと打ち出した「ストレステスト(耐性評価)」。22日に各電力会社に実施を要請したが、今回、日本で行われるテストはコンピューターで机上の計算をするのが基本で、効果は未知数だ。原発に詳しい科学者に意見を求めると、今回のテストの問題点が見えてくる。                                 
被害や影響の大きさからら原発事故を「原発震災」と呼び以前から警告を発していた神戸大の石橋克彦名誉教授(地震学)は、今回のストレステス卜に懐疑的だ。
テストは頭の中のシミュレー‐ションにすぎないとし、それよりも「原発の耐震指針 の見直しを含め、国の耐震安全性評価を全面的に作り直す方が効果的」と現実的な対応を求める。
 
理由は、福島第1原発で地震の揺れが想定を超え、津波の襲来以前に大きく損傷した可能性があるためだ。東京電力によると、最下階の地震計は、2号機の場合、態定の438ガル(ガルは揺れの加速度を示す単位)に対して、1・25倍の55Oガルを記録した。
北海道電力の泊原発(後志管内泊村)については、これまで無視されてきた活断層も考盧し「泊原発で想定されている最大の揺れの550ガルを再検討すべきだ)と訴える。          
2009年、泊原発の仲合15Kmに活断層があると発表した東洋大の渡辺満久教授は、「想定外の地殼変動があった福島第1原発と比べ、泊原発はなぜ安全と言えるのかの検証こそ必要」という。
北電は、今も一部の活断層しか重視していなない。震災後、原子力安全・保安院は各電力会社に耐震性の見直しを指示。
北電は渡辺教授が指摘する断層を含めた24カ所の「 地盤などを調べ、「後期更新世(約12万~13万年前)以降の活動が認められず、耐震設計上考慮す            る活断層ではない」と保安院に報告した。
           
「政治的なパフォーマンスで意味がない」 内閣府原子力委員会専門委員で、中部大の武田邦彦教授もばっさりと切る。「福島第1原発事故を教訓に、震度8の揺れにも耐えられるよう原発の設計を改めないといけ」と持論を展開する。
近年、地震に対する原発のもろさが目立っている。2007年3月の能登半島沖地震では、石川県の志賀原発が震度6の揺れで使用済み燃料貯蔵プ-ルから放射能を帯びた水が飛散。同年7月の新潟県中越沖増震でも新潟県の柏崎刈羽原発で一部の機器から出火した。
東日本大震災では福島第1を含む5ヵ所の原発が損壊などで停止した。
「まさに異常な事態が 続いているのに対応が甘い」と批判する。身内によるチェックに疑問の声も上がる。
日本原子力学会は5月、原子力安全委員会を独立させ、そこに保安院と文部
科学省の規制部門を統合・一元化するべきだと提言している。
米原子力規制委員会(NRC)のような独立した専門家集団を求めたが、それにはほど遠い。
 
京都大原子炉実験所の小出裕章助教は、保安院が安全と太鼓判を押した福島第1原発で事故が起きたのに、「なぜ、いまだ保安院が安全というお付きを与え続ける立場なのか不思議だ」と首をかしげる。
これまで原発を推進してきた学者からは、まったく別の視点から異論が出る。
北大の奈良林直教授(原子炉工学)は「わざわざストレステストをしなくても、安全対策は既に行われてきた」と指摘。
今回の震災を受け、原子力安全・保安院は泊原発の繁急安全対策について
「妥当だ」と判断して・おり、チェックは二重になるとの見方だ。
 
震災後、北電は移動発電機車の追加配備や、主要建屋の扉の隙間などの
防水工事、予備の海水ポンプ電動機の確保など、対策を矢継ぎ早に打ち出した。
「全交流電源を喪失した時に備えた実地訓練にも熱心だ。送電設備の耐震化もされており、福島のようなことは起きない」と言い切る。
北大の辻雅司准教授(原子炉工学)も同調する。「震災後、考え得るさまざまな手だてを取っている。ある程度、評価していい」と、仮にストレステストの結果が悪くても不安視することはないとの認識だ。
 
東大の寺井隆幸教授(システム量子工学)はそもそもストレステストを行う法的な義務はないとする。ただ、原発への風当たりが弱まらない中、原発の再稼働や運転継続をするため、コンセンサスを得る手段として一は、評価しているという。
 
「結局、どこまでやればOKかというのがない。原発ではどのようなことをしても、科学的に危険がゼロと言えない」。寺井教授は、徹底した安全対策を求める世論にこう、くぎも刺した。
 
菅政権が停止中の原発再開の切り札として掲げたストレステストは、原
発の慎重、推進派双方から「中途半端で効果が薄い」とみなされている。
◇ストレステスト◇
欧州連合(EU)の原発の耐性試験|を参考に、設計上、態定を超えるアクシデントに対して、どの程度ちこたえられるか評価する試験。
今回日本で行う項目は、地震、津波、全電源の喪失、熱を原子炉の外に逃がす機能喪失など。地震や津波が同時発生する場合も想定する。
テストは2段階で、「1次評価」は泊原発1号機など定期検査で停止中の原発が対象となり100前後の重要な機器・設備について点検する。現在運転中の泊2号機は、定期検査で停止された後に対象となる。「2次評価」は福島第1、第2を除く国内の全44基などが対象で、1次評価で持対象になった機器などを合め原発全体をチェックする。現在、定期検査中(調整運転中)の泊3号機は2次評価の対象になるとみられる。
電力会社がコンピューターなどで分析した後、経産省原子力安全・保安院と原子力安全委員会が評価。菅直人首相は1次評価を原発再稼働の条件と位置づけており、首相らが再開の可否を最終判断する。
国は年内までに電力会社から2次評価の報告を求めている。

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