普天間基地の嘉手納統合案を握りつぶしたのは日本の外務・防衛官僚達です
今日の新聞に普天間移設は「非現実的」 米上院軍事委員長らと載っていましたが、やはりと云う思いがしました。
(共同通信)
米上院軍事委員会のレビン委員長(民主党)とマケイン共和党筆頭委員は11日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設に関する日米両政府の現行計画は「非現実的」として、米軍嘉手納基地(同県嘉手納町など)への統合を中心とする新たな移設案の検討を国防総省に求めたとの声明を発表した。
米議会が現行計画への反対姿勢を明確にしたことで、日米間の懸案となっている普天間移設問題はさらに停滞する可能性が高まった。 声明は、普天間飛行場を沖縄県名護市辺野古に移設する現行計画について「非現実的で、機能せず、費用負担もできない」と指摘。
またすでに、NewsSpiralで高野論説委員は、米全安保補佐官は辺野古移設は想像外と語っている事を明らかにしていました。
昨秋までオバマ政権の安保担当補佐官を務めたジェームズ・ジョーンズは5日、ワシントンを訪れた下地幹郎=国民新党幹事長らと会談し、普天間海兵隊航空基地を辺野古に移転する現行案について「日米政府が初めて合意したときから、計画が実現した姿を想像することすら出来なかった」と告白、「普天間は嘉手納空軍基地に統合する案が最良だ」とする持論を展開した。
前補佐官はまた、6月末にペネッタ現CIA長官が国防長官に就任する機会に辺野古移設計画の見直しが生じる可能性があり、彼自身も自分の考えを次期国防長官に進言するつもりであることを明らかにした。彼は海兵隊総司令官、NATOの欧州連合軍司令官を経てホワイトハウス入りした経歴を持っており、軍・海兵隊とオバマ政権の両方に一定の影響力を持つと考えられる。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-05-08_17506/
そのため、長く膠着状態に陥ってきた辺野古移設計画は、急転直下、「嘉手納統合」を有力な一案として大幅に見直される可能性が出てきた。嘉手納では、沖縄県民が強く求める「県外」とはならないが、遠くない将来の海兵隊の全面撤退までの暫定措置という含みで、日米政府と沖縄県の合意が成り立つことはあり得るのではないか。その意味で、この問題は09年9月の鳩山政権発足時の振り出しに戻る、ということである。
「振り出しに」というのは、09年9月17日、米政府が辺野古計画を断念して嘉手納統合に切り替えることを真剣に検討していて、政権交代を機に日本側から積極的に働きかければその方向に動く可能性があることを指摘し、またその情報を私が直接、岡田克也外相(当時)に口頭で伝えていた。
海兵隊航空基地は嘉手納へ
普天間移転問題は、10年以上にわたって日米双方にとって重荷となってきた。95年9月の米海兵隊員による少女暴行事件をきっかけに在沖米軍に対する怒りが高まる中、日米はSACO(沖縄に関する特別行動委員会)を設置して一部基地の条件付き返還を協議、その中で、海兵隊8000人のグアムへの移転と普天間基地のシュワブへの移転について合意したものの、シュワブについては新たな騒音被害やジュゴンやサンゴなどが生息する貴重な海洋環境の破壊などへの懸念から地元が反対し、未だに着工も出来ないままである。
防衛省は4月に県に対して「環境に与える影響は少ない」とする出鱈目な環境アセスメント評価の準備書を送付、県知事が10月13日までにそれに対する意見書を出して着工を急ぐことになっている。自公両党の推薦で3年前に当選した仲井真弘県知事は、代替施設の建設場所を数十〜数百メートル沖合に移すことを条件に着工に同意しようとしているが、先の総選挙では沖縄の4つの小選挙区では基地建設推進派の自公候補が全滅、県内移転に反対する民主党県連が勢いづいて知事に翻意を迫っている。沖合に移したところで、騒音は多少軽減されるかもしれないが、海洋環境破壊はさらに酷くなる。
こうした状況で、米政府内では、シュワブ移転を断念しようという空気が強まっている。理由の第1は、そもそも沖縄に海兵隊が駐留する主な目的は朝鮮半島で陸上戦闘が起きることに備えることにあったのだが、その可能性はほとんどゼロになっていて、だからこそ8000人のグアム移転の準備も進めているのであって、シュワブに何が何でもしがみつく根拠が薄まっていることである。
第2に、逆にそれにこだわって県民感情が悪化し、それだけでなく日米関係そのものがとげとげしくなることのデメリットを無視できない。
第3に、地元の「北限のジュゴンを見守る会」など日米の自然保護団体が米国でペンタゴンを相手取って行った「ジュゴン訴訟」で08年2月、サンフランシスコ連邦地裁は、ペンタゴンががジュゴンへの影響などを評価・検討していないことは米国文化財保護法に違反しているとして、基地建設による天然記念物ジュゴンへの影響の回避を求める判決を下した。ブッシュ政権はこれを無視する態度を採ったが、オバマ政権はこのことも考慮に入れなければならないという認識を持っていると言われる。
そこで、嘉手納への移転という案が浮上するのだが、これについては、ワシントンの事情に明るいニューヨーク在住のジャーナリスト=ピーター・エニスが昨年と今年、2回に渡って週刊東洋経済への寄稿で十分に可能な解決策だと指摘している。嘉手納には余った広大な敷地があり、物理的にはヘリポート移転に何の問題もない。ただ空軍と海兵隊の縄張り争いがあって、空軍がそのようなものを持ち込まれることを嫌がっているという問題があるが、それは米政府内で調整すれば済むことである。他方、日本側では、自民党建設族に繋がる地元土建業界がシュワブ建設の巨大利権にしがみつこうとするだろうが、これも政権交代が実現すれば押さえ込むことが出来るかもしれない、と彼は言う。
民主党はかねてから「県外移転」を掲げてきたが、県外と言ってもどこなのか、何の現実性もないという批判が党内からもあって、先の衆院選マニフェストではそれを外した。が、長島昭久衆院議員らが今年3月に設けた私的勉強会は7月、普天間ヘリポートを嘉手納に移転し、同ヘリ部隊の飛行訓練は下地島にある民間パイロット訓練用の既存飛行場で受け入れる----という一種の「県内移転」の妥協策をまとめて岡田克也幹事長(当時)に提出している。
従って、民主党が「シュワブ断念・嘉手納移転」の方向を固めて"対等外交"に打って出れば、この問題は急転直下、解決する可能性が大いにある。最近東京を訪れた、米民主党中枢にパイプを持つ外交専門家は次のように指摘している。
▼シュワブ断念・嘉手納移転をホワイトハウスは真剣に検討している。SACOにこだわるのは日本では外務・防衛両省の官僚であり、米国では過去にこの問題を担当したことがあるカート・キャンベル国務次官補と海兵隊出身のウォレス・チップ・グレッグソン国防次官補の2人だが、ホワイトハウスは「こんな問題をいつまでも引き摺らないで早く決着したい」という考えだ。
▼鳩山がオバマと会った時に、日米双方とも政治主導で官僚の無能と惰性を押さえ込みましょうと持ちかければ、案外話は進むのではないか。愚かな米マスコミは鳩山が"反米"であるかのことを言い、日本のマスコミもそれに従って鳩山政権への"懸念"を書き立てているけれこも、むしろ鳩山のほうからそれを言い出せば、"対等外交"は米国のためにもなることが理解されるのではないか。
●官僚とメディアが潰した嘉手納案
この中でも触れているように、嘉手納統合案の難点の1つは、米空軍側が固定翼機の飛行場に回転翼機が混じるのを嫌っているという問題があったが、これについて今回ジョーンズは下地らとの会談の中で、「空軍内に抵抗があったのは、技術力の伴わないパイロットらの意見であり、実際に多くの基地で回転翼機と固定翼機が統合運用されている」と実態を説明した。また嘉手納の住民側には当時、「これ以上騒音が増えるのは反対」という声もあった。これについてもジョーンズは、「現時点で移転するヘリコプターは30機未満のため、影響はほとんどない」との見方を示した。
さらに、辺野古案が挫折した場合には普天間を恒久化するとの米軍関係者の脅しともとれる発言が出ていることについて、ジョーンズは「海兵隊はどこに移転しても構わない部隊であり、米軍全体の計画が在沖海兵隊の移転先に左右されることはない」「韓国移転などさまざまな選択肢がある」と語った。
このようなベストではないがベターな打開策であった嘉手納統合案を握りつぶしたのは、日本の外務・防衛官僚である。上記の高野論説の中でも、米空軍の三沢撤退と嘉手納F15の一部削減の計画について、官僚たちが政府に情報を上げずに自分らだけの判断で米側に「計画の保留」を求めたことは「官僚による内閣に対する情報操作」であると指摘しているが、普天間問題でも同様であったことは、最近のウィキリークスによる日米関係外交文書によって赤裸々に暴かれた。
「外務官僚暗躍、新たに判明」と題した琉球新報7日付記事によれば、「外務官僚が閣僚に対し、在沖海兵隊のグアム移転と普天間飛行場代替施設建設を切り離せないとさとしたり、外務省の"前担当者"が当時の鳩山政権の普天間問題に対する取り組みを批判し、米政府に対して公式に不満を表明するよう促していた」という。
こうした売国的な外交・防衛官僚どもは、日米安保による既得権益を守ろうとする米側の安保マフィア官僚と結びついて日米政府を情報操作の網にかけ、旧い安保の枠組みとそれに基づくSACO合意を維持しようとして、かえって本当の意味での日米同盟の深化を妨げている。この連中を退治しない限り普天間問題の打開の道は見えてこない。
蛇足ながら、この重要なジェームズ発言についての主要メディアの扱いは無視ないし軽視というに留まっている。それは、彼らが売国官僚どもの随伴者であって、官僚どもから「嘉手納統合なんて話にならないよ」と言われると素直にそう思い込んで、自分の頭で考えて取材をすることをしないからである。それで、官僚どもの陰謀が成功して鳩山外交が行き詰まると、一緒になってやいのやいのと囃し立てる。こういう退廃メディアも一緒に退治しないと日本の先行きは危ない