福島の事故を止められなかった司法の貴任は相当大きいと司法関係者は認識すべきです
これまで住民や科学者が危険性を主張してきましたが、裁判所は取り合って来ませんでした。福島の事故を止められなかった司法の貴任は相当大きいと司法関係者は認識すべきです。
「安全神話」が福島の事故で崩れさり、原発が運転中だったり新増設の計画を抱える自治体に、動揺が広がっています。交付金や税収、雇用創出といった経済的メリットも、住民の生命・財産の保護という自治体が果たすベき役割の前では色あせてしまっています。
将来を見据えた新たな″国策″はいまだ方向性さえ示されていません。現在の事故が収束に向かっても、今後の答えは見つける事は相当難しいと思われます。
1992年、四国電力伊方1号機(愛媛県)の訴訟で「国が依拠した専門家の判断に重大な欠陥がある場合は、国の設置許可処分に違法性を認める」と判示。専門性を尊重する判断枠組みを示しました。
住民敗訴が続く訴訟ですが、北陸電力志賀2号機(石川県)の耐震性が争われた訴訟では、金沢地裁が2006年「想定を超える地震で住民が被ばくする具体的危険がある」として、運転差し止めを初めて認めました。しかし、二審は「危険はない」と逆転の判断をしました。また最高裁は昨年上告を退けました。
東京電力柏崎刈羽1号機(新潟県)の訴訟では、二審判決後の07年、新潟県中越沖地震が想定を上回る揺れをもたらし、原子力発電所にかなりの被害をもたらしました。
それでも、最高裁は「事案の内容、訴訟の経過などにかんがみ地震は判断を「最左右しない」と言及、住民敗訴が確定しました。 今、最も注目されているのは想定東海地震の震源域に建つ中部電力浜岡原発です。
静岡地裁は07年最大の地震が起こす揺れの基準地震勣は妥当で、設計上の安全余裕は十分に確保されている」として住民側が敗訴しました。
住民代表は。「これまで住民や科学者が危険性を主張してきたが、裁判所は取り合ってこなかった。福島の事故を止められなかった司法の貴任は大きい」と司法に対する怒りをあらわにしています。
訴訟は東京高裁で続き、長期化は必至と思われますが、福島で起きた事故は静岡で争ったそのままのことが起きた、早急に判決を出し運転を止めるべきと訴えています。
地震により原発で事故が起こる危険性は、各地の住民が訴訟で追及してきました。しかし、これまでに訴えが認められ、運転停止が確定した例は有りません。裁判所は原発の専門性を理由に、国や電力会社の判断を追認することが多く、福島の事故を受け「役割を放棄してきた司法の責任は大きい」との批判が高まっています。
最大の論点は、科学技術の結集である原発に、司法がどの程度踏み込み、実体審理するかです。
また、住民が起こしている原発運転中止訴訟の他に、最も住民を危険にさらしているのが、立地13道県に電源交付金や核燃料が市民生活に浸透している事です。
原発が立地すれば、短期的には地域に雇用が生まれますが、他方で漁業や農業が失われる場合もあります、地域全体の持続的発展にはつながりません。
電源3法交付金は、札束でたたけば何とかなるだろうという発想です。
日本は被爆国で原子力アレルギーがあるため、国は金を使って地域に原発を受け入れさせようとしてきました。その交付金で、分不相応の建物がつくられてきました。しかし、運営する経常経費は有りません。
その結果、福島第1原発がある双葉町は財政破綻が懸念され、自治体財政健全化法によってイエローカードが突きつけられました。
関連施設の固定資産税も入りますが、減価償却が進めば減っていきます。そうなると次々と原発をつくらないと、財政の水準が維持できなくなるという悪循環が生まれます。佐藤栄作元知事が言った様に、厳しい言葉で言えば麻薬中毒状態です。普通の市町村ではありえないお金が入り、財政規律がなくなります。
国も金で立地を進めるのはやめるべきです。自治体も、大きいことはいいことだという発想から抜けきれていません。原発などの巨大技術ではなく、地場産業など地域にあった自己完結できる適正技術に基づいた地域振興を考えるべきです。
原発の立地・周辺自治体には、電源3法に基づく電源立地地域対策交付金をはじめとした交付金や補助金が配分され、財致を支えてきました。使途はバコモノ″の公共施設にとどまらず、教育や福祉など市民生活全般に及び、一部は直接一住民に支払われています。
「光ファイバー網整備」「高齢者福祉サービス提供」「子育て支 援」。福島第1原発の地元、福島県双葉町と大熊町がここ数年、交付金により実施した事業です。
かつては教育文化施設などにしか使えなかったのですが、2003年度から運用が緩和され、資源エネルギー庁によりますと、「自治体の借金・返済に充てたりしなければ、柔軟に使えるようになった」いいます。
住民に直接配られる・交付金もあります。交付額は立地自治体にあるプラントの合計発電能力から決まり、新設や増設を促すため、新しい立地や増設決定から運転開始まで額が割り増しされる仕組みです。
住民への交付金についてエネルギ-庁は「″迷惑施設″を受け入れてもらっていることに対するものだ」としており、双葉町や大熊町では福島第2原発に近いことも考慮して、年1万円程度が各世帯に支払われているといいます。
また、原発がある13道県は「安全対策のコストを電力会社に負担させる」として、原子炉に挿入された核燃料を対象とする法定外税「核燃料税」を各社に課税。事故発生時の避難路や港湾整備に充てています。
燃料税は1976年に福井県が導入し、他の道県も追随しました。当初5~7%程度の税率でしたが、自治体の財政悪化などに伴い軒並み十数%に上昇しました。
北海道は12%。新潟県柏崎市や鹿児島県薩摩川内市などは原発に貯蔵される使用済み燃料にも課税しています。
電源3法とは
原発などの発電施設の建設を促進するため、立地地域の基盤整備を充実する目的で、1974年に制定された法律。電源開発促進税法、特別会計に関する法律、
発電用施設周辺増域整備法の総称。3法に基づき、電力会社が販売電力量に応じて負担した税金を充て、自治体に交付金を出す。大半を占める「電源立増地域対策交付金」は2009年度予算で総額約1110億円。以前は道路、教育文化施設などの公共施設整備が中心だったが、現在は幅広く使える。
原子カ安全協定
原子力事業者と、都道府県や立地、隣接市町村が、住民の安全確保を目的に結ぶ協定。原子力に関する法令は、国が一元的に監督することになっており、地方自治体は事業者に対し安全面での要求をする法的な権限がない。そのため、地元自治体として、住民の立場で安全を確認するため結ばれる。主に、異常時における情報の連絡体制の取り決めや自洽体による施設の立ち入り調査、増設など施設を変更する際の地元の事前了解、放射性物質の監視などが盛り込まれている。